https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2401/30/news001.html
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フラッシュメモリを知り尽くしたキオクシアが開発
自動運転技術の進化に伴い、自動車で活用されるデータは増加の一途をたどっている。そのため、膨大な量のデータを高速に読み書きできる高性能ストレージが求められている。このニーズにいち早く応え、最新規格「UFS 4.0」に準拠した車載用ストレージを開発したのがキオクシアだ。
自動車の進化で、ストレージ要件にも変化が
完全な自動運転車の実現に向けて、自動運転技術は急速に進化している。自動運転「レベル3」(米SAEの定義で、条件付き運転自動化)の自動車は既に実用化され、2021年以降、大手自動車メーカーがレベル3の車種を市場に投入している。
それに伴い、自動車のE/E(電気/電子)アーキテクチャーも次世代への移行が進んでいる。ADAS(Advanced Driver Assistance System, 先進運転支援システム)やインフォテインメントなど、新しい機能の搭載によって増え続けるECU(Electronic Control Unit, 電子制御ユニット)や車載ネットワークなどを集約するためだ。
運転の自動化や支援機能をほとんど搭載していない従来の自動車では、単機能のECUを必要な箇所に配置した分散型が主流だった。レベル3のようにADASの搭載などが進んだ自動車では、機能を集約して機能ごとにECUを配置する「ドメイン型」が多く採用されている。さらに自動運転のレベルが進むと主要なドメイン型ECUを統合し、負荷の高い処理や制御を行うサーバーのようなECUを中央に配置する「中央集約型」になると予想されている。
このようにE/Eアーキテクチャーが進化する上で重要になるのがデータストレージだ。ドメイン型、中央集約型へと進むにつれて、ECU同士を接続するネットワークを高速化する必要がある。それだけでなく、ADASや自動運転ではカメラやLiDAR(Light Detection And Ranging)からのセンサーデータ、高精度なマップデータ、他の車や歩行者の情報(V2X)、AI(人工知能)を活用するための機械学習モデルなど、膨大な量のデータが使われる。これは、ECUに搭載されているストレージに書き込んだり、ストレージから読み出したりするデータ量が格段に増えるということだ。このため、大容量のデータを高速に転送できる車載用ストレージが求められている。
こうしたトレンドをいち早く捉え、最新のストレージ規格に準拠した車載向け高性能ストレージを開発したのがキオクシアだ。
フラッシュメモリを発明したキオクシア
「“記憶”で世界をおもしろくする」をミッションとするキオクシアは、NAND型フラッシュメモリを発明したメーカーだ。フラッシュメモリは、電源を切っても記録されたデータが消えない、いわゆる不揮発メモリの“代表格”だ。フラッシュメモリを搭載したメモリカードなどのストレージは軽量で衝撃に強く、消費電力も低い。小型化しやすいのでPCやスマートフォン、家電などの民生機器から自動車、データセンターまで、あらゆる電子機器やシステムに使われている。最も身近かつ社会のインフラを支えている技術の一つと言える。
キオクシアは、NAND型フラッシュメモリの発明者として35年以上にわたってフラッシュメモリとSSDの業界をけん引し続けている。2007年には3次元フラッシュメモリ技術を発表し、メモリセルの微細化で行き詰まっていた業界に3次元化という新しい進化の方向性を示した。
車載ストレージでも、「e-MMC」や「UFS」の規格を採用した製品のラインアップを積極的に拡充してきた。2013年には車載用e-MMCの出荷を、2017年には車載用UFSの出荷を開始。これらのキオクシア製車載ストレージは、車載インフォテインメントシステムやADAS、テレマティクス、デジタルクラスターといった幅広い車載アプリケーションで多くの採用実績を持つ。
そのキオクシアが、最新の車載用ストレージとして発表したのが「UFS 4.0」準拠の製品だ。
シリアル通信で高速化を実現した「UFS」
UFS(Universal Flash Storage)は、組み込みストレージ規格「e-MMC(embedded Multi Media Card)」の後継となる規格だ。e-MMCとUFSはともにJEDECの標準仕様で、フラッシュメモリとコントローラーを1パッケージに搭載するのが特徴。
2007年に規格化されたe-MMCは、現在でも多くの民生機器や産業機器、自動車に用いられている。ただ、パラレルインターフェースを用いるe-MMCは転送速度の高速化で限界を迎えており、400MB/sで頭打ちになっている。それ故、e-MMCでは動作速度が要求されるハイエンドスマートフォンなどには不十分なケースも増えてきた。
そこで2011年に策定されたのがUFSだ。UFSはシリアルインターフェースを採用。全二重通信対応で、ホスト機器との間のデータリード/ライトを同時に実行できる。これによってe-MMCを大幅に上回る高速伝送が可能で、2020年にリリースされたUFS 3.1は最大2320MB/s、最新のUFS 4.0は最大4640MB/sの転送速度を実現している。
モバイル機器から採用が始まったUFSの用途は車載にも広がっている。レベル3の自動車ではUFS 3.1準拠のストレージが主流になっていて、高速のデータ転送速度が求められる将来の自動車に向けてUFS 4.0の採用を視野に入れている自動車メーカーも多い。
UFS 4.0準拠の車載用ストレージをいち早くリリース
キオクシアは、UFS製品の開発に早くから取り組んできた。UFSのシリアルインターフェースでは、物理層にMIPI Allianceの規格「M-PHY」を、M-PHY用インターフェースとして「UniPro」プロトコルを用いている。キオクシアはM-PHY/UniProの仕様策定にも参画し、標準化に携わってきた。モバイル分野向けでは、2013年にUFS 1.1に準拠したストレージを発表。2022年6月にはUFS 4.0のサンプル出荷も開始した。車載用には、2022年3月にUFS 3.1に準拠した製品のサンプル出荷を開始している。
そして今回、車載用のUFS 4.0対応ストレージ(以下、車載用UFS 4.0)のサンプル出荷を開始した。キオクシアのメモリ事業部 メモリ応用技術統括部 メモリ応用技術第一部で部長を務める山本哲也氏は、「業界でもかなり早い段階で発表できた」と強調する。
「UFS 4.0向けM-PHY/UniProの仕様策定にも積極的に関与し、車載用UFS 4.0の早期投入を目指して開発を進めてきた。当社はM-PHYとUniProの領域で高い技術力があり、それらをフルに活用したこともスピーディーな開発につながった」(山本氏)
キオクシアの車載用UFS 4.0は、AEC-Q100のグレード2に準拠する-40~105℃の動作温度範囲に対応し、最大4000MB/sの読み出し速度、最大2000MB/sの書き込み速度(注1)を実現。読み出し性能は、キオクシアの前世代品(注2)である車載用UFS 3.1の約2倍だ。
こうした性能を実現できた理由について、山本氏は、「当社のフラッシュメモリそのものの性能とフラッシュメモリのコントローラー技術が鍵になっている」と話す。
キオクシアのメモリ事業部 メモリ応用技術第一部 メモリ応用技術第二担当で参事を務める森若林氏は、「コア技術となるフラッシュメモリには第5世代BiCS FLASH(注3)を用いている。当初から車載用UFSへの展開を視野に、高温条件でも動作するように設計したものだ。2023年に車載向けの量産も開始しており、製造面でも安定した技術になっている」と語る。
コントローラーを自社開発していることもキオクシアの強みだ。フラッシュメモリの素子がどれほど優れていても、その性能を引き出し、UFSなどの規格が定める最大値に近い性能を発揮できるストレージに仕上げるにはコントローラーの存在が欠かせない。
サードパーティーのコントローラーを用いるフラッシュメモリメーカーも存在する。だが山本氏は「キオクシアは当初からコントローラーの自社開発にこだわってきた」と述べる。「フラッシュメモリをきめ細かく制御して管理するコントローラーは、ストレージの性能を左右する最も重要な部分の一つ。フラッシュメモリに関する豊富な知見がなければ高性能なストレージを実現するコントローラーを開発するのは難しい」
森氏は「コントローラーにはPHYのようなアナログ的な要素だけでなく、機能の追加や低消費電力を実現するためにデジタル回路の技術も不可欠だ。今回開発した車載用UFS 4.0でも規格に合わせてコントローラーを最適化した。特に、最大2000MB/sの書き込み性能にはコントローラーの技術が効いている。優れたシーケンスで、効率的な書き込みを実行できている」と語る。
キオクシアの車載用UFS 4.0は、システムを高速に起動できる「HS-LSS(High Speed Link Startup Sequence)」機能に対応する他、デバイスの動作履歴を確認できる診断機能、劣化したデータをリフレッシュして信頼性を維持するリフレッシュ機能など、車載機器に必要な信頼性と堅牢(けんろう)性も備える。容量は128GB、256GB、512GB(注4)の3種類を用意した。
アプリケーションの進化を支えるフラッシュメモリ
山本氏は「最新規格に基づいたメモリやストレージを誰よりも早く開発するのが、フラッシュメモリメーカーとしてのわれわれの使命だ」と強調する。「車載用UFS 4.0で言えば、まずわれわれが開発しなければ、UFS 4.0に対応したホストSoC(System on Chip)を開発するメーカーはそのSoCを評価さえできないことになる。最新の機器やシステムをメーカーが開発する上で、メモリがボトルネックになるわけにはいかない。そうした意識を常に持っている」
森氏も、「UFS 4.0を早期搭載することで自動車業界に貢献すべく、エコシステムのパートナーと一緒に車載用UFS 4.0の量産準備を加速していく」と意気込む。
「レベル5」の完全な自動運転車の実現に向け、車載電装システムの進化は続く。スマートフォンのようにソフトウェアのアップデートで機能が継続的に更新され、「昨日よりもスムーズにカーブを曲がれるようになった」などを実感できる自動車も登場するだろう。大量のデータを高速に読み書きできるキオクシアの車載用UFS 4.0は、そうした進化を支える技術になるはずだ。「フラッシュメモリを知り尽くした当社の車載用UFS 4.0を、ぜひ使ってみてほしい」(山本氏)
注1 1MB/sを1,000,000バイト/秒として計算しています。キオクシアの試験環境で特定の条件により得られた最良の値であり、ご使用機器での速度を保証するものではありません。読み出しおよび書き込み速度は、ホストシステム、読み書き条件、ファイルサイズなどによって変化します。
注2 キオクシア前世代の製品「THGJFGT2T85BAB5」との比較。
注3 「BiCS FLASH」はキオクシア株式会社の登録商標です。
注4 製品の表示は搭載されているフラッシュメモリに基づいており、実際に使用できるメモリ容量ではありません。メモリ容量の一部を管理領域等として使用しているため、使用可能なメモリ容量(ユーザー領域)はそれぞれの製品仕様を確認ください。(メモリ容量は1GBを1,073,741,824バイトとして計算しています。)
提供:キオクシア株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EE Times Japan 編集部/掲載内容有効期限:2024年2月29日
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