引用元
インターネットで調べ物をするとき、必ずといっていいほどお世話になる百科事典サービス「Wikipedia」。無料で使えて、広告も一切入らないこのサービスは寄付金によって支えられている。
⇒【資料】Wikipedia寄付金と総収入
Wikipediaを使っていると、「創設者のジミー・ウェールズからのお願い」という広告が画面に広がって、寄付金をお願いされたことがある利用者も多いことだろう。ちなみに、一度寄付をするとその後、毎年、メールで今年も寄付金をしてくれとお願いが届くことになる。
◆Wikipedia運営団体の実態とは?
ネット上でコラ画像が作られたりするほど創業者自らが必死に寄付金を懇願してくるWikipediaの運営団体はさぞ財政基盤が厳しいのだと思いきや、意外とそうでもないようだ。ジミー・ウェールズが率いるWikimedia財団は、監査法人KPMGから監査を受けた上で、毎年の財務状況を公開している(:参照)。これを読み解いてみよう。
まず収入を見てみると、一貫して増収していることがわかる。’12-13年には4500万ドル程度だったのが、’15-16年には8000万ドル近くと、ほぼ倍増している。収入の9割を占めるのはユーザーからの寄付金だ。
1回あたり8ドル程度の寄付を平均とすれば、単純計算では1000万人ほどから集めていることになる(実際には大口の寄付を行っている者もいるから、寄付者の数はもっと少ないはずだが)。
◆平均報酬は1人あたり10万ドル!?
一方の支出の総額は5000万ドル程度と収入よりはるかに小さい。その中で一番多いものはWikimedia財団の職員に支払われる給料、賃金であり、’15-16年で3000万ドル以上に上る。職員は300人足らずなので、平均すれば少なくとも1人あたり10万ドルの報酬を得ていることになる。これはなかなかの高給である。
サービスの初期においては、サーバー代を支払えないために積極的に寄付金を募っていたWikimedia財団だが、インターネットホスティングの費用として計上しているのは現在では200万ドル程度で、人件費の10分の1以下にすぎない。
他にはAwards&Grants(褒賞と助成金)という項目が占める割合が大きく、伸びていることがわかる。’15-16年には10万ドル以上に達した。これは寄付金を受けているWikimediaが、逆にさまざまなところに支援を行うのにかけているお金である。そういった余裕も出てきたように見受けられる。
◆総資産は1億ドル、無借金経営
こうした収支状況で運営している結果、総資産は1億ドルに迫る勢いとなっている。負債はほとんどなく、実質的に無借金経営が続けられていると言える。
Wikipediaのユーザー数は’00年代中盤から終盤にかけて伸びて以降、ほぼ横ばいを続けている。これから急激にサーバーを増やす必要などは出てきそうにない一方で、収入増が続いているので財務基盤はますます磐石となっていくだろう。
◆あくまで中立的な立場にこだわる
ただ、Wikimedia財団に余裕があるからといって、これからはジミー・ウェールズの寄付のお願いを無視していいというわけではない。Wikipediaに広告を入れることによって情報に歪みが生じるのを避けたい、という創設者の理念が貫かれているのは立派である。
Wikipediaの月間ユーザー数は3億人に上るとも言われるが、これはこの頃苦境が伝えられているTwitterとほぼ同じぐらいである。TwitterはSNSなので単純比較はできないかもしれないが、年間の収入は約20億ドルで、Wikimedia財団の25倍ほどあり、ここ半年でかなり株価が落ちたにも関わらず時価総額はいまだに140億ドルもある。
Wikimedia財団も営利企業として利潤を追及して株式上場させていれば、これに近い価値がついていたと考えられる。そうした機会を捨ててまで中立的な情報のプラットフォームを築き上げたジミー・ウェールズに感謝しつつ、私たちはこれからもWikipediaを使っていくべきだろう。
<文/大熊将八>
おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok
⇒【資料】Wikipedia寄付金と総収入
Wikipediaを使っていると、「創設者のジミー・ウェールズからのお願い」という広告が画面に広がって、寄付金をお願いされたことがある利用者も多いことだろう。ちなみに、一度寄付をするとその後、毎年、メールで今年も寄付金をしてくれとお願いが届くことになる。
◆Wikipedia運営団体の実態とは?
ネット上でコラ画像が作られたりするほど創業者自らが必死に寄付金を懇願してくるWikipediaの運営団体はさぞ財政基盤が厳しいのだと思いきや、意外とそうでもないようだ。ジミー・ウェールズが率いるWikimedia財団は、監査法人KPMGから監査を受けた上で、毎年の財務状況を公開している(:参照)。これを読み解いてみよう。
まず収入を見てみると、一貫して増収していることがわかる。’12-13年には4500万ドル程度だったのが、’15-16年には8000万ドル近くと、ほぼ倍増している。収入の9割を占めるのはユーザーからの寄付金だ。
1回あたり8ドル程度の寄付を平均とすれば、単純計算では1000万人ほどから集めていることになる(実際には大口の寄付を行っている者もいるから、寄付者の数はもっと少ないはずだが)。
◆平均報酬は1人あたり10万ドル!?
一方の支出の総額は5000万ドル程度と収入よりはるかに小さい。その中で一番多いものはWikimedia財団の職員に支払われる給料、賃金であり、’15-16年で3000万ドル以上に上る。職員は300人足らずなので、平均すれば少なくとも1人あたり10万ドルの報酬を得ていることになる。これはなかなかの高給である。
サービスの初期においては、サーバー代を支払えないために積極的に寄付金を募っていたWikimedia財団だが、インターネットホスティングの費用として計上しているのは現在では200万ドル程度で、人件費の10分の1以下にすぎない。
他にはAwards&Grants(褒賞と助成金)という項目が占める割合が大きく、伸びていることがわかる。’15-16年には10万ドル以上に達した。これは寄付金を受けているWikimediaが、逆にさまざまなところに支援を行うのにかけているお金である。そういった余裕も出てきたように見受けられる。
◆総資産は1億ドル、無借金経営
こうした収支状況で運営している結果、総資産は1億ドルに迫る勢いとなっている。負債はほとんどなく、実質的に無借金経営が続けられていると言える。
Wikipediaのユーザー数は’00年代中盤から終盤にかけて伸びて以降、ほぼ横ばいを続けている。これから急激にサーバーを増やす必要などは出てきそうにない一方で、収入増が続いているので財務基盤はますます磐石となっていくだろう。
◆あくまで中立的な立場にこだわる
ただ、Wikimedia財団に余裕があるからといって、これからはジミー・ウェールズの寄付のお願いを無視していいというわけではない。Wikipediaに広告を入れることによって情報に歪みが生じるのを避けたい、という創設者の理念が貫かれているのは立派である。
Wikipediaの月間ユーザー数は3億人に上るとも言われるが、これはこの頃苦境が伝えられているTwitterとほぼ同じぐらいである。TwitterはSNSなので単純比較はできないかもしれないが、年間の収入は約20億ドルで、Wikimedia財団の25倍ほどあり、ここ半年でかなり株価が落ちたにも関わらず時価総額はいまだに140億ドルもある。
Wikimedia財団も営利企業として利潤を追及して株式上場させていれば、これに近い価値がついていたと考えられる。そうした機会を捨ててまで中立的な情報のプラットフォームを築き上げたジミー・ウェールズに感謝しつつ、私たちはこれからもWikipediaを使っていくべきだろう。
<文/大熊将八>
おおくましょうはち○現役東大生にして、東大・京大でベストセラーの企業分析小説『進め!! 東大ブラック企業探偵団』(講談社刊)著者。twitterアカウントは@showyeahok
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