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 中国Zeekr(ジーカー)の電気自動車(EV)「007」の分解を開始してまもなく、車両下部に一体成型物が現れた。今回の分解企画の注目ポイントである、「ギガキャスト」による後方アンダーボディーだ。磁石を近づけたがくっつかない。アルミニウム(Al)合金で出来ているようだ。

 ギガキャスト(ギガキャスティング)とは、型締め力の大きなダイカストマシンを使って金属製部品を一体成型する技術だ。これまでそれぞれの部品を接合する必要があったが、1つの部品となることで工数やコストの削減につながるのではないかと期待が広がっている。



Zeekrを下部から見た様子
後輪側はギガキャストによる一体成型物(赤枠で囲んだ部分)だった。(写真:日経クロステック)
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「とにかく大きい」

 分解班はその大きさに驚かされた。ギガキャストによる成型品が搭載された自動車を分解したのは初めてだった。「とにかく大きい」とあちこちで声が上がった。荷室と電池パックまでをつなぐリアボディーが一体となっている。タイヤを外すと、その内側もギガキャストで製造していることが見て取れた。Zeekrに確認すると、従来80点の部品を組み合わせていたものを1点にしたと分かった。


 
タイヤハウス部分
ダイカスト特有の形状のリブを観察できた。(写真:日経クロステック)
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 Zeekrは中国LK Technology Holdings(LK)から型締め力7200tf(約70.6MN)のダイカストマシンを購入。外注はせず、内製で製造する。車体の剛性は以前から10%向上、質量は15%軽量化した。

 ギガキャストは発展途上の技術である。ダイカストメーカーの技術者は「メリットとともにデメリットは確かにある。それでもまずはやってみる自動車メーカーが多いのではないか」と話す。Zeekrも007や同社の多目的スポーツ車(SUV)「009」にギガキャストを適用し、確かにその波に乗った。今後も導入車種を広げていきたいとしている。


 

009のギガキャスト適用部
車両後部のアンダーボディーに適用した。(写真:Zeekr)
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 自動車メーカーやダイカストマシン企業がギガキャストの活用に向けて研究開発に力を入れている領域が、(1)素材(2)外部からの衝撃にどれだけ耐え得るかといった構造設計――だ。

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