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 ITシステムを効率良く開発するには、実装する機能に合わせたプログラミング言語の選定が重要になる。現在、多種多様なプログラミング言語が存在するが、言語によって実装しやすい機能が異なるためだ。

 システムの機能が多岐にわたる中、日経クロステックの読者はどのような言語を利用しているのか。これを確かめるため、日経クロステックではアンケート調査「プログラミング言語利用実態調査2023」を実施した。調査期間は2023年9月21日~10月18日。358人から回答を得た。

Pythonが首位をキープ

 アンケートではまず、現在使っているプログラミング言語を3つまで挙げてもらった。利用言語の第1位は「Python」だった。回答者358人うち45.3%の162人が使っているという結果だった。

「あなたが現在使っているプログラミング言語は何ですか」という設問に対する回答の内訳。最大3つ選択してもらった。グラフには回答者数が10以上の言語を示した
「あなたが現在使っているプログラミング言語は何ですか」という設問に対する回答の内訳。最大3つ選択してもらった。グラフには回答者数が10以上の言語を示した
(出所:日経クロステック)
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 2022年に実施した調査では、回答者457人のうち37.0%の169人がPythonを使っていた。Pythonを使っている割合は37.0%から45.3%に増えたことになる。Pythonは主に人工知能(AI)の開発やデータ分析によく使われる。こうした用途の重要性が増した結果、Pythonを利用する人が増えたと考えられる。

 利用言語の第2位は「Java」(114人)。2022年の調査では第3位だったので順位が1つ上がった。Javaはシステム開発の定番言語である。開発元である米Oracle(オラクル)は、2017年にリリースしたJava 10以降のリリースサイクルを変更し、Java 11からは6カ月ごとにメジャーバージョンアップを実施している。2023年9月には最新版の「Java 21」をリリースした。2年に1度のLTS(Long Term Support)版なので、旧バージョンのJavaから置き換える動きが加速すると見られている。

 利用言語の第3位は「JavaScript」(111人)。JavaScriptは、Webシステムのフロントエンドの開発によく使われる。現在のシステム開発では何らかのWeb技術を利用することが多いため、回答者が多かったと考えられる。2021年と2022年の調査ではいずれも第2位であり順位が少し落ちたが、今回のJavaとの差はわずかなので実質的に2位グループといえる。

最も使っている言語もPythonが首位

 では、複数の言語の中でどの言語をメインに使っているのだろうか。アンケートでは最も使っている言語を1つだけ挙げてもらった。

「あなたが最も使っているプログラミング言語は何ですか」という設問に対する回答。グラフには上位10言語を示した
「あなたが最も使っているプログラミング言語は何ですか」という設問に対する回答。グラフには上位10言語を示した
(出所:日経クロステック)
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 第1位は「Python」(80人)だった。回答者の22.3%が最も利用していると回答した。2022年の調査では第1位はJavaであり、Pythonにその座を奪われたことになる。それだけPythonに勢いがあるということだろう。

 第2位は「Java」(71人)。第3位は「C#」(40人)。JavaとC#はどちらも基幹系システム開発やWebシステムのバックエンドに多用される言語である。こうしたシステム開発に携わるエンジニアが多いことが分かる。

 一方、現在使っているプログラミング言語で3位だったJavaScriptは、ここでは第7位と大きく順位を下げた。メインで使われるよりも、他の言語と併用されるほうが多いことがうかがえる。

言語によって用途は大きく異なる

 最も利用している言語のランキングで興味深いのは、第4位に「VBA」が入ってきているところだ。VBAはVisual Basic for Applicationsの略で、主に米Microsoft(マイクロソフト)のオフィス製品の機能拡張に使われる。

 最も利用している言語ごとに開発対象システム別を集計したところ、Pythonをメインに利用している人うち29人(36.3%)はデータ分析システムの開発に携わっていた。AIシステムの開発に携わっていたのは17人(21.3%)である。一方、Javaの利用者が開発しているシステムは基幹系システム(会計や販売、生産管理などのシステム)が40人(56.3%)と最多だった。Javaをメインに利用している人の過半数は基幹系システムの開発に携わっているという結果になった。

PythonとJavaを利用している人の開発対象システム
PythonとJavaを利用している人の開発対象システム
(出所:日経クロステック)
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 第3位のC#をメインに利用している人は、基幹系システムの開発に携わっている人が26人(65.0%)と、Javaに似た傾向だった。VBAでは、基幹系システムの開発に利用している人が10人(34.5%)、データ分析システムの開発に携わる人は11人(37.9%)だった。基幹系システムのデータをVBAで加工し、データ分析に利用するという用途が多いと考えられる。

C#とVBAを利用している人の開発対象システム
C#とVBAを利用している人の開発対象システム
(出所:日経クロステック)
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 最後に第5位のCと第6位のC++の開発対象システムに触れておこう。どちらの言語も主な用途は組み込み系ソフトの開発だった。Cを利用している人のうち13人(56.5%)、C++を利用している人のうち13人(65.0%)が開発対象システムとして組み込み系ソフトを挙げた。

調査概要
「プログラミング言語利用実態調査2023」という名称で、Webサイトによるアンケート形式で実施した。調査期間は2023年9月21日~10月18日。SE(システムエンジニア)やプログラマー、研究開発、ITアーキテクトなど、ITにまつわる仕事をしている358人から有効回答を得た。回答者の年齢は、20代以下が8.4%、30代が10.6%、40代が24.3%、50代が31.0%、60代以上が25.7%。職種は、経営層が2.8%、コンサルタントが3.6%、プロジェクトマネジャーが3.6%、ITアーキテクトが7.3%、SEが21.5%、プログラマーが15.6%、セールスが0.8%、システム運用/サポートが2.5%、研究開発が14.0%、社内SE(システム部門)が8.9%、その他が19.0%。職種は四捨五入により100%にはならない。