https://www.phileweb.com/review/article/202312/07/5370.html
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世界最高水準を実現するMUTECのクロック技術
スタジオや放送業界で名を馳せるドイツのMUTEC。正確なデジタル伝送を実現するマスタークロック・ジェネレーター、サンプリングレート及びフォーマット・コンバーターなどは有名だ。
オーディオ向けとしては10MHzリファレンス・マスタークロック・ジェネレーターのクオリティの高さでよく知られている。これまでに「REF10」、そのスペシャルバージョンとなる「REF10 SE120」を発売してきたが、まずはMUTECの大切な要素を説明しておこう。
それは、数字的な精度の高さに加え、周囲の温度や微細振動にも影響されない長期安定度も保持していることにある。特に、伝送ジッターに影響を及ぼす近傍位相ノイズが非常に少ない。近傍位相ノイズとは、10MHzから1Hz離れたところに現れるノイズの量で、これが、REF10 SE120では-120dB/c(@1Hz)に到達している。おそらく、これは世界でも数少ない優秀な値であろう。
私個人も、この性能値と解像度向上の効果を目の当たりにし、あるSACDマスタリングに使用したことがある。REF10 SE120を使用すると、とりわけノイズフロアに隠れそうな微細音を浮き上げ、静寂感を引き立て楽器の倍音を豊潤にしてくれた。さらに一大効果として、空間描写性が高まった。空間に一層リアルな演奏のさまが描写されたのだ。
高音質パーツを贅沢に使用し、高精度のクロックを供給する
さて、前段の文章が長くなってしまったが、同社は何とハーフ・サイズのREF10 NANOを新登場させた。価格はオープンだが、税込で約29万円程度。フレンドリーな価格を実現してくれた。
しかし、スペックや内部技術に手抜かりはない。フロントパネルには、左から電源のLED表示、セレクター(出力コネクターの選択を行うプッシュスイッチつきロータリーエンコーダー)、4系統のLED出力表示、内部電源と外部DC15V電源を区別するLED表示、クロック稼働状態のLED表示が配置される。
BNC出力端子は、接続するDACなどのインピーダンスに対応するため、1と2は50Ω、3と4は75Ω出力となっている。さまざまなDAC等に対応できるのは、とても便利で優位点だ。
内部技術も説明しよう。リア中央付近には、大型メタル仕様の10MHz超低位相ノイズのOCXO(恒温槽温度補償型水晶発振器)を配置。これはドイツ国内でハンドメイドされ、高精度かつ-112dB/c(@1Hz)の優秀な近傍位相ノイズを実現している。ここで発信された10MHzは4系統に分離された、高スルーレートかつ低リップルのクロックドライバーによりBNC出力される。
電源部は、フロント右側付近にあり、スイッチング電源を採用。その電源出力にチョークコイル、高品位コンデンサー、WIMAの高音質フィルムコンデンサーを使用し徹底した低ノイズの高品位電源を各レギュレータ電源に供給している。なお、本機では15VのDC外部電源にも対応した。
このように、接続するDACなどへジッターを徹底して低減したクロックを伝送する技術を搭載したことが大きな特徴だ。
透明度と解像度が高まり演奏のさまがよりリアルに
試聴では、同社の高精度クロックケーブルを使用した(50Ωと75Ω仕様を近日発売予定)。グランド(アース)までも金メッキしたドイツのDamer&HagenのBNCコネクターを採用。
私はdCSのVivaldi DAC専用のVivaldi Clockの10MHz入力で試したが、一聴しただけでも音の透明度と解像度が高まったことが理解できた。特に音場の幅や奥行きをよく再現し、演奏のさまが、驚くほどリアルになった。いままで聴こえてはいたが、気にしなかった微細な音や演奏上のちょっとした動作までクローズアップされ、音楽のリアリティが満喫できた。
REF10 SE120は落ち着きのある高解像度特性が特徴だが、本機は積極的に音の透明度や解像度を高めているところがあり、弱音から強音まで自然な音のグラデーションを感じた。極端に言えば、良い意味で、いかにもハイエンドオーディオのいい音だということを主張している。
キーポイントは、いい音へのアプローチ。すなわちトランスペアレンシーと言えるのかもしれない。私は、この音が好きだ。同社のマスタークロックジェネレーターMC3+USBとコンビを組みたくなる。
(提供:ヒビノインターサウンド)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です。
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