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新型コロナウイルス感染者情報などの個人情報、顧客情報などをFAXなら送れるのが現行法なのでしょうか?
FAXなら遅れてe-mailでは送れなくて、クラウドサービスでも扱えないのでしょうか?
官民一体、産学連携の全員で協力してこの問題に取り組みたいと思います。
WEBプログラマー
エーオン 代表
石塚 正浩
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2020年08月20日 08:12 ITmedia ビジネスオンライン
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写真 今も「ファクスは過去のもの」とは言えないのが実態だ(写真提供:ゲッティイメージズ) |
2020年8月15日、神戸新聞にこんな記事が掲載された。
「コロナ患者4人分の個人情報流出 西宮市保健所がファクス誤送信」
記事によれば、兵庫県西宮市の保健所が、「新型コロナウイルスに感染した患者計4人分の個人情報を記した書類」を誤って市内の個人宅にファクスしてしまったという。新型コロナ感染者のプライバシーが他人に漏れたことで、地元紙が取り上げたのである。
このニュースはSNSでも話題になった。だが問題は情報が漏れたことよりも、「いつまでFAXなんか使ってるんだよ…」「個人情報をFAXでやり取りし、それを誤送するという、まぁこれがIT社会と言われている日本の現状なのだな、とガッカリ」などといまだにファクスが使われていることに批判が集まった。
それもそのはず。電子メールが広く普及しているため、筆者も最近では書類をPDFで送受信することがほとんどである。ただその一方で、知り合いの中小企業の事務所などに行くと、今もファクスで注文のやりとりをしているのを目にする。この神戸新聞のニュースのように、多くの行政機関でもいまだにファクスが使われている。
だが実は、世界に目を向けても、まだ「ファクスは過去のもの」とは言えない現実がある。それどころか、バリバリ現役で使われているとすら言っていいかもしれない。そこで、多くが「時代遅れ」「古臭い」と認識しているファクスの「今」を追ってみたい。
●4300万台のファクスが世界で活躍中
現在、世界ではいまだにファクスの需要は根強い。今も世界中で4300万台といわれる機器が現役で使われている。米IT系調査会社のIDCによれば、2017年に実施したグローバル企業200社への調査で、43%はファクスの利用が前年よりも増えたとすら答えている。
毎年新たに購入する人たちも多く、その数は年に数百万台規模になるという。国別で見ると、最もファクスを購入しているのは米国で、その後は、日本、ドイツ、フランス、英国と続く。そして年間170億枚の文書がファクスでやりとりされている計算になるらしい。
西宮市の例を出すまでもなく、日本でもまだファクスが多く存在している。総務省が5月に公表した「通信利用動向調査」によれば、日本人の33.1%がファクスを使っている。50代以上でぐっとその数は増え、さらに高収入になればなるほど使用率も高くなっている。
日本でもちょっとググれば、電気量販店やオンラインでも新しいファクス付き電話などが販売されているのが分かる。需要がある印だ。
PCに慣れているビジネスパーソンからすれば、なぜ今更ファクスを使っているのか理解できないという人も少なくないだろう。電子メールでPDFとして送ればいいじゃないか、と。ただ、あまりPCに慣れていない世代の人には、文書をわざわざPDF書類にして保存し、電子メールに添付して送信するというのはかなりの手間である。全くついていけないという人も多いだろう。特に印鑑が必要な書類なら、いちいち元の文書を印刷して、印鑑を押して、さらにスキャンするというのは大変面倒臭い。
最近、新型コロナの影響によるテレワーク普及の妨げになるとして、「はんこ」の文化が話題になった。そして大手企業などは電子サインを導入する動きもあるようで、そうなれば多少の手間は省けるだろうが、やはりファクスで一発で送ってしまおうと考える人がいるのは理解できる。
●なぜ、ファクスを使い続けるのか
また、ファクスを使うのにはこんな理由もある。日本の場合、中小企業などではコストの問題がある。PCでやりとりをするには、それなりのPCやスキャナーなどを導入する必要がある。さらに昨今ではサイバー攻撃による情報漏洩なども問題になっており、セキュリティソフトを導入したり、セキュリティ企業と契約したりする必要もある。そんな余裕がある企業ならいいが、そこまで手が回らないという企業も多いだろう。
さらに日本独特の理由としては、手書き文化がある。手紙でお礼を書くことが丁寧とされる文化が日本にはあるが、それも無関係とはいえず、デジタル文書だけでは味気ないと感じる人もいるだろう。その点、ファクスなら手書きで気楽に送信ができてしまい、日本人には使いやすい。
また電子メールで添付された電子ファイルの信頼度という問題もある。米国では、最初にファクスが普及した頃も、サインしてファクスで送られる文書が法的に有効かどうかが議論になった。1990年代ごろにやっと、政府などでも公式にファクスの文書を受け入れるようになっている。
電子メールの場合は、2000年に電子署名法が作られ、電子署名が法的に有効であると示されている。だが、それでもまだファクスを信頼する人が多く、電子署名などは安心できないという人たちも多いのが実態だ。例えば、米国ではFBI(米連邦捜査局)が電子メールには暗号化を求めているが、ファクスではそんな決まりはなく簡単に通信できる。
また医療分野でもファクス人気は根強い。医療分野では、施設ごとにデータベースのシステムが統一されておらず、結局、患者のデータなどのやりとりもファクスでやってしまうというケースが非常に多い。英国の国民健康サービス(NHS)は、今も8000台以上のファクスを所有している。
最近でも、新型コロナのPCR検査について、米テキサス州では急激に検査数が増えたことで、電子メールだけでなくファクスで検査結果を送ってくる医療機関も多くなり、大混乱に陥っているという。最初から、みんなが同じように使えるファクスに統一すれば、そんな混乱は起きにくいとの声も上がっている。また米国では警察当局でもいまだに広くファクスが使われているという。
●デジタルと組み合わせたサービスも
『ファクス:ファクス機器の盛衰』の著作がある米テキサスA&M大学のジョナサン・クーパースミス歴史学教授は、いまだにファクスが使われている理由を「利用者たちは変化に抵抗する。小規模な企業なら書類を交換するのに新しいテクノロジーを試してみようと思ったり、それにお金をかけたりする理由はない。ファクスを好む全ての企業は、注文などでやりとりが混乱しないように全ての顧客や納入業者にファクスを使うよう求めることになる」と、メディアに語っている。そうしてファクスは生き残る、と。
ここまでファクスの現状を見てきたが、少し前からは、デジタル文書をファクスで送信するというハイブリッドな通信も普及し始めている。つまりファイル自体はPDFなどのデジタル文書だが、それをファクスとして送信できるというものだ。今、クラウド型のファクス送信サービスなどを提供している企業もある。このサービスでは、紙とデジタルのどちらにも対応できる。半分ファクスで、半分デジタル、という感じだ。
つまり現在はファクスから電子メールに移りゆく、ちょうど過渡期にあると考えられる。ただファクスの状況を見ていくと、おそらく世代交代とともに消えていく運命にある。だがまだしばらく、なくなることはなさそうだ。
(山田敏弘)
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