2024年1月31日水曜日

回路形成済みウエハーの裏面研削とダイシング 福田昭のデバイス通信(443) 2022年度版実装技術ロードマップ(67)

 https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2401/29/news054.html

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今回は第3章第4節第3項(3.4.3)「ウエハ(チップ)薄型化技術とウエハハンドリング」の概要を説明する。第3項は、裏面研磨技術、ウエハーダイシング技術、DBG(Dicing Before Grinding)プロセスの3つで構成される。

2024年01月29日 11時30分 公開
[福田昭EE Times Japan]

後工程は回路形成済みウエハの加工から始まる

 電子情報技術産業協会(JEITA)が3年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)を2022年7月に発行した。本コラムではロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、ロードマップの概要を本コラムの第377回からシリーズで紹介している。

 前回から、第3章第4節(3.4)「パッケージ組立プロセス技術動向」の内容説明に入った。第3章第4節は、第1項から第9項までの9個の項目で構成される。内容は、パッケージを組み立てるための要素技術の説明である。

 前回は第3章第4節第2項(3.4.2)「ハイブリッドボンディング」の概要をご報告した。今回は第3章第4節第3項(3.4.3)「ウエハ(チップ)薄型化技術とウエハハンドリング」の概要をご説明する。「3.4.3 ウエハ(チップ)薄型化技術とウエハハンドリング」は、パッケージ組み立て工程(後工程)の始めの部分に相当する。電子回路を形成済みのウエハーを所望の厚みに研削し、個々のダイに切り離す。

第3章第4節(3.4)「パッケージ組立プロセス技術動向」の主な目次第3章第4節(3.4)「パッケージ組立プロセス技術動向」の主な目次。「2022年度版 実装技術ロードマップ」(書籍)から筆者がまとめたもの[クリックで拡大]

 「3.4.3 ウエハ(チップ)薄型化技術とウエハハンドリング」は以下の3つの項目で構成される。(1)裏面研削技術、(2)ウエハダイシング技術、(3)DBG(Dicing Before Grinding)プロセス、である。

ウエハの薄型化:砥石によってウエハを裏面から研削

 裏面研削(バックグラインド)技術の主流は、砥石(ダイヤモンドの粒を埋め込んだ円板)を回転させながらウエハーを裏面から少しずつ削っていく機械的な研削手法である。この手法によって直径300mmのウエハーをわずか15μm前後にまで薄くできる。ただし、薄くするとウエハーが著しく反りやすくなる、ウエハーが破損しやすくなるといったデメリットが生じる。そこで極端に薄いウエハーは、支持体(キャリア)にウエハーを貼り付けてから、研削後の工程を実施する「ウエハーサポートシステム(WSS:Wafer Support System)」を使うのが一般的な反り・破損対策となっている。

 なお、裏面照射型CMOSイメージセンサーはウエハーをわずか5μm程度にまで薄くする。この裏面研削技術は不明な点が残るが、機械的な研削手法は使われていないとみられる。

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ダイシング:極細ライン対応のレーザー、一括対応のプラズマ

 ウエハーからシリコンダイを個別に切り離すダイシングには、ダイヤモンドブレードによる機械的な切断が主に使われてきた。ダイシングラインの幅は最小で35μm(TEGパターンのないライン)となっている。

 さらに細いダイシングラインは、レーザー改質法によってダイシングする。レーザーによってウエハー内部に改質層を形成し、あらかじめウエハ裏面に敷いてある仮接着フィルムを伸ばすことでダイを切り離す。ダイシングラインの幅は最小10μm(TEGパターンのないライン)とかなり狭い。

 最近になって実用化が始まったダイシング技術に、プラズマダイシングがある。プラズマエッチングによってウエハー全体を一括してダイシングする。プラズマダイシングは、チッピング(欠け)が発生しないという重要な特長を備える。このため、寸法の短いシリコンダイやハイブリッド接合用ダイに適している。一方で機械切断(ダイヤモンドブレード)やレーザー改質法に比べると加工時間が長いことから、シリコン面積の大きなダイではコストでプラズマダイシングが不利になる。

ダイシングライン幅(最小値)のロードマップ(2021年~2031年)ダイシングライン幅(最小値)のロードマップ(2021年~2031年)[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)

DBG:ウエハーの反りを低減

 裏面研磨によって薄くしたウエハーは通常、反る。ダイシング用の治具には、反りを元に戻した状態でウエハーをマウントしなければならない。これはウエハーに強い応力を発生させる。

 対策として、先にダイシングを実施してから裏面研削を実施する「DBG(Dicing Before Grinding)プロセス」が開発され、実際に導入されている。DBGではダイシング工程でウエハーを完全に切断するのではなく、表面側(回路側)からダイシングラインに沿ってカットするものの、裏面側には届かないようにする(「ハーフカット」と呼ぶ)。

 ダイシング(ハーフカット)後にウエハーの裏面を削ると、ウエハーの裏面がダイシングで形成した溝に届いた段階で、各シリコンダイが自然に分離する。シリコンダイの反りはあるものの、ウエハーに比べると大幅に小さい。

 最近ではダイシングにダイヤモンドブレードではなく、レーザー改質法を採用したSDBG(Stealth Dicing Before Grinding)プロセスが開発されている。ダイシングラインの幅をレーザー改質法と同等にまで狭くできる。

(次回に続く)

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