2021年11月20日土曜日

Appleとインテルを震撼させる「サムスン製3nmチップ」半導体戦争にうごめく裏事情


岩佐

サムスンの3nmチップ技術が、半導体業界に大きな影響を与える可能性があることを、テック系メディア『wccftech』が報告しています。 

*Category: technology|*Source:wccftech(1) ,(2) ,The Elec ,TrendForce ,IC Insights

台湾TSMCの対抗馬、注目されるサムスンの「3nmチップ技術」

韓国サムスンはスマホ事業やディスプレイ事業で有名なメーカーですが、世界2位の半導体ファウンドリでもあります。トレンドフォースの調査によると、2021年第2四半期の時点でサムスンは17.3%の市場シェアを持ち、トップの台湾TSMC(52.9%)に続いています。 

そのサムスンは先日、2022年6月から3nmチップの製造を開始する予定であることを発表しました。一般的に半導体は、微細化が進むほど高性能になるといわれており、現時点ではAppleや米クアルコムのチップが最小の5nmプロセスで設計されています。 

このサムスンの3nmプロセスに興味を示しているのが、米半導体メーカーのAMDです。『wccftech』によると、AMDがサムスンの最初の3nmの顧客になる可能性があることが台湾Digitimes経由で明らかになったそうです。 

AMDは好調な業績により、調査会社IC Insight社が発表した「2021年の成長している半導体企業トップ10」の1位に選ばれている半導体メーカーです。IC Insights社は、AMDの今年の収益は65%という驚異的な伸びを示すと見ており、これが事実であれば、同社は2021年度に160億ドルの収益を上げることになります。 

AMDとサムスンが協力する背景には、半導体ファウンドリ最大手である台湾TSMCとAppleの関係があります。『wccftech』によれば、AMDとサムスンはこの2社の密接な関係に「不満がある」そうです。 

台湾TSMC×Appleに対抗するサムスン、AMDと「もう1つの企業」

AppleはTSMCの最大の顧客となっており、Appleの3nmチップもTSMCで製造されることが確実視されています。TSMCの3nmチップは、2022年前半に生産が開始されると考えられていますが、TSMCの3nmチップの生産能力は、ほとんどがAppleに占められる見込みです。 

さらには、インテルもTSMCの3nmチップの生産を予約していると『wccftech』は以前報告しています。これについては「TSMCの生産能力を予め食いつぶすことで、AMDのノード進行(プロセス微細化)を阻止するための戦術かもしれない」と補足されていました。 

しかしサムスンがAMDに協力することで、AMDはプロセス微細化において競争力を持つことができます。AMDは7nmチップの製造をTSMCに全面的に依存していましたが、昨今の半導体不足の影響などもあり、深刻な供給問題に直面していました。サムスンとの協力は、これらの供給不足の問題を改善する一手となるかもしれません。 

そして、このサムスンの3nmチップ技術に興味を示しているもう一つの会社が、米クアルコムです。同社は以前もサムスンにチップ製造を委託していたこともあり、3nmプロセスにおいても同社に委託する可能性は十分にあります。 

同社は先日のイベントで、再設計したPC向け次世代CPUの次世代技術を発表し「(Appleの)Mシリーズに対して競争力のあるソリューションだ」とアピールしました。このチップセットの開発には元Appleの技術者も関わっており、ここに3nmチップ技術も加われば、Appleシリコンとも競争力を持つ強力なプロセッサとなることが期待できます。 

サムスンとAMD、またはクアルコムのタッグは半導体業界にさらなる競争をもたらし、Appleやインテルといった業界トップを揺るがす可能性が十分にあります。 

特に、AMD最大の競合であるインテルの「Core i」シリーズは、プロセスの微細化で大きく遅れを取っているため、AMDの3nmチップは同社を追い詰める新たな一手となりそうです。インテルの現行CPUは10nmプロセスとなっており、2023年に7nmプロセスに移行する予定となっています。 

 

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