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2016年02月21日 08:03 産経新聞
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限定公開( 79 )
写真 「カフェ・バーンホーフ」の店内にずらりと並ぶ世界各国のこだわりのコーヒー豆。常時20種類以上と豊富な品ぞろえは圧巻だ=大阪市福島区(前川純一郎撮影) |
柑橘(かんきつ)系の華やかな香りに包まれたかと思うと、すっと抜けるような爽やかさがのどを通り過ぎた。実に繊細な酸味。そして、口にふわっと広がる品の良い優しい甘みが、体にゆっくりとしみこんでいった。
「バッハコーヒーグループカフェバーンホーフ」(大阪市福島区)で味わったのは、挽(ひ)き立ての豆を使い、ペーパードリップで1杯ずつ丁寧に淹(い)れられた「パナマ・ドンパチ・ゲイシャ・ナチュラル」という名のコーヒー。パナマの名園といわれるドンパチ農園で、自然農法によって作られたゲイシャという豆の品種を意味する。
1杯1500円。これでも破格の安さ。「日本では5%程度しか流通しない最高品質の豆」という「スペシャルティコーヒー」の最高峰とされ、まさに「至高の一杯」なのだ。
スペシャルティコーヒーとは、農園や栽培地区が特定でき、栽培法や収穫、精製の品質が高いことを条件とし、SCAA(米国スペシャルティコーヒー協会)が認定する専門的技能者「Qグレーダー」が評価、格付けした豆のことだ。
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「サードウエーブ」(第3の波)と呼ばれるコーヒーにいま、熱い視線が注がれている。
19世紀後半に米国の一般家庭に普及した浅煎りでライトテイストの大量消費型のコーヒーを第1の波、高級豆と機械抽出の深煎りのコーヒーをスタイリッシュに味わうスターバックスコーヒーなどの「シアトル系コーヒー」の普及を第2の波とすると、第3の波は産地や畑、栽培・収穫法などを明確にし、選び抜いた豆で焙煎(ばいせん)、抽出方法にも細かくこだわり、豆の個性を大事にしたコーヒー。ワインでいえば、土地によって異なる土壌や気候を意味する生育環境「テロワール」にこだわる哲学的な奥深さが、コーヒー世界でも席巻しつつあるのだ。実は、日本でも一部の店主が豆の品質にこだわり、丁寧に1杯ずつ淹れてきた。つまり日本の伝統的な純喫茶の逆輸入版というわけだ。
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先に紹介した「バーンホーフ」の特徴はハンドピッキングと呼ばれる欠点のある豆を一粒一粒丁寧に取り除いていく作業。より質の高い豆を選別する根気のいる作業だ。焙煎方法も細かい。新しい豆を取りそろえるのはもちろん、それぞれの豆がもつ本来のおいしさを引き出すため1種類ずつ焙煎の度合いが異なる。焙煎ごとに味の確認作業(カッピング)も欠かさない。
Qグレーダーの資格を持つバーンホーフの安部龍さんは、第3の波の流行について「自分がどんなものを飲んでいるのかを知る機会があるのはいいことだし、楽しみの一つ。あとはニーズの違い。香りをゆっくり味わいたい人もいれば、目覚ましに飲みたい人もいる。コーヒーの選択の幅が増えたということ」と話す。
友人と同店を訪れた泉佐野市の向井佳代子さん(47)は「初めて入りましたが、とても落ち着く香り。種類も多いので、いろいろ味わってみて、自分の好きな豆を探したい」と話してくれた。ほっこりくつろげる空間で、日常にさりげなく楽しめる上質の一杯。これって、なんという幸せな時間だろう。
福島店(午前11時~午後7時、電話06・6449・5075)。(嶋田知加子)
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