2021年5月3日月曜日

【プロジェクト最前線】出題を最適化、COMPASSのタブレット端末教材「Qubena(キュビナ)」 2019/10/21 — つまずきの原因をAI解析出題を最適化人工知能(AI)を活用した教育教材が活況を ... 個々の学習到達度を把握.

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 つまずきの原因をAI解析 出題を最適化

 人工知能(AI)を活用した教育教材が活況を呈する中、COMPASS(東京都品川区)が提供するタブレット端末教材「Qubena(キュビナ)」が教育関係者から注目されている。間違いの原因をAIが解析し、一人一人に最適化された問題を出題することや、教員向けのきめ細やかな学習管理ツールを提供することで、授業の進捗を効率・短縮化する。削減できた時間を、創造力や表現力を身にする学びに振り分けるという教育モデルを確立した。

 個々の学習到達度を把握

 開発のきっかけとなったのは2011年、米シリコンバレーで起業した同社の神野元基CEO(最高経営責任者)が、AIやITの技術に触れたことだ。特に45年に到来するとされるシンギュラリティーに関心を持ち、最も影響のある今の子供たちのことを考えたという。帰国後、東京都八王子市内で学習塾を始め、自らの理想を追い求めた。

 だが、塾生徒や保護者らは成績の向上に追われて、未来の話に目を向ける余裕がなかった。そこで、「学校教育をより効率に学ぶことができれば、余った時間で未来を生き抜く力を育てることができる」(神野さん)と考え、14年春からAI教材の開発が始まった。

 教材では、生徒の解答からつまずいている分野を発見し、弱点を補う問題を出す、という手法を採用。個人の学習到達度を把握した熟練の講師でしかできないが、これをAIに代替させようとした。

 15年に完成したキュビナの特長は、生徒が解いた問題の解答や解答時間、正答率などのデータが収集・分析され、教員向けの学習管理ツールで瞬時に確認できることだ。家庭学習の状況も把握できるため、適切な学習指導や成績評価ができる。教師は、授業や宿題を準備するための時間をキュビナに任せるため、授業改善などの研究時間に充てることができる。生徒にとっては教師からの適切な助言を受けて信頼感が高まり、学習意欲の向上につながった。

 創業時からのメンバーで問題作成を担当する、木川俊哉未来教育部長は「教科書なら1ページで教えている内容でも、生徒がどこでつまずいているのか知るために数十問の問題をつくった」と説明した。1学年の数学の参考書で約4000問ぐらいの問題があるが、キュビナは倍以上の問題があるという。

 タブレットに手書きで記入するスタイルにもこだわった。数式を読み取るための最新技術を採用。生徒の書いた文字の乱れをどこまで容認するかなど、問題を解く上でストレスにならないよう工夫した。文章問題だけでなく、作図やグラフをつくることが総合的にできるアプリ教材は少ないという。

中学校で実証実験

 神野さんの理想を実現する舞台も整った。経済産業省の実証事業「未来の教室」に採択され、18年9月から約半年間、東京都千代田区立麹町中学校で数学の実証実験が行われた。1、2年生では、通常の約半分の授業時間で教科内容を終了し、創出できた時間はドローンや3Dプリンターなどのテクノロジーを使った探究活動に充てたという。授業では、先生から生徒への一方通行的な従来の集団授業ではあまり見られなかった、生徒同士で分からない問題を教え合うなどの姿もあり、生徒の積極性が高まったという。

 神野さんは「最初は教師の間に『何が起こるか分からない』という不安があったが、生徒がキュビナの操作に慣れて学習効果を出すと、教師も私たちを信頼してくれた」と振り返った。

 現場の教師の意見を反映させ、キュビナの機能も向上している。教師が、クラス全体の学習進度やレベルに応じてテストや宿題をキュビナ上で作成し、生徒に配信する「ワークブック」機能を設置。成績評価への活用が期待されている。

 現在、全国の公私立の小中高数十校がキュビナを採用し、計約2万3000人が活用している。導入を検討する問い合わせが急速に増えている。

 キュビナが普及すれば、ハイテク機器を使った教育に注力できる。「未来を生き抜く力を子供たちに教える」という理想に一歩近づく。神野さんは「子供たちが最先端のテクノロジーに触れることで、これが社会でどのように役立っているかを知ってほしい」と夢を語った。(鈴木正行)

 ≪焦点≫多くの子供たちに「未来教育」を

 COMPASSが運営する学習塾「Qubenaアカデミー」(東京都品川区)では、神野元基CEO(最高経営責任者)の目指す理想の教育を先駆けて実践している。

 同社は「子供たちが生きる未来を一緒に考え、“未来を生き抜く”を育てること」を教育理念にしている。この教育を「未来教育」と称し、課題解決の体験を重視したSTEAM教育を基本とした教育プログラムを提供している。

 Qubenaアカデミーでは、通年で「最先端テクノロジーワークショップコース」を実施。8月には、夏期1DAYプログラムとして、小学4年~中学3年を対象にした「VRで世界を作ろう!ワークショップ」を開催した。3時間のプログラムの中で、仮想現実(VR)の技術を使い、コンピューターグラフィックスで自分だけの仮想世界を自由に制作。制作した作品の中を歩いて動画を録画、最後に動画の編集を行い各自の作品を発表した。プログラムを通して、VR技術を学ぶだけではなく、最先端のテクノロジーの活用を通して創造力や表現力を身につけることも狙っている。

 同社は「今後、多くの子供たちに未来教育に触れる機会を作っていきたい」と話している。

 ■COMPASS

 【本社】東京都品川区西五反田3-6-21

 【資本金】9億2900万円 (資本準備金を含む)

 【従業員】90人(2019年10月現在)

 【売上高】非公開

 【事業内容】学習コンテンツの制作・配信、学習塾の運営

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