https://www.projectdesign.jp/articles/news/b69a88d6-1c90-49df-8be4-1cbbc5b0573b
(※本記事は「産総研マガジン」に2025年3月19日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
ダイヤモンド半導体とは?
ダイヤモンド半導体は人工ダイヤモンドでつくる半導体です。現在主流となっているシリコン半導体などと比べると、高温や高電圧でも動作が可能で、また放射線量の高い環境でも半導体としての性質を失わないこと、使用時の発熱が少なく放熱性が良いことなど、多くの優れた特性をもっています。そのため「究極の半導体」になると注目されています。
ダイヤモンド半導体は、無線通信用途や高放射線環境で利用可能なアナログ半導体としての応用が見込まれ、「究極の半導体」として高い期待が集まっています。 アナログ半導体としての用途だけでなく、AIや電気自動車などの普及によって電力需要が高まる中、大きな電流・電力を扱える新しいパワー半導体としての応用も期待されます。ダイヤモンド半導体の製品化と量産に向けた取り組みが活発になってきた現在、なぜダイヤモンド半導体が注目されるのか。開発の現状について、先進パワーエレクトロニクス研究センター 新機能デバイスチームの梅沢仁上級主任研究員と、共同で研究開発を進めながら製品化に取り組む大熊ダイヤモンドデバイス株式会社の星川尚久代表取締役に聞きました。
ダイヤモンド半導体とは
ダイヤモンドといえば、光り輝く高級な宝石が頭に浮かびますが、その硬さを生かしてダイヤモンドカッターなど工業用途でも使われています。工業で用いるのは、希少な天然のダイヤモンドではなく、人工的に合成するダイヤモンド。炭素でできているダイヤモンドは硬さだけでなく、電気的にも優れた特性を持っています。ある条件下では電気を通し、ある条件下では電気を通さないという「半導体」の性質を作り出せるため、ダイヤモンド半導体としての応用が有望視されているのです。
半導体にはいくつかの種類があります。スマートフォンやPCに使われているCPUやメモリなど、0と1の情報を扱う半導体はシリコン製が主流の「ロジック半導体」です。(産総研マガジン「ロジック半導体とは?」)
ダイヤモンド製の半導体(ダイヤモンド半導体)は、耐極限環境用の「アナログ半導体」として、宇宙開発での応用や放射線量の高い環境での活用が期待されています。アナログ半導体というのは、センサーからの微小信号を低ノイズで増幅するなどの機能を持つ半導体のことを指します。また、既存半導体よりもさらに高周波高出力を実現する通信用のRF半導体や、もっと大きな電流を扱う「パワー半導体」としての役割も期待されています。他の半導体材料とは桁違いの特性があることから、「究極の半導体」として期待されています。(産総研マガジン「パワー半導体(パワーデバイスとは)?」)
基本的な機能 | 主な基板材料 | |
---|---|---|
ロジック半導体 | 高度な論理演算を実行する | シリコン(Si) |
アナログ半導体 | 信号を低ノイズで増幅する | シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド(C) |
パワー半導体 | 電力変換を扱う | シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド(C) |
なぜ、ダイヤモンド半導体が「究極」といわれるのでしょうか。元素周期表の14族周辺の元素は半導体としての電気的特性を示し、半導体の基板材料としてよく用いられます。半導体開発の歴史を振り返ると、ゲルマニウム、次いでシリコンと周期表の第4周期から第2周期へと、つまりより軽い元素へと順に、実用化されてきました。そして現在では、次世代半導体といわれている窒化ガリウム(GaN)半導体やシリコンカーバイド(SiC)半導体がすでにパワー半導体として製品化されています。

次世代半導体にはそれぞれ異なる強みがありますが、ダイヤモンド半導体では、高周波高出力性能に優れ、エネルギー効率がよいため使用時に熱が出にくく、しかも放熱性にも優れています。その特性により、半導体自体を冷やすための電力や装置は必要最低限で済み、装置全体を小型化したり省電力化したりすることができます。また、高温や低温、放射線などの極限環境に強いことから、放射線が飛び交う過酷な環境である原子力発電所や宇宙環境において、優れた性能と省電力性が両立できる可能性があります。こうしたダイヤモンド半導体の特性を生かして、電気自動車や次世代通信基地局(6G)などさまざまな製品への応用が期待されています。

(記事の続きはこちらから。産総研マガジン「ダイヤモンド半導体とは? –製品化が期待される究極の半導体– 科学の目でみる、社会が注目する本当の理由」)


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