2021年10月20日水曜日

韓国に抜かれた日本の平均賃金 上がらぬ理由は生産性かそれとも…

 第1回

2021衆院選

木村聡史コメントコメント2
写真・図版
日本経済の現在値①賃金「424」
[PR]

 この30年間、日本は賃金が変わっていないと聞いた。しかも、海外と比べると、さらにぎょっとする。いつの間にか、先進国でも平均以下となり、差が大きかったお隣の韓国にも追い越された。どの国も上がっているのに、置き去りの日本の状況は異常とも言える。なぜ日本は賃金が上がらない国になってしまったのだろうか。

ポッドキャストでも東京経済部の木村聡史記者が解説します。

Apple Podcasts や Spotify ではポッドキャストを毎日配信中。音声プレーヤー右上にある「i」の右のボタン(購読)でリンクが表示されます。

 まず、日本の現状を確認してみた。経済協力開発機構(OECD)の2020年の調査(物価水準を考慮した「購買力平価」ベース)によると、1ドル=110円とした場合の日本の平均賃金は424万円。35カ国中22位で、1位の米国(763万円)と339万円も差がある。1990年と比べると、日本が18万円しか増えていない間に、米国は247万円も増えていた。この間、韓国は1・9倍に急上昇。日本は15年に抜かれ、いまは38万円差だ。日本が足踏みしている間に、世界との差はどんどん開いていた。

写真・図版
主要国の平均賃金(年収)の推移(OECD調べ)

 賃金はほとんど上がらなかったこの間、社会保険料や税金がひかれた後の手取りはどうだろう。

 大和総研の調査でみてみた。2人以上の勤労者世帯では、手取りは97年をピークに減少が続いていたが、12年以降は女性の社会進出の影響もあり、緩やかに伸びている。給料から引かれるものとしては、社会保険料の負担が増している。17年までの30年間で月額2万6千円の負担増だ。主任研究員の是枝俊悟さんは「少子高齢化の中、医療や介護分野の社会保険料負担はさらに増す可能性があり、可処分所得の下押し要因になりかねない」と話す。

どうして日本の平均賃金は低水準なのか。記事後半ではデータを参照しつつ、識者にも聞きました。

 ここまで上がらないのはなぜ…

この記事は有料会員記事です。残り1819文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【10/25まで】スタンダードコース(月額1,980円)が今なら2カ月間無料!詳しくはこちら

  • 能條桃子
    NoYouthNoJapan代表
    2021年10月20日11時49分 投稿

    【視点】選挙において争点となり注目が集まるのと同時に、労働環境に対して声を上げる、対話していく文化を労働者側からつくっていかなければならないと感じました。

  • 江渕崇
    朝日新聞記者=米経済、金融、雇用
    2021年10月20日11時37分 投稿

    【解説】 日本が今やっているのは「自国民の労働の安売り」ではないでしょうか。 私は今春までの4年間を米ニューヨークで暮らしましたが、あまりの物価高に「途上国からがんばって出てきた気分だ」とコラムで書いたことがあります。物価高といってもすべての商品が高いのではなく、テレビやコーヒーといったコモディティーはむしろ日本よりも安く、「生身のアメリカ人の労働」がからむ商品やサービスが高いのです。飲食や教育、医療などです。自国民の労働に高い値段がついていて、人々も気前よくお金を出すことで経済が回っているのです。 先進国でも群を抜く日本の賃金の停滞ぶりですが、その要因は何重にもかさなっています。そもそも稼げる産業が減り、生産性が上がらず、みんなに分配するパイそのものが増えていないというのが大前提としてあります。 次に、その増えないパイをどう分配するのかという点でも、株主の発言力が強まって働き手側の取り分が減ってきたという要因もあります。本来なら賃上げに向けて全力で戦うはずの労働組合も、雇用が失われるのを恐れて賃上げを半ばあきらめてきたことが背景にあります。ゆえに、コロナショック下ですら、日本の失業率は先進国でも圧倒的な低さを維持しており、必ずしも「日本は全部悪い」とまでは言えません。 ただ、賃金が増えないこともあり、日本の消費者は値上がりにはシビアで、物価もなかなか上がらずにきました。値上げできないと経営者は賃金を増やせない。一方で消費者の所得が上がらないと値上げもできない。日本経済はそんな「デッドロック状態」にあります。そうしている間にも、米国では物価と賃金の上昇が続き、年を追うごとにその差は広がるばかり。 今の「デッドロック」は市場に任せていても解消しづらいので、なんらかの政策的な働きかけが必要です。その意味で最近の自民党政権がおこなった賃上げ要請や最低賃金引き上げは、一定の意味がありました。賃金の上向き圧力をどう生み出していくのか、各党の知恵の競い合いを期待したいと思います。…続きを読む

0 コメント:

コメントを投稿