2021年12月4日土曜日

AIで小型生体画像を判別したり、人の感情を認識したり 先端的な技術開発でAI活用の可能性を広げる。

https://hnavi.co.jp/knowledge/interview/roboken1812/
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発注ナビ注目のシステム開発会社を紹介するインタビューコラム。今回はAI(人工知能)のR&Dをベースに、「尖った」技術やサービスの事業化に取り組むロボケン。「人間の脳を真似しない限り、AIの成長はない」と考える、同社・代表取締役 寺田宗紘氏に、先端的な技術開発が生み出す事業、AI開発にかける想いについて、お話を伺いました。

 

■AI事業の「選択と集中」
深層学習で小型生体画像を認識

―― AI(人工知能)に関して、幅広く事業化に取り組んでいらっしゃいますね。

ロボケン 寺田氏 例えば、簡単にAIを活用したチャットボットが作れる会話のプラットフォームや、オフィスの業務を自動化できるツール、いわゆるRPA(Robotic Process Automation)を作っておりました。いろいろと手を広げていきましたが、ここにきて、AI事業の「選択と集中」をしました。

具体的には、深層学習による「小型生体画像認識」、人の感情を認識する「ニューロAI」、医療事務の効率化を図る「医療データマイニング」の3つをコア領域としてAI事業を進めることにしました。

小型生体画像認識では、AIを活用した画像認識技術により、小型の昆虫やカビ、バクテリアなどを、その分野の専門家と同等のレベルで判別する技術です。例えば、食品工場での昆虫の混入防止といった食品衛生分野、蚊などの昆虫を媒介とした感染症予防などに広く適用できます。

ニューロAIでは、人間のバイタルサインをセンサーで読み取って分析することで、その人の感情や精神状態までは把握してしまおうという研究です。この技術が進展すれば、人材採用の際に、面接をする側が、面接を受けに来た人の状況を把握することができるようになるので、人材系のテクノロジーとしても注目だと思います。

そして、医療データマイニングは、さまざまな患者の膨大な医療に関するデータを蓄積・分析することで、患者の投薬のタイミングを予測するなど、医療支援に関わる研究開発です。

 

―― チャットボットやRPAなどは、この3つのコア領域には含まれていないのですね。なんとなくもったいないような気もしますが。

寺田氏 そうですね。実は、会話プラットフォームやRPAだけではなく、他にもやってきたことは、たくさんあるんですよ(笑)。例えば、自社開発の「株価予測AI(ペンデュラム)」を活用したパッケージソフトも開発しました。

その他にも、人が何かものを記憶するのと同じ仕組みで「エピソード記憶」を分析・編集する「epiRobo」(エピロボ)なども独自技術として持っています。「epiRobo」は、人の脳「海馬」と呼ばれる部位の機能をAI化した技術です。海馬は、大脳皮質との連携で、人の記憶の、時間や場所、感情などの情報を含む「エピソード記憶」処理する機能を備えています。この「海馬」の「エピソード記憶」処理機能をAI化した「epiRobo」は、例えば、コンピュータのメモリ上で、何かしらのエピソード記憶を蓄積し、編集することなどができます。ディープマインド社が2016年に開発した、「Differential Neural Computer」に近い技術かもしれません。

 

―― なるほど。言ってみれば、これまで手がけてきた「尖った技術」を、選択と集中で3つのコアに絞り込んだのですね。

寺田氏 既存の深層学習技術を活用した小型生体画像認識は、90%以上の高い精度で判別できる技術です。この技術の応用例では、食品メーカーの異物混入などがときどき話題になりますが、何か虫の足などが混入していたとき、今は専門家が、どんな虫のどの部位、それが混入したのが加熱前か後かなどを分析しています。熟練の専門家だとだいたい97%くらいまで正確に分析できるらしいのですが、今、この専門家が少ないこと、やりたいという人が不足していることが課題になっているんです。そこで、AIによる生体画像認識の技術で自動化しようというのが、当社の取り組みです。

この技術を使えば、リアルタイムで衛生状態をモニタリングし、カビやバクテリアが繁殖しているかどうかの判別ができます。もちろん、ネットワークを経由することで、遠く離れた工場の状態などの分析も可能ですので遠隔地や閉鎖環境でも利用できます。それらの特長から、食品衛生管理、蚊などの昆虫を媒介する感染症予防だけでなく、虫食いやカビを避けたい文化財の保護や倉庫環境の管理、人間の健康管理、生物の希少種の保護などに幅広く応用できます。

 

「アイシュンシュタインより賢いAIを実現したい」と語る 株式会社ロボケン 代表取締役 寺田 宗紘 氏

株式会社ロボケン 代表取締役 寺田宗紘氏

 

■顔の表情から精度よく感情を認識する「ニューロAI」

―― 実は応用範囲は広いのですね。3つのコアのうちの、もう1つ、「ニューロAI」というのは、どんな技術ですか?

寺田氏 これは、AIが、人と面と向き合った時、その人の顔の表情の微妙な変化などの生体情報を解析して、人の感情や心の状態を推定する技術です。この技術は、人材採用の分野で「HRテック」という領域での実用化が期待されています。面接の際に、面接を受けに来た人のバイタルサインや表情をセンサーで読み取り、それらを情報として収集してAIで分析します。これによって、面接を受ける人の感情や精神状態を把握できるようになります。例えば、面接を受ける人たち全員に、同じある質問をして、それによる感情の変化、精神状態の変化を確認して、採用するかどうかを決めるといった使い方ができるでしょう。また、例えば、近い将来、ライブ面接等の対面面接時で、応募者の感情を読み取って、本当にそこで仕事をしたいのか、その本心を聞き出せるようになるかもしれません。

 

■尖ったAI技術を医療事務の効率化にも応用する

―― ここまで2つのコアは、いずれも、確かに「尖って」いますね。それだけでなく、どちらも応用範囲がかなり広い。3つめの医療データマイニングはどのようなものですか。

寺田氏 これについては、今、医療系の会社と連携して、医療データの提供を受け、そこを分析しています。エンドユーザである病院側が求める分析精度、結果は得られています。製品化も完了し、これから医療系の会社を通じて、全国の医療機関に展開していこうと考えています。正しくは、「医療事務のデータマイニング」というカテゴリですが、製品化前ですので、詳細はお伝えできないのです。

この医療事務のデータマイニングのその先に当社が見据えているのは、高齢者向けにふらつきや転倒防止の機能などを備えた、見守りプラットフォームや遠隔医療プラットフォームの開発です。これは、高齢者のバイタルデータをセンサーで取得して蓄積し、AIで分析します。そうして得られた結果をもとに、ふらつきが起こりそうなときを予測したり、最適な投薬のタイミングを計測したりできるようにするものです。病院内でも、在宅で療養するシーンでも応用が期待できます。

 

■人間の脳を真似しないとAIの成長はない!
ロボケンが目指すAI開発の道筋とは

―― AIをベースに、実にさまざまなアイデア、発想の事業化に取り組んで来られたのですね。

寺田氏 私は、「人間の脳を真似しない限り、AIの成長はない」と考えています。だから、人間の脳を模倣したAIのR&Dを進め、事業化をしていくというのが、私の根底にはあります。そんな気持ちもあってロボケンも、ずっと脳科学に強い人を採用してきました。

ただ、人間の脳は、まだまだ解明されていないですよね。なので、AIで人間の脳を解明していく取り組みも今後はあるのかなと思っています。本来なら、大学や研究機関でやるようなことかもしれません。そこを企業で事業として取り組むとなると、なかなか難しい部分はあります。それでも、AIについてやるからには、そういった夢を抱いて取り組んでいきたいと、強く思っています。

 

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