2020年08月24日 05:00
5名の先生が役に立ったと考えています。
© Getty Images ※画像はイメージです
低用量アスピリン連日投与によるがん、特に大腸がんの発症リスク低下が主に若い年齢層を対象としたランダム化比較試験(RCT)で示されたが、高齢者ではエビデンスが不足していた。そうした中、オーストラリア・Monash UniversityのJohn J. McNeil氏らは、二重盲検ランダム化比較試験(RCT)ASPREE※において低用量アスピリンを連日服用している高齢者で主にがんに起因する死亡率が上昇したことを報告した。今回、アスピリンががんの発生およびがんによる死亡に及ぼす影響をより詳細に分析。高齢者ではアスピリンががんの進行を加速する可能性があることを、J Natl Cancer Inst(2020年8月11日オンライン版)に発表した。(関連記事「健康な高齢者に低用量アスピリンの効果なし」)
全がん、血液がん、固形がんの発生リスクに有意差なし
ASPREEではオーストラリアおよび米国において、心血管疾患、認知症または身体障害のない健康な70歳以上(米国ではアフリカ系、ヒスパニック系は65歳以上)の地域住民1万9,114人を、アスピリン100mg腸溶錠連日投与群またはプラセボ投与群にランダムに割り付け、アスピリンが障害のない生存期間を延長させるかを検討した。しかし、その可能性は極めて低いとして、追跡期間中央値4.7年で中止となったが、プラセボ群に比べアスピリン群で全死亡率が高く、主にがんによる死亡であることが事後解析により示された。
今回は、その臨床記録に基づいて、致死的および非致死的ながんの発生率と死亡率の詳細な分析が行われた。
中央値で4.7年の追跡期間中に、アスピリン群で981例、プラセボ群では952例ががんを発症していた。発生率に関して、全がん、血液がん、固形がんについては両群間で有意差はなかった。
転移がん、進行がんの発生リスク、進行がんの死亡リスクが上昇
しかし、転移がん発生リスクはプラセボ群に対しアスピリン群では19%高く(HR 1.19、95%CI 1.00〜1.43)、ステージ4の発生リスクは22%高かった(同1.22、1.02〜1.45)。
また、アスピリン群では、ステージ3による死亡リスクが約2倍超(HR 2.11、95%CI 1.03〜4.33)、ステージ4による死亡リスクは1.3倍だった(同1.31、1.04〜1.64)。
最終著者で米・ハーバード大学のAndrew T. Chan氏は「高齢者ではアスピリンががんの後期ステージに悪影響を及ぼすこと、がんの進行を加速させる可能性があることが示唆された」と述べ、「高齢者のアスピリン使用には注意が必要である」と強調。さらに「高齢者ではアスピリンが細胞レベルまたは分子レベルで若年者とは異る作用を示す可能性が考えられ、さらなる研究が必要である」と付言している。
※The Aspirin in reducing events in the elderly
(宇佐美陽子)
5名の先生が役に立ったと考えています。
0 コメント:
コメントを投稿