https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/spv/2409/12/news089_2.html
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TDKが車載用コンデンサーを開発 MLCCを横に3つ並べて大容量化静電容量1.5倍に(1/3 ページ)
TDKは2024年9月10日、積層セラミックコンデンサー(MLCC)2~3個を金属端子で接合した金属端子付き多連型メガキャップ「CA」シリーズで、車載向けの新製品を開発したと発表した。従来は縦に重ねていたMLCCを横に並べる新構造を採用。「業界最大」(同社)という3連化を実現し、静電容量を従来比最大1.5倍にした。
TDKは2024年9月10日、積層セラミックコンデンサー(MLCC)2~3個を金属端子で接合した金属端子付き多連型メガキャップ「CA」シリーズで、車載向けの新製品を開発したと発表した。
従来は縦に重ねていたMLCCを横に並べる新構造を採用。「業界最大」(同社)という3連化を実現し、静電容量を従来比最大1.5倍にした。金属端子材料の最適化によって、低抵抗も実現。大電流対応、大容量化の要求が高まる車載用途などでの展開を目指す。
縦積みから、横に並べる構造に変更し課題解決
下図が新製品および従来品の製品ラインアップだ。新製品では、金属端子で接合した「金属端子付きMLCC」(TDKは「メガキャップ」と呼称)でMLCCを3連化した構造を設計し、最大で従来比1.5倍の静電容量を実現した。Class1(温度補償用)では1000Vで99nF、Class2(高誘電率系)では100Vで47μFなど、幅広いラインアップをそろえる。AEC-Q200にも対応している。
製品ラインアップについて[クリックで拡大]出所:TDK
TDKはMLCCを2~3個を金属端子で接合した金属端子付きMLCCについて、車載グレード品としては従来、MLCCを縦に重ねた構造のCKGシリーズを展開してきた。ただ、車載用途で大容量化が求められる中、MLCCを縦に重ねる構造は、製品高さや重心が上がることによって振動によるリスクが大きくなるほか、電流経路が長くなることによってESRやESL上昇するなどの課題があり、MLCCを増やすことで静電容量を増加する対応は難しかったという。CKGシリーズの最大MLCC数は2個までだった。
今回、TDKはMLCCを横に並べる新構造を採用したことでこの課題を解決。MLCCの数を増やしても重心が上がったり、電流経路が長くなることはなくなり、静電容量数アップが実現できるようになった。また、一般的な電解コンデンサーと比較しても、製品高さを抑えながら容量アップが可能だとしてる。なお、MLCCは3個以上を並べる構造も技術的可能といい、顧客の需要を見ながら対応を検討していくという。
横に並べる構造によるメリットについて[クリックで拡大]出所:TDK
金属端子の材料改良でESRを60%低下
また、TDKは今回、金属端子の材料についても改良を加えた。従来品では金属端子は鉄やニッケルを主成分とした単一材料を用いていたが、機械的な強度は強い一方で電気抵抗が大きいため、電流を流すと発熱しやすいという課題があったという。
今回、同社は鉄やニッケルを主成分とした材料を、銅を主成分とした材料で挟む3層構造を採用。これによって機械的強度や熱膨張は従来品と同等を維持しつつも、低抵抗、低発熱化を実現したという。説明担当者は、「銅は機械的強度が弱く単体で使う場合は振動に弱い。今回、中心部は鉄とニッケルを主成分とした材料で強度を保ちつつ、比較的電気特性の良い銅で挟むことで抵抗を下げた」と説明した。インピーダンス、ESR(等価直列抵抗)周波数特性について比較したのが下図だ。同社によると、新製品はESRおよび発熱量を従来比で約60%改善しているという。
金属端子材料最適化の詳細[クリックで拡大]出所:TDK
精密な嵌合構造&高温ハンダ接合を組み合わせ
TDKがもう一つの利点として挙げるのがリフロー信頼性の向上だ。従来品では金属端子とMLCCとの接合は高温ハンダ接合のみだったが、「顧客が実装するハンダよりも融点の高いハンダを使用するため基本的には問題ないが、ごくまれに部品が脱落してしまう不具合があった」という。今回、同社ではMLCCの上下をツメで挟む嵌合構造と高温ハンダ接合を組み合わせた接合方法を採用し、リフロー信頼性を向上した。このツメの幅とMLCCの寸法幅については「10~20μmずれれば入らなくなってしまうような精度で作りこんでいる」と説明していた。
リフロー信頼性の向上の詳細[クリックで拡大]出所:TDK
なお、TDKは、2018年にも民生用のCAシリーズを発表し、少量生産をしていたが、当時は、上述の高精度の嵌合構造に対応し車載向けに量産する生産設備を構築することが技術的に困難だったという。今回車載向けに本格的に生産設備を開発し、量産体制を整えた。
新製品の主な用途
新製品の用途としては非接触給電やOBC(オンボードチャージャー)などの共振回路および、電源ラインの平滑およびデカップリング用途などを想定している。
電気自動車など大電流を扱う非接触給電などでの共振回路では従来、単品のMLCCを複数用いたり、温度特性がよいフィルムコンデンサーなどを用いたりしているというが、新製品のC0G特製品であれば単品のMLCCを用いた場合と比べ実装面積や備品削減などの利点がある。フィルムコンデンサーと比べても小型化のメリットが大きいという。
共振回路での用途とメリットについて[クリックで拡大]出所:TDK
また平滑用途では従来、静電容量の大きいアルミ電解コンデンサーが使われてきたが、MLCCの大容量化に伴い置換えが可能となってきたことから、特に新製品のClass2:X7特性品の採用拡大を期待しているという。
平滑回路での用途とメリットについて[クリックで拡大]出所:TDK
新製品は2024年9月に量産を開始した。当初は月産10万個予定。今後、さらに電圧や静電容量を高めた製品のラインアップ拡充を検討しているという。
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