専門記者・木村裕明、榊原謙
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 政府が財政健全化の指標として黒字化をめざしている国と地方の基礎的財政収支プライマリーバランス=PB)について、経済同友会は11日、現状並みの経済成長では2050年度でも赤字のままだとする試算を発表した。政府は25年度の黒字化を目標にしており、同友会は「現実的な目標が必要」と訴えている。

 PBが黒字になると、社会保障などの政策経費を新たな借金に頼らずにまかなえるようになる。しかし、内閣府の試算では、高い経済成長が実現できても黒字化できるのは29年度。現状並みの成長なら30年度でも赤字のままで、赤字額は国内総生産(GDP)の1・6%に上るとしている。

 そこで、同友会は今回、31~50年度の状況について、内閣府の推計の仕方をなるべく再現して独自に試算した。その結果、成長が現状並みなら、50年度のPBは赤字のままで、赤字額はGDPの1・8%に拡大した。

 同友会で今回の試算をまとめた神津多可思氏(リコー経済社会研究所長)は11日の記者会見で、政府が現実的な財政再建目標を設ける必要性を訴え、「コロナ対策に伴う債務に現役世代で対応する議論を始めないといけない」と指摘した。

 同友会では、東日本大震災の際、復興のためのお金を通常の予算と別枠で管理した復興特別会計や、その財源のために導入した復興特別税を参考に、コロナ後の財政を立て直す具体的な方法の検討を始めるべきだとしている。

 一方、今年度は、25年度のPB黒字化に向け、これまでの取り組みを検証する年にあたる。政府は今後、目標の達成に向けた手立てを検討し、6月をめどにまとめる政府の「骨太の方針」に反映する考えだ。

 今のところ、麻生太郎財務相は「25年度のPB黒字化目標の達成に向け、歳出改革の取り組みを継続する」と話し、目標自体の見直しには慎重な姿勢を示す。ただ、02年度に初めてPBの黒字化目標を掲げて以来、政府は一度も達成できないまま、目標の先送りを続けてきた経緯があり、今回の目標達成についても懐疑的な見方が大勢だ。(専門記者・木村裕明、榊原謙)