https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/impression/1615673.html
試乗記
アルファード/ヴェルファイアの余韻もさめやらぬ中に、さらなる“上”が現れた。主に中国やアジア地域でのショーファードリブンMPV需要に応えるべく、2020年に発売された初代LMの情報は日本でもたびたび報じられて、導入の動向が注目されていた。それが次世代でついに現実となり、国内向けのラインアップに4座仕様の“EXECUTIVE”に次いで、6座仕様の“version L”が追加設定された。
資料を引用すると、安らぎと創造性を提供する「ラグジュアリームーバー」として、『素に戻れる移動空間』をコンセプトに開発されており、開放感と見晴らしに配慮しながら、多人数乗車でのパーソナル感を追求したという。「多人数乗車でのパーソナル感」とはいかに? と思っていたところ、実車に触れると、たしかに装備と走りの両面から、それらしきものを感じ取れた。
アルファード/ヴェルファイアもなかなかのものだが、LMの風貌はさらなるプレステージ性を感じさせる。凝ったデザインのフロントグリルも目を引く。見る角度で色の深みが変わる高貴な「ソニックアゲート」のボディカラーがよく似合っている。
インテリアもこんなに真っ白なコーディネートが選べるのはLMならでは。斜めに木目を配した「矢羽根」パネルによる独特の雰囲気や、カッパー色のアクセントも効いている。後席スライドドアトリムに配された、グラデーションを駆使した新感覚の質感を見せるコントロールパーフォレーションを施した表皮も見応えがある。
4座仕様より500万円も安い1500万円という価格は、それでもただでさえ高くなった印象のアルファード/ヴェルファイアのざっくり倍となるが、こうしたパーソナルユースに対応する究極的なミニバンを待ち望んでいた人も少なくないことだろう。ご参考までに、500万円という価格差の主な理由は、4座仕様にあった1列目と2列目の仕切る圧巻の48インチディスプレイがないことらしい。
3列目も広くて快適
車内は頭上にいかにもお金のかかっていそうな大きなコンソールがあり、4座仕様のような巨大画面のディスプレイはないが、常識的な14インチのディスプレイが6座仕様には標準装備される。
2列目の乗り心地はすばらしいのひとことだ。これには徹底した車体剛性の強化や電子制御ダンパーが効いているに違いない。静粛性もかなりのものだ。
これだけ大柄で重量のある車体を、いろいろなシチュエーションに対応して満足に走らせるためには、ある程度は足まわりを固めないと難しいはずで、アルファード/ヴェルファイアの場合、高速巡行時にはあまり気にならないが、市街地+αではハーシュネスによる突き上げで微妙な硬さを感じることがある。
しかしLMではそれはしっかりと払拭されていて、縦揺れも横揺れもごく小さく、しなやかでフラット感がある走りを実現している。後席の乗り心地に特化した「リアコンフォートモード」を選択すると、より路面への当たりがマイルドになる。
シート自体のマテリアルもすばらしく上質で、快適性や利便性を高めるための機能がこれでもかというほど満載されている。アームレストには天板がマグネシウム製の格納式テーブルのほか、スマホ状の脱着可能なマルチオペレーションパネルがあり、左右席どちらからでも各種機能を操作できる。
また、アルファード/ヴェルファイアもおおむねそうだったと記憶しているが、リクライニングしたままでも操作しやすいよう工夫されていたり、小物が下に落ちないように隙間を埋めるものが貼られていたり、パワーウィンドウやサンシェードの開閉時の所作が上品だったりと、スペックに表れてこない細やかな心配りも随所に見られることもお伝えしておこう。
6座仕様ということで、どうなのかが気になる3列目は、シートのサイズは十分な広さで、成人男性が座るには欲をいうとヒール段差がもう少しあるとなおよい印象だが、前後スライドを後端にすれば膝まわりには余裕があり、頭上はどーんと広い。
貧乏性の筆者にとっては、7座のように3人がけできないのがもったいなく感じられるほど3列目も余裕があり、ドリンクホルダーやUSB端子はもちろん、アルファード/ヴェルファイアにも初めて設定された電動で開閉できるサンシェードもある。
シート自体にも厚みがあり、乗り心地も位置的にはタイヤの上に座るわりには衝撃が緩和されてそれほど伝わってこない。微振動もかなり抑えられていて気にならない。これなら長い時間乗るのも苦にならなさそうだ。2列目がいいことはある程度は予想できていたが、3列目もこれほど快適とは予想を超えていた。これがまさしく「多人数乗車でのパーソナル感」なのだろう。
ドライバーにとっても、楽しいクルマだった
てっきり後席ファーストのクルマかと思いきや、それだけでなかった。LMはドライバーにとっても、運転して楽しいミニバンだったのだ。高出力モーターが効いて加速には瞬発力があり、ターボパワーで力強く吹け上がり、ステアリングを切る側も戻す側も微舵から操作したとおり正確に応答して、こういうクルマなりの“意のまま”の走りまでも実現しているとは思いもよらなかった。
そのあたりもアルファード/ヴェルファイアもけっこうよくできていて感心していたところだが、LMはその点でもさらに上まわっている。乗り心地だけでなくドライビングダイナミクスもまたすばらしい仕上がりだ。
そういえば、アルファード/ヴェルファイアの新型車発表会でシャシーの開発担当者が、「よくできたと自負しているものの、もう少しやろうと思えばできたことはある」という旨を話していたが、おそらく操縦性や乗り心地のことを指していて、それをLMでは実現できたということだろう。
2.4リッターターボエンジンとハイブリッドの組み合わせも、ヴェルファイアで乗ったときは、速さとともにちょっとワイルドさを感じたのに対し(それはそれで悪くなかったが……)、LMはパワフルかつ極めてなめらかで静かで、また新しい境地を見せてもらえたように思う。
価格はそれなりに高いが、手を尽くせばミニバンもここまでできることがよく分かった。いろいろと感心させられっぱなしの、まさしく究極のミニバンであった。
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