2016年2月10日水曜日

Apple Payに対応したSquareのカードリーダー、全米のApple Storeで販売


    文● 末岡洋子 編集● ASCII.jp

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  • 2016年02月10日 15時00分更新

 NFCを利用したモバイル決済、モバイル端末向けクレジットカードリーダーなど、モバイル決済分野は大きな起爆はないもののゆるやかに少しずつ動いている。

 2月に入り、モバイル端末に装着してカード決済を可能にするSquareのApple Pay対応カードリーダーを全米のApple Storeで購入できるようになった。Square、そしてApple Payの両方に好影響をもたらすかが注目される。

スマートフォンと組み合わせてクレジットカードの決済環境を構築できるSquareにApple Payに対応したリーダーが登場した

Apple Payでの決済に対応したSquareのカードリーダー
これで個人商店でもApple Payが利用可能になる!?

 SquareはAppleがApple Payを発表した当初からサポートする姿勢を明らかにしていた。共同創業者でCEOを務めるJack Dorsey氏に本社で取材して計画を聞いたのが2014年11月、それから一年後の2015年11月にSquareはApple Pay対応を実現した。

 これまでApple Payに対応した最新のカードリーダーはSquareのウェブサイトでのみの提供だった。価格は49ドル。この2月より、Apple Storeでも取り扱いを開始した。

 商店はこれを利用して、クレジットカード決済に加えて、Apple Payによる決済も提供できる。もちろん、Android Pay、Samsung Payなど同様のNFCを利用した決済サービスも利用可能だ。商店側はリーダー端末購入に加え、決済金額の2.75%をSquareに支払う。既存ユーザーは1台に限り無償で交換にも対応してくれるようだ。

IPO以来、株価が下がっているSquare

 期待されるメリットはいくつかある。まずはApple側。単純にApple Payの裾野拡大が期待される。これまでWalgreens、Whole Foods、Peet’s Coffee、マクドナルドなどが導入、アプリで対応しているものではAirbnbなどがある。Squareは主に個人商店を顧客に持つことから、リーダー導入のコストでできなかった、これら個人商店や小規模な小売店で導入が進むと考えられる。

 次にSquare側。個人商店を中心に普及が進んでいる同社のカードリーダーだが、ブームが一巡した感がある。Apple Payのサポートを機に需要を喚起したいところだ。なお、スマホ向けのカードリーダーでApple Payに対応するのは実はSquareが初めてではない。すでにPay Anywhereは2015年夏に発表、価格も39.95ドルと少し安い。そしてAppleも取り扱っているようだ。

スマホベースのモバイル決済インフラは国内外ともライバルは多い。Apple Pay対応も最先発なわけではない

 Squareは2015年11月にIPOを果たしたが、市場全体の動きに連動してか株価が下がっている。9ドルのIPO価格に対し、1月後半からこれを下回っている状態だ(記事執筆時点)。Dorsey氏はSquareの前に共同創業したTwitterのCEOも務めており、”二足のわらじ”は今のところちょっと苦しいように見える。

 なお、先日たまに利用するある国内の出張サービスを利用したところ、以前はSquareを使っていたのが楽天スマートペイに変わっていた。理由を聞いたところ、スマートフォンのイヤフォンジャックに差し込んで使うのは不安定で、時間がかかることしばしばだったという。楽天スマートペイはスマートフォンに直接接続せずにBluetoothを利用するタイプで、こちらの方が安定しており決済がスムーズとのことだった。


Apple Payを利用しない理由は
「現状で満足しているから」「よくわからないから」

 Appleは2月に入り、Apple Payが利用出来る小売店を新たに追加し、200万のショップで利用できるようになったことを発表した。

 実現すれば大きな起爆となりそうなのがスターバックスだ。現在はアプリでのみApple Payを利用できるが店舗ではまだ。2015年秋、あるイベントでApple Payの担当者が米国のスターバックスでまもなく対応と述べたことが報道されたが、その後の進捗はない。スターバックスは全米で自社アプリを利用したロイヤリティープログラムを展開している。バーコードを利用してアプリでの決済も可能で、ドリンク12杯で1杯無料になるのがうけている。Apple Payを利用するとこれらロイヤリティーが適用されるかどうかはわからない。なお、同担当者はKentucky Fried Chicken(KFC)などでも利用できるようになるとの計画を語ったという。

 米国外での展開も進めている。2015年に英国、カナダ、オーストラリアに拡大し、年末には中国でUnion Payと提携して2016年に提供することが発表されている。

 では、実際の利用はどうなのか。Apple Payの利用を四半期ごとに追跡しているPymnts.comの調査によると、iPhone 6および6 Plusの所有者にApple Payの利用について聞いたところ、最新(2015年10月)のデータでは16.6%が「利用している」、残る83.4%は「利用していない」と回答している。

 使わなかった人に理由を尋ねたところ、「現在の決済の方法に満足しているから」「Apple Payがどのような仕組みか理解していないから」で7割を占め、2割弱が「セキュリティーが心配」と回答している。利用していない理由も2015年3月からほとんど変わっておらず、日常のことだからこそ変化が難しいといえそうだ。


筆者紹介──末岡洋子


フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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