2025年4月11日金曜日

ドイツの墓地で、史上最速のプラスチック分解能力を持つ酵素が発見される 牡丹堂 (著)・パルモ (編集) 公開:2022-05-25・更新:2022-05-25 コメント:廃プラスチックを、マイクロ波で石油に替える技術もあるそうです。油化装置と呼ぶそうです。

https://karapaia.com/archives/52312928.html#comments

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 埋立地に捨てられたプラスチックゴミは、自然に分解されるまで何百年もかかる。だが新たに発見された、堆肥の遺伝物質から抽出された酵素ならば、1日もしないうちに食い尽くしてしまうそうだ。

 そのポリエステル加水分解酵素は「PHL7」という名で、ドイツの墓地で堆肥をガツガツ食べているところを発見された。

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 そこでペットボトルでおなじみの「ポリエチレンテフタレート(PET)」に試してみたところ、16時間以内に9割を分解できることがわかったのだ。

 これまで知られている中で最速の天然のプラスチック分解者であるという。

これまでで最速のプラスチック分解能力を持つ天然の酵素

 2016年、日本のとあるリサイクル施設で、プラスチックを食べる細菌が発見された。これから生成される「ペターゼ(PETase)」と呼ばれる酵素は、ペットボトルでお馴染みのPETをすごい勢いで分解し、プラスチック分解酵素としての地位を不動のものにした。

 だが、ドイツ、ザクセン州ライプツィヒの墓地で、新たに発見された「PHL7」酵素は、さらにその2倍の速度で分解する。

 ペターゼには発見以来さまざまな改良が施されてきたが、そんな強化ペターゼすらPHL7酵素から学ぶべきところがあるという。

 「ライプツィヒで発見されたこの酵素は、これまでより少ないエネルギーでのプラスチック再利用を可能にする代替リサイクル法を確立する手助けになるでしょう」と、ライプツィヒ大学の微生物学者ウォルフガング・ツィンマーマン氏は語る。

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Photo by Claudio Schwarz on Unsplash

万能ではないが効果的に分解できる

 PHL7酵素を活用すれば、ペットボトルなどのPETプラスチック製品を環境に負荷をかけずに効果的に分解し、新たなプラスチック製品を作り出すことができる。

 残念なことに、PHL7酵素もペターゼも万能ではない。一部のボトルに利用されている結晶化レベルが高い(分子がより組織化された構造をしている)PETを完全に分解をすることは叶わない。

 それでもPHL7酵素なら、PET製の果物のパックを24時間もしないうちに分解してしまう。

 さらに素晴らしいことに、その過程でできる副産物で、新しいプラスチック容器を作ることだってできる。

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photo by Pixabay

プラスチックのリサイクルが世界経済を左右する

 リサイクルが世界に与える威力は計り知れない。世界では毎年8200万トン以上ものPETが生産されている。だが現状では、そのうち新たなプラスチックとして生まれ変わるものはほんの数パーセントに過ぎないのだ。

 またプラスチック製品をリサイクルするには、今のところまずはそれを溶かさねばならない。これは多大なエネルギーとコストがかかる方法だ。

 一方、生物学的なリサイクルは、より低コスト・高効率な循環型プラスチック経済につながると期待される。だからこそ、ここ数年、科学者たちはプラスチックを食べる細菌の開発にしのぎを削ってきた。

PHL7酵素がプラスチックを素早く分解できる理由

 堆肥の遺伝物質から抽出されたPHL7酵素が手早くPETを分解できる秘密は、DNAの中にあるようだ。

 PHL7酵素のアミノ酸配列は、とある部分がほかプラスチック分解酵素と少し違う。フェニルアラニン残基の代わりに、ロイシンがあるのだ。この部分は酵素とポリマーの結合に関連していると考えられている。

 今回の研究グループは、その効果を確かめるために、他のプラスチック分解酵素のフェニルアラニンをロイシンをに置き換えてみた。するとプラスチックの分解速度が一気に加速。PHL7に匹敵する速さになることが確認されている。

 この特徴のため、PHL7酵素はペターゼよりも多くのポリマーに結合できるようだ。

 こうした結果に基づき、フェニルアラニンがロイシンと置き換わったことで、PHL7酵素の残基当たりの結合エネルギーが増大したと推測されている。

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photo by Pixabay

素早く分解、環境にやさしいプラスチックのリサイクル

 PHL7酵素は仕事が速いだけでなく、特に下処理をしなくてもプラスチックを分解することができる。粉砕したり溶かしたりしなくても、ガツガツとプラスチックを食べてくれるのだ。

 さらに副産物を再結合させるために石油化学物質に頼る必要がない。

 PHL7という強力な酵素を使えば、使用済みPETを直接リサイクルできるようになる。だから二酸化炭素の排出は抑えられ、石油化学製品も使う必要もない。

 その大食い能力なら、PETプラスチックの使用・廃棄・リサイクルという持続可能な流れを実現できると期待できるようだ。

 世界のプラスチック汚染の惨状を考えると、夢のような話だ。研究グループは現在、試作品の製作に取り組んでいるとのことだ。

 この研究は『ChemSusChem』(2021年6月15日付)に掲載された。

References:A New Enzyme Found in Compost Just Set a Speed Record For Breaking Down Plastic / written by hiroching / edited by / parumo

本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者向けにわかりやすく再構成し、独自の視点で編集したものです。

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この記事へのコメント 27件

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  1. なんかヤバい兵器になりそうな気がする。
    インターネットを流れるプログラムコードが国家のインフラを破壊する凶悪な兵器として悪用されるのを見るにつけても。

  2. 一昔前は永遠に残るだなんだと言われてたが今や酵素が分解したり海洋のはそこに生態系が築かれるくらいだから自然って逞しいな

    1. >>4
      元々地球の中でぐるぐると資源や元素として循環しているだけだからね…
      その形としては各々の時間軸は違ってるだけ

    1. ※5
      残念ながら例えば原子力発電や核兵器にも使われるウラン238の半減期は45億年で完全に地球にかえるより先に地球が無くなる
      地球は人類が汚したものすべてを都合よく浄化してくれたりはしない

      1. ※8
        別に人類がウラン238を作ったわけでもないし、半減期が45億年もかかるような物質はほとんど放射線を出さないから無害だぞ。バナナにだって含まれるカリウム40も半減期は12臆年もある。

  3. プラを食うのはわかるが食った後何が出るのだ
    普通の生物は黄金に何かしら元の成分残るので
    もし細かいプラも残ると余計に大変なことに
    なるぞ

  4. プラスチックは腐らないのが問題の一方で、腐らないのが良さでインフラにも使われてるから、
    変に広まったらどえらいことになりそう。

    1. ※11
      銀河鉄道999や清水義範の小説でそういう話があったな
      どっちも大惨事になるんだけど開発者はそれほど気にしてないというオチだった

  5. PET以外のプラスチックの分解能力と実際に分解される様子が気になる

  6. この製品は、処理施設で分解されるプラスチックを使っていますっていう流れになるんかなぁ。

  7. あくまで酵素で、生物のように自分で増殖したりする遺伝子は持ってないから、
    生物兵器のごとく例えこれを街中にばらまいても文明が崩壊するわけではない。
    研究室以外ではどうせ長く存在できないモノだから適切に管理すれば問題はない。
    ただ逆を言えば細菌やウィルスみたいに増殖させることが出来ないから
    普及には時間がかかってしまうし、管理コストもかかる。

  8. 地下や海底のケーブルの皮膜がこれで溶かされたら大大大惨事だな

  9. 10年ぐらい前にNHKのニュースでドイツ製の焼却炉を使ってた日本とドイツで、あまりに高性能で圧縮しすぎて放射能漏れてしまう物質を生成してしまう事が判明しドラム缶に封印してるってニュースあったじゃん…
    日本もドイツもドラム缶に封印して地下に並べてたけどあれどうなったの?
    同じようなこと起こらない?
    今度は全てを分解する酵素作っちゃうドイツ人とそれを使用しちゃった日本人…

  10. 早い旨い安いというコピーがある。
    早いはわかった、なら上手い安いはどうだろう?
    どれだけ使いやすいかな、相手にできるプラの種類は?(溶けないものは残るんだし分別は簡単かい)、酵素をスプレーか粉末にしてかけてから攪拌の手間は?(あるいは組み合わせの酵素の順番)
    それら全てを含めて処理槽での回転効率や、再利用可能でも人や自然への安全性(安全でも刺激臭はないの?)
    掃除のしやすさも大事。

    安いは酵素の生産から工場や施設の建設と維持、それらの人件費などなど。
    もし燃える山にかけて分解が終わったペーストを重機で片付けられるのなら理想的だけど、43℃で密閉加圧とかなら大型施設がいるし処理量は上がんないし、とんでもない移送費がかかる。
    燃焼じゃないから電気代もまかなえないしね。

    いくつか分解酵素の候補が見つかってるのだから、生産しやすさ、プラ処理槽の工程、廃棄物の処理(とリサイクル)を基準に査定してほしいものだ。
    ほかにも建設場所なども問題になるだろうし(発砲スチロールのように処理車で動けるならいいし、大型スーパーやイベント会場に置ける)、思いつかない壁にも突き当たるだろうけど。
    これとCO2は取り組まないといけない議題だね。

    もし日本がプラの回収処理を引き受ける国になれば少し誇らしいとも思うのだが(石油はほぼ出ないしね)。

  11. こういう記事は山ほどあれど
    プラスティック分解後に何ができて
    それが無害かどうかは一切書かれていない

    だから記事に意味がない

  12. 堆肥とは有機物(落ち葉・糞・食物カスその他) を微生物で腐熟させたもの。農業でもやっているが植物と微生物のいるところなら自然の中でも日夜生成する。
    堆肥の中の微生物(細菌・菌類)に人工の有機物(プラスチック)を処理できるものが現れても不思議はない(突然変異)。これら微生物が分解処理をするのに使う道具が酵素というたんぱく質だ。ヒトも消化酵素を使って体内で食物から栄養を得ている。その酵素の設計図(遺伝子)を解析し、操作すればより高性能な酵素を生み出すこともできるという話だ。

  13. プラスチックはそれまで自然界になかった物質。だからそれをエサとして利用できる微生物がいなかったので腐らない。
    しかしプラスチック原料の石油すらある種の細菌がエサとして利用している。プラスチック自体を利用できる細菌が現れるのは時間の問題だった。微生物も日夜試行錯誤して生きている。環境にプラスチックが広まればそれに対応する微生物も出てくる。それを拾い上げて目をかけて育ててやれば、汚水処理に使う活性汚泥の様に使える。
    ただ廃棄プラスチックの一番の処理法は燃料だろう。もとが石油だけに。

  14. 今まで見つかってる物はペットボトルやウレタンの様な比較的軟いプラ分子を分解出来るだけで一般のプラスチックを処理できる訳じゃないし必要な時間と濃度の問題で魚より多くなるゴミ問題は変わらんよ


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