https://www.phileweb.com/review/article/202208/15/4788.html
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国内屈指の強力なラインナップを誇るデノンから、新たにプリメインアンプ「PMA-900HNE」と上位モデル「PMA-1700NE」、そしてCDプレーヤー「DCD-900NE」が登場した。
PMA-900HNEはネットワーク再生機能の搭載に対して、PMA-1700NEはUSB DACを搭載。一方で、DCD-900NEは上位モデルと同じレイアウトを採用するなど、それぞれのモデルが大きな飛躍を遂げている。今回は、5名の評論家が3モデルの魅力を徹底的に解説する。
■逼塞と停滞の時代との訣別を高らかに告げるハイファイ新3機種(文:大橋伸太郎)
デノンからプリメインアンプ「PMA-900HNE」「PMA-1700NE」、そしてCDプレーヤー「DCD-900NE」が発売される。投入できる物資とコストの制約の大きいベーシック機の出来栄えは、メーカーの充実の度合い、ひいては現在のオーディオホビー全体の健全さを知る尺度となりうる。今年上半期の最も注目すべき3機種といえよう。
昨期までの「PMA-800NE」に置き代わるのがPMA-900HNE。NEがHNEになったことに注目したい。HEOSの搭載を意味し、前面パネルに入力ソース情報の表示窓が新設された。HEOSはD&Mが独自開発したワイヤレス再生のアプリで登場5年目。ワイヤレススピーカーやAV機器への搭載が完了し、残すところピュアオーディオ機器のみとなったわけだ。HEOSが対応するストリーミングサービスは多岐にわたるが、Amazon Music HDに対応し定額サービスでハイレゾ音源が楽しめるのは大きなメリットである。
光、同軸、USB-A等々のデジタル入力を備えるが、増幅部は手堅いアナログ構成。800NEの増幅段は固定利得だったが900はFLATアンプとパワーアンプ素子の二段構成とした。「PMA-A110」で採用された方式だ。初段の抵抗で発生する熱雑音はアンプの音質上の大敵である。通常のリスニング領域でゲインを最大-16.5dBまでダウンさせるFLATアンプを前段に追加することでゲインと増幅率が下がり、ノイズ量を減らせる。
増幅回路もA110同様の差動2段回路を採用した。デノンのハイファイアンプは機械式ボリュームを採用することが多かったが、増幅段の変更に合わせ本機ではロータリーエンコーダー方式の電子ボリュームを採用した。高減衰領域でのギャングエラー(左右のばらつき)をなくすことと、長寿命化が目的だ。
CDプレーヤーDCD-900NEは、大型化したPMA-900HNEと共通の筐体サイズを採用。800に比べ容積に余裕が生まれ、上位機種「DCD-1600NE」同様のデジタル/アナログ部分離レイアウトになった。
フラグシップCDプレーヤー「DCD-900NE」77,000円(税込)
回路面ではオペアンプの高性能化に注目したい。差動合成のローパスフィルターを高性能化し、PMA800比で1.35倍のスルーレート値を達成。信号回路は左右に加え上下の対称性を見直し、オーディオ電源を他の電源と基板を分け、さらにディスクリート化した。
DCD-900NEの内部。従来モデルから筐体を大型化したことで、デジタルとアナログの完全分離を果たしている
PMA-900HNEはネットワーク再生機能の搭載に対して、PMA-1700NEはUSB DACを搭載。一方で、DCD-900NEは上位モデルと同じレイアウトを採用するなど、それぞれのモデルが大きな飛躍を遂げている。今回は、5名の評論家が3モデルの魅力を徹底的に解説する。
■逼塞と停滞の時代との訣別を高らかに告げるハイファイ新3機種(文:大橋伸太郎)
デノンからプリメインアンプ「PMA-900HNE」「PMA-1700NE」、そしてCDプレーヤー「DCD-900NE」が発売される。投入できる物資とコストの制約の大きいベーシック機の出来栄えは、メーカーの充実の度合い、ひいては現在のオーディオホビー全体の健全さを知る尺度となりうる。今年上半期の最も注目すべき3機種といえよう。
昨期までの「PMA-800NE」に置き代わるのがPMA-900HNE。NEがHNEになったことに注目したい。HEOSの搭載を意味し、前面パネルに入力ソース情報の表示窓が新設された。HEOSはD&Mが独自開発したワイヤレス再生のアプリで登場5年目。ワイヤレススピーカーやAV機器への搭載が完了し、残すところピュアオーディオ機器のみとなったわけだ。HEOSが対応するストリーミングサービスは多岐にわたるが、Amazon Music HDに対応し定額サービスでハイレゾ音源が楽しめるのは大きなメリットである。
デノン初のネットワーク再生対応 フルサイズプリメインアンプ
「PMA-900HNE」132,000円(税込)
「PMA-900HNE」132,000円(税込)
増幅回路もA110同様の差動2段回路を採用した。デノンのハイファイアンプは機械式ボリュームを採用することが多かったが、増幅段の変更に合わせ本機ではロータリーエンコーダー方式の電子ボリュームを採用した。高減衰領域でのギャングエラー(左右のばらつき)をなくすことと、長寿命化が目的だ。
PMA-900HNEの内部。基板は新設計で、アナログ回路の基板は両面基板を採用する。D/AコンバーターはDCD-900NE同様、新開発
フラグシップCDプレーヤー「DCD-900NE」77,000円(税込)
回路面ではオペアンプの高性能化に注目したい。差動合成のローパスフィルターを高性能化し、PMA800比で1.35倍のスルーレート値を達成。信号回路は左右に加え上下の対称性を見直し、オーディオ電源を他の電源と基板を分け、さらにディスクリート化した。
DCD-900NEの内部。従来モデルから筐体を大型化したことで、デジタルとアナログの完全分離を果たしている
もう一台のプリメインアンプがPMA-1700NE。長くベストセラーだった「PMA-1600NE」に置き換わる重点製品である。HEOSを搭載しないかわりにUSB DAC部を重視。電源、回路、グラウンドを専用とし、パソコンからのノイズ混入を遮断した。
USB DAC搭載プリメインアンプ「PMA-1700NE」218,900円(税込)
USB DAC搭載プリメインアンプ「PMA-1700NE」218,900円(税込)
本機も手堅いアナログ構成。FLATアンプとパワーアンプ素子の二段構成で900同様に増幅回路に差動2段を採用するが、本機はUHC-MOSシングルプッシュプル。電子ボリュームもPMA-A110で採用済の、ノブの角度を感知してA/D値を設定して送り込みゲインをコントロールする方式にグレードアップ。信号経路の最短化に貢献する。
DAC部は超低位相雑音のクロックを近傍に設置、4層基板で構成し対称性を重視した。アナログ部品にはDCD-SX1 Limitedで採用の各種コンデンサーを投入、カスタムブロックコンデンサーは新規開発するなど、アンプの地力にコストが注入されていることがわかる。静寂の表現に優れるのはピュア再生の最重要要件だ。試聴は本誌試聴室で行った。スピーカーシステムにはダリの「OPTIKON2 Mk2」を使用した。
DAC部は超低位相雑音のクロックを近傍に設置、4層基板で構成し対称性を重視した。アナログ部品にはDCD-SX1 Limitedで採用の各種コンデンサーを投入、カスタムブロックコンデンサーは新規開発するなど、アンプの地力にコストが注入されていることがわかる。静寂の表現に優れるのはピュア再生の最重要要件だ。試聴は本誌試聴室で行った。スピーカーシステムにはダリの「OPTIKON2 Mk2」を使用した。
PMA-900HNEは、ストリーミング音楽サービス全盛時代に据え置き型オーディオ復権、という重要なミッションを担っている。Amazon Music HDのアデル『30』は、LR間の音影の密度が濃く、奥行きが生まれ立体的。歌声や演奏に量感がある。明るく晴れ晴れとした外向的な音質だ。HEOSも5年目となり、CPUとDSP、各種制御をワンチップに収めたSoCプロセッサーを搭載する。音場に歌声が浮遊するような豊かな表現力は情報量の豊かさ、SoCの精度の高さを実感させる。
DCD-900NEでCDを再生してみよう。三浦一馬のピアソラ演奏は、左右の音場の広がりの奥までぎっしりと音像がひしめく。多種多彩な楽器が固有の音色を主張し、艶っぽい音色の響宴。バンドネオン特有の束の間の虹のように現れて消え次の音を紡ぐ音の個性も描き出す。バイオリンの艶、厚みも味が深く濃い。

次はPMA-1700NE。PMA-900HNEよりも筐体サイズが一回り大きく、質量はちょうど2倍の大きな差がある。出音すると両機は性格と課せられたミッションが異なることに気づく。
本機の特徴はUSB DACの音質向上に注力したことだ。同じアデル『30』をRoonのハイレゾ音源で聴こう。多重録音のレイヤーの整合が実に美しく、前後の奥行き表現に優れるダリから、水平方向の広がりを引き出しナチュラルサラウンドにする。音場の彫りの深さは下位機で聴けなかった。パーカッションの打撃の鈍らない切れ味、重量感に溜飲。

DCD-900NEでCDを聴いてみよう。諏訪内晶子『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ』は優秀録音だが音像の拡散しやすい難関ソフト。PMA-1700NEで聴くシャコンヌの音像のにじまない収束ぶりは見事で、奏者がすっくと立つ実在感がある。一丁のバイオリンが紡ぎ出す主旋律と内声部が寄り添い、絡み合う対位法の進行を生き生きと描く。色付き、ノイズの妨害がなく演奏上の音色の工夫、テクニックをニュアンス豊かに伝える。
PMA-1700NEで聴くレコードがまた素敵だ。カラブリア・フォーティ『プレリュード・トゥ・ア・キス』は演奏と歌の距離感、奥行きが深くて美しい優秀録音だが、彩り豊かな弦の広がりが加わり、大きな掌に包み込まれる心地よさがある。解像感も秀逸で、きめ細やかな肉声の質感を生々しく描写する。
明るく快活、万人に大きく開かれた扉のPMA-900HNEに対し、PMA-1700NEは落ち着きと陰影を備えた力強さが強い印象を残す。静寂の表現に優れるのはピュアオーディオの最重要要件。音楽再生の深い森への導き手といえよう。
時代の要請を受け止め広く音楽ファンを包み込むPMA-900HNE。フラグシップの技術要素を移入し、中堅機種ながらラインナップを牽引するPMA-1700NE。クラスを越えた設計と物量の投入でCD再生の音質引き上げに成功したDCD-900NE。いずれ劣らぬ攻めの姿勢だ。デノンのハイファイ新3機種は、逼塞と停滞の時代との訣別を高らかに告げている。
【両プリメインアンプのレコード再生に注目!】(文:岩井 喬)
入門からミドルクラスを担う「800」「1600」シリーズが「900」「1700」シリーズへと刷新されたが、特にプリメインアンプにおけるそのグレードアップのポイントは110周年モデル、PMA-A110にもたらされた技術への置き換えにある。フラットアンプとパワー段の2段構成の新型増幅回路や電子ボリュームを用いたミニマムシグナルパスの進化など、よりS/Nの良い、高純度なサウンドをリーズナブルな価格帯で実現。いずれもハイC/Pな製品となっている。
PMA-1700NEはUSB DAC、PMA-900HNEはHEOSモジュールを有するが、ともにMM/MC対応フォノアンプを搭載し、アナログ対応にも妥協がない。PMA-1700NEのフォノ部は部品レイアウト再考によるS/Nの改善、PMA-900HNEではオペアンプを高音質仕様のものにしている。このレコード再生能力を確認すべく、テクニクスSL-1500CにデノンDL-103を取り付けて試聴を実施。

写真はPMA-1700NEのフォノイコライザー。パーツレイアウトを再考することでS/Nの改善を図っているPMA-900HNEではデジタル系やライン入力と似たスッキリとした解放感あるクリアなサウンド傾向で、オーケストラのローエンドはぐっと深く沈み込ませつつ、管弦楽器の爽やかな旋律を明瞭に引き立たせている。ジャズのウッドベースは弾力良く伸びやかで、ピアノはブライトに煌く。空間表現力も十分に高い。ヴォーカルは肉付きをほんのりと持たせた、しっとりとしたスムーズかつナチュラルな描写である。
一方PMA-1700NEは、よりアナログらしさを押し出した中低域の密度感が増したリッチなサウンドだ。オーケストラは重心が低くローエンドもどっしりと太さがあり、管弦楽器の旋律も艶やかで音離れも良い。空間性もより良く広大で、奥行き方向の距離感や楽器の重なりも鮮明に見えてくる。ヴォーカルの肉付きが増したことでより安定感と存在感も向上。コーラスワークの重層感も良く、一際自然だ。楽器そのものの芯の太さ、適度な切れ味で描く輪郭の鮮やかな際立ちが絶妙なコントラストを生んでいる。
【PMA-1700NEのUSB DAC再生に注目!】(文:生形三郎)
昨今のデノンコンポーネントは、山内慎一氏がサウンドマスターとして音作りを統括して以降、「Vivid & Spacious」たるサウンドフィロソフィが掲げられている。本機が繰り出すサウンドは、まさにその言葉を体現するものである。
900シリーズのサウンドの魅力は、剛性感のあるカチリとした音楽表現にあると感じる。どのようなソースを再生しても、音に芯があり筋の通った着実な音像描写を楽しませてくれる。ソロ楽器はもちろんのこと、オーケストラなどの音数が多いソースも、立体的で鮮度感の高い表現が飛び出してくるのだ。次に試聴したPMA-1700NEと比較すると、ここで感じる芯の強さは、まさに900シリーズならではの醍醐味だと筆者は感じた。
対してPMA-1700NEは、情報量が増えさらなる楽器の立体感や音場の奥行き感も表出される。そして、その手触りは900シリーズよりも幾分滑らかでソフトな質感があり、まさに上位機たる品格を伴っている。PMA-1700NEにPCをUSB接続してハイレゾファイル再生をしてみると、透明度の高い立体的な音質を楽しむことができる。スピーカーを着実に駆動するとともに、帯域バランスも過不足無く揃っており、安定したサウンドを聴かせる。
ヴォーカルは歌声に付帯感がなく鮮明で、低音楽器は低域の量感が充実しておりつつも滲みがない。全体的に、すべての楽器の姿をイーブンに見渡せる視座があり、よくよくコントロールされたサウンドである。特にオーケストラソースではそれを如実に実感し、まるで壮大な音のタペストリーを眺めているかのような緻密な音楽再現を堪能できるのだ。

PMA-1700NEは、4層基盤のD/Aコンバーター回路を搭載。超低位相雑音のクロックをDACの側に設置したマスタークロックデザインを採用する
以上、PMA-900HNE/DCD-900NEおよびPMA-1700NEは、当然グレードとしてはPMA-1700NEの方が上手ながらも、サウンドの傾向としては互いに異なる魅力を備えており、グレードはもちろんのこと、音の好みによってもチョイスできる魅力的な新ラインナップなのである。
【PMA-900HNEのネットワーク再生に注目!】(文:鴻池賢三)
オーディオシステムの核といえるのがステレオプリメインアンプ。いつの時代も、トータルパフォーマンスを引き出す要として品格は譲れない。一方、オーディオはデジタル化という節目を経た後、近年は、ハイレゾやストリーミングサービスの台頭は周知の通り。こうした新しい時代のプリメインアンプに何を求めるべきか。老舗として確固たる地位を守り続けてきたデノンの答えが、ピュアを極める方向に深化した「PMA-1700NE」と、ネットワークオーディオを意識して進化した「PMA-900HNE」と言えるだろう。
新型アナログ増幅回路に止まない探求心を、電子ボリュームの採用に合理性を感じる。筆者は主に「PMA-900HNE」でAmazon Music HDをストリーミング試聴し、同機の狙いとクオリティをチェックした。まず、同機で注目すべきは、すっかりお馴染みのネットワークシステム「HEOS」を内蔵し、各種ストリーミングサービスへのアクセスが容易なこと。時代に沿った「アンプ」のアップデートと言って良いだろう。

HEOSに対応するPMA-900HNEは、最新のSoCプロセッサーを搭載
音を出すと、柔らかく繊細で、金管楽器の煌びやかさがエネルギッシュ。キツくならず、鮮やかなサウンドは近代的な高音質と言える。1曲目は、Susan Wongの「How Deep Is Your Love」。軽快な空気感が印象的な楽曲だが、本機ではビビッドな色彩で魅せつつシルキーな柔らかさを伴って好印象。空気を湛えるかのような包容力の深さにハイレゾの真価が見て取れ、PMA-A110と同等という、FLAT AMPとPOWER AMPの2段構成による新型増幅回路が特徴とする低歪み性能を感じることができた。
往年のCity Pop、村田和人の「Boy’s life」 は、澄み切ったヴォーカルが夏空を感じさせ、リズムのキレでテンポ良く進行。時を超えて感動の記憶が蘇り、ハイレゾのアドバンテージを再認識した。プリメインアンプとストリーミングの組み合わせは大いにアリで、アナログの温かみとデジタルの合理性を研ぎ澄ませた、デノン流の答えと受け止めた。
【DCD-900NEのCD再生に注目!】(文:林 正儀)
新たに900、1700の両シリーズを登場させたデノン。PMA-900HNEはHEOSのネットワーク対応で、単体でもさまざまな音楽環境が楽しめるHi-Fiエントリー機だ。上位のPMA-1700NEはアイソレーター回路を改善したUSB DACを内蔵する。パソコンなどにつなぎハイレゾ音源を楽しみたいPCオーディオリスナーにおすすめできる。
それぞれの役割分担が明確なのが好ましい。2段構成の新型増幅回路や電子ボリュームなど800、1600シリーズの後継に相応しい進化を遂げているが、特に1700番は記念モデルA110譲りのUHC-MOSプッシュプル回路にミニマムシグナルパスを採用したこだわりで、引き続きクラス最強のパフォーマンスを発揮する。一方でDCD-900NEは、CD専用機としてはデノン最上位のモデルとなる。新開発のシャーシによってこれまでの単一構造から、デジタル/アナログ完全分離構成へとブラッシュアップされた。D/Aコンバーターも新開発だ。
ここではDCD-900NEを用いたCD再生をメインにレビューしたい。2台のアンプの聴き比べのような試聴である。1700は重量感も抜群だ。その物量投入や定格出力の違い、アンプのグレード差がサウンドにそのまま現れた印象だ。言いかえると、CDプレーヤーが敏感にその違いを描き分けるともいえる。万能で多彩な表現力だ。藤田恵美のライブは、900が明るくポップな響きで、1700は落ち着きがある。声質もクリアで硬めなのに対して、柔らかく艶やかと好対照だ。

DCD-900NEは、プリメインアンプのPMA-900HNEとサイズが揃う。また、CD専用機としてデノントップモデルとなる
幸田浩子のオペラは、ニュアンスが細やかでステージの奥が深いクラシック向きの1700に対して、900は抑揚を抑えつつ音像が近くフレンドリーだ。ジャズは両者動きがよく、メリハリを出す。その中にもピアノが緻密でリズムが立つのが1700で、元気にとびだすのが900。それぞれのモデルの魅力を、DCD-900NEはしっかり引き出せていた。
Specification
【DCD-900NE】
●再生周波数特性:2Hz-50kHz -3dB(DSD)、2Hz-20kHz ±1dB(PCM 44.1kHz)、2Hz-96kHz ±1dB(PCM 192kHz)●SN比:110dB(DSD)、115dB(PCM)●ダイナミックレンジ:108dB(DSD 可聴帯域)、101dB(DSD 16bit)、110dB(PCM 24bit)●高調波歪率:0.0015%(DSD)、0.0020%(PCM 24bit)、0.0025%(PCM 16bit)●出力端子:アンバランス×1●入力端子:同軸デジタル×1、光デジタル×1●その他入出力:IRコントロール入出力×1●消費電力:24 W(待機時 0.3W)●サイズ:434W×107H×328Dmm●質量:4.9kg

リア部の出力端子には、RCA、光デジタル、同軸デジタルをそれぞれ1系統。その他IR CONTROLを用意。RCA端子も独立化されている
【PMA-900HNE】
●定格出力:50W+50W(8Ω、20Hz-20kHz、T.H.D 0.07%)、85W+85W(4Ω、1kHz、T.H.D 0.07%)●全高調波歪み率:0.01% (-3dB、8Ω、1kHz)●SN比:105dB(CD、AUX、RECORDER)、86dB(PHONO/MM)、71dB(PHONO/MC)●周波数特性:5Hz-100khz(0 - -3dB)●サイズ:434W×131H×375Dmm●質量:8.3kg

リア部には、入力端子にCD、NETWORK/AUX、RECORDER、PHONO、同軸デジタル、USB-DAC、EXR.PREをそれぞれ1系統、光デジタルを2系統、出力端子にはRECORDERを1系統、その他IR CONTROLを1系統装備する
【PMA-1700NE】
●定格出力:70W+70W(8Ω、20Hz-20kHz、T.H.D 0.07%)、140W+140W(4Ω、1kHz、T.H.D 0.07%)●全高調波歪み率:0.01%(-3dB、8Ω、1kHz)●SN比:106dB(CD、NETWORK/AUX、RECORDER、入力端子短絡時)、89dB(PHONO/MM)、74dB(PHONO/MC)●周波数特性:5Hz-100khz(0 - -3dB)●消費電力:295W(待機時最小0.2W)●サイズ:434W×135H×410Dmm●質量:17.6kg●取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス

リア部には、入力端子にCD、AUX、RECORDER、PHONO、同軸デジタル、USB-A、LANをそれぞれ1系統、光デジタルを3系統、出力端子にRECORDER、SUBWOOFERをそれぞれ1系統装備する
本記事は季刊Audio Accessory vol.185からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから
(協力:D&Mホールディングス)
DCD-900NEでCDを再生してみよう。三浦一馬のピアソラ演奏は、左右の音場の広がりの奥までぎっしりと音像がひしめく。多種多彩な楽器が固有の音色を主張し、艶っぽい音色の響宴。バンドネオン特有の束の間の虹のように現れて消え次の音を紡ぐ音の個性も描き出す。バイオリンの艶、厚みも味が深く濃い。

本機の特徴はUSB DACの音質向上に注力したことだ。同じアデル『30』をRoonのハイレゾ音源で聴こう。多重録音のレイヤーの整合が実に美しく、前後の奥行き表現に優れるダリから、水平方向の広がりを引き出しナチュラルサラウンドにする。音場の彫りの深さは下位機で聴けなかった。パーカッションの打撃の鈍らない切れ味、重量感に溜飲。

DCD-900NEでCDを聴いてみよう。諏訪内晶子『J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ』は優秀録音だが音像の拡散しやすい難関ソフト。PMA-1700NEで聴くシャコンヌの音像のにじまない収束ぶりは見事で、奏者がすっくと立つ実在感がある。一丁のバイオリンが紡ぎ出す主旋律と内声部が寄り添い、絡み合う対位法の進行を生き生きと描く。色付き、ノイズの妨害がなく演奏上の音色の工夫、テクニックをニュアンス豊かに伝える。
PMA-1700NEで聴くレコードがまた素敵だ。カラブリア・フォーティ『プレリュード・トゥ・ア・キス』は演奏と歌の距離感、奥行きが深くて美しい優秀録音だが、彩り豊かな弦の広がりが加わり、大きな掌に包み込まれる心地よさがある。解像感も秀逸で、きめ細やかな肉声の質感を生々しく描写する。
明るく快活、万人に大きく開かれた扉のPMA-900HNEに対し、PMA-1700NEは落ち着きと陰影を備えた力強さが強い印象を残す。静寂の表現に優れるのはピュアオーディオの最重要要件。音楽再生の深い森への導き手といえよう。
時代の要請を受け止め広く音楽ファンを包み込むPMA-900HNE。フラグシップの技術要素を移入し、中堅機種ながらラインナップを牽引するPMA-1700NE。クラスを越えた設計と物量の投入でCD再生の音質引き上げに成功したDCD-900NE。いずれ劣らぬ攻めの姿勢だ。デノンのハイファイ新3機種は、逼塞と停滞の時代との訣別を高らかに告げている。
【両プリメインアンプのレコード再生に注目!】(文:岩井 喬)
入門からミドルクラスを担う「800」「1600」シリーズが「900」「1700」シリーズへと刷新されたが、特にプリメインアンプにおけるそのグレードアップのポイントは110周年モデル、PMA-A110にもたらされた技術への置き換えにある。フラットアンプとパワー段の2段構成の新型増幅回路や電子ボリュームを用いたミニマムシグナルパスの進化など、よりS/Nの良い、高純度なサウンドをリーズナブルな価格帯で実現。いずれもハイC/Pな製品となっている。
PMA-1700NEはUSB DAC、PMA-900HNEはHEOSモジュールを有するが、ともにMM/MC対応フォノアンプを搭載し、アナログ対応にも妥協がない。PMA-1700NEのフォノ部は部品レイアウト再考によるS/Nの改善、PMA-900HNEではオペアンプを高音質仕様のものにしている。このレコード再生能力を確認すべく、テクニクスSL-1500CにデノンDL-103を取り付けて試聴を実施。

写真はPMA-1700NEのフォノイコライザー。パーツレイアウトを再考することでS/Nの改善を図っている
一方PMA-1700NEは、よりアナログらしさを押し出した中低域の密度感が増したリッチなサウンドだ。オーケストラは重心が低くローエンドもどっしりと太さがあり、管弦楽器の旋律も艶やかで音離れも良い。空間性もより良く広大で、奥行き方向の距離感や楽器の重なりも鮮明に見えてくる。ヴォーカルの肉付きが増したことでより安定感と存在感も向上。コーラスワークの重層感も良く、一際自然だ。楽器そのものの芯の太さ、適度な切れ味で描く輪郭の鮮やかな際立ちが絶妙なコントラストを生んでいる。
【PMA-1700NEのUSB DAC再生に注目!】(文:生形三郎)
昨今のデノンコンポーネントは、山内慎一氏がサウンドマスターとして音作りを統括して以降、「Vivid & Spacious」たるサウンドフィロソフィが掲げられている。本機が繰り出すサウンドは、まさにその言葉を体現するものである。
900シリーズのサウンドの魅力は、剛性感のあるカチリとした音楽表現にあると感じる。どのようなソースを再生しても、音に芯があり筋の通った着実な音像描写を楽しませてくれる。ソロ楽器はもちろんのこと、オーケストラなどの音数が多いソースも、立体的で鮮度感の高い表現が飛び出してくるのだ。次に試聴したPMA-1700NEと比較すると、ここで感じる芯の強さは、まさに900シリーズならではの醍醐味だと筆者は感じた。
対してPMA-1700NEは、情報量が増えさらなる楽器の立体感や音場の奥行き感も表出される。そして、その手触りは900シリーズよりも幾分滑らかでソフトな質感があり、まさに上位機たる品格を伴っている。PMA-1700NEにPCをUSB接続してハイレゾファイル再生をしてみると、透明度の高い立体的な音質を楽しむことができる。スピーカーを着実に駆動するとともに、帯域バランスも過不足無く揃っており、安定したサウンドを聴かせる。
ヴォーカルは歌声に付帯感がなく鮮明で、低音楽器は低域の量感が充実しておりつつも滲みがない。全体的に、すべての楽器の姿をイーブンに見渡せる視座があり、よくよくコントロールされたサウンドである。特にオーケストラソースではそれを如実に実感し、まるで壮大な音のタペストリーを眺めているかのような緻密な音楽再現を堪能できるのだ。

PMA-1700NEは、4層基盤のD/Aコンバーター回路を搭載。超低位相雑音のクロックをDACの側に設置したマスタークロックデザインを採用する
以上、PMA-900HNE/DCD-900NEおよびPMA-1700NEは、当然グレードとしてはPMA-1700NEの方が上手ながらも、サウンドの傾向としては互いに異なる魅力を備えており、グレードはもちろんのこと、音の好みによってもチョイスできる魅力的な新ラインナップなのである。
【PMA-900HNEのネットワーク再生に注目!】(文:鴻池賢三)
オーディオシステムの核といえるのがステレオプリメインアンプ。いつの時代も、トータルパフォーマンスを引き出す要として品格は譲れない。一方、オーディオはデジタル化という節目を経た後、近年は、ハイレゾやストリーミングサービスの台頭は周知の通り。こうした新しい時代のプリメインアンプに何を求めるべきか。老舗として確固たる地位を守り続けてきたデノンの答えが、ピュアを極める方向に深化した「PMA-1700NE」と、ネットワークオーディオを意識して進化した「PMA-900HNE」と言えるだろう。
新型アナログ増幅回路に止まない探求心を、電子ボリュームの採用に合理性を感じる。筆者は主に「PMA-900HNE」でAmazon Music HDをストリーミング試聴し、同機の狙いとクオリティをチェックした。まず、同機で注目すべきは、すっかりお馴染みのネットワークシステム「HEOS」を内蔵し、各種ストリーミングサービスへのアクセスが容易なこと。時代に沿った「アンプ」のアップデートと言って良いだろう。

HEOSに対応するPMA-900HNEは、最新のSoCプロセッサーを搭載
音を出すと、柔らかく繊細で、金管楽器の煌びやかさがエネルギッシュ。キツくならず、鮮やかなサウンドは近代的な高音質と言える。1曲目は、Susan Wongの「How Deep Is Your Love」。軽快な空気感が印象的な楽曲だが、本機ではビビッドな色彩で魅せつつシルキーな柔らかさを伴って好印象。空気を湛えるかのような包容力の深さにハイレゾの真価が見て取れ、PMA-A110と同等という、FLAT AMPとPOWER AMPの2段構成による新型増幅回路が特徴とする低歪み性能を感じることができた。
往年のCity Pop、村田和人の「Boy’s life」 は、澄み切ったヴォーカルが夏空を感じさせ、リズムのキレでテンポ良く進行。時を超えて感動の記憶が蘇り、ハイレゾのアドバンテージを再認識した。プリメインアンプとストリーミングの組み合わせは大いにアリで、アナログの温かみとデジタルの合理性を研ぎ澄ませた、デノン流の答えと受け止めた。
【DCD-900NEのCD再生に注目!】(文:林 正儀)
新たに900、1700の両シリーズを登場させたデノン。PMA-900HNEはHEOSのネットワーク対応で、単体でもさまざまな音楽環境が楽しめるHi-Fiエントリー機だ。上位のPMA-1700NEはアイソレーター回路を改善したUSB DACを内蔵する。パソコンなどにつなぎハイレゾ音源を楽しみたいPCオーディオリスナーにおすすめできる。
それぞれの役割分担が明確なのが好ましい。2段構成の新型増幅回路や電子ボリュームなど800、1600シリーズの後継に相応しい進化を遂げているが、特に1700番は記念モデルA110譲りのUHC-MOSプッシュプル回路にミニマムシグナルパスを採用したこだわりで、引き続きクラス最強のパフォーマンスを発揮する。一方でDCD-900NEは、CD専用機としてはデノン最上位のモデルとなる。新開発のシャーシによってこれまでの単一構造から、デジタル/アナログ完全分離構成へとブラッシュアップされた。D/Aコンバーターも新開発だ。
ここではDCD-900NEを用いたCD再生をメインにレビューしたい。2台のアンプの聴き比べのような試聴である。1700は重量感も抜群だ。その物量投入や定格出力の違い、アンプのグレード差がサウンドにそのまま現れた印象だ。言いかえると、CDプレーヤーが敏感にその違いを描き分けるともいえる。万能で多彩な表現力だ。藤田恵美のライブは、900が明るくポップな響きで、1700は落ち着きがある。声質もクリアで硬めなのに対して、柔らかく艶やかと好対照だ。

DCD-900NEは、プリメインアンプのPMA-900HNEとサイズが揃う。また、CD専用機としてデノントップモデルとなる
幸田浩子のオペラは、ニュアンスが細やかでステージの奥が深いクラシック向きの1700に対して、900は抑揚を抑えつつ音像が近くフレンドリーだ。ジャズは両者動きがよく、メリハリを出す。その中にもピアノが緻密でリズムが立つのが1700で、元気にとびだすのが900。それぞれのモデルの魅力を、DCD-900NEはしっかり引き出せていた。
Specification
【DCD-900NE】
●再生周波数特性:2Hz-50kHz -3dB(DSD)、2Hz-20kHz ±1dB(PCM 44.1kHz)、2Hz-96kHz ±1dB(PCM 192kHz)●SN比:110dB(DSD)、115dB(PCM)●ダイナミックレンジ:108dB(DSD 可聴帯域)、101dB(DSD 16bit)、110dB(PCM 24bit)●高調波歪率:0.0015%(DSD)、0.0020%(PCM 24bit)、0.0025%(PCM 16bit)●出力端子:アンバランス×1●入力端子:同軸デジタル×1、光デジタル×1●その他入出力:IRコントロール入出力×1●消費電力:24 W(待機時 0.3W)●サイズ:434W×107H×328Dmm●質量:4.9kg

リア部の出力端子には、RCA、光デジタル、同軸デジタルをそれぞれ1系統。その他IR CONTROLを用意。RCA端子も独立化されている
【PMA-900HNE】
●定格出力:50W+50W(8Ω、20Hz-20kHz、T.H.D 0.07%)、85W+85W(4Ω、1kHz、T.H.D 0.07%)●全高調波歪み率:0.01% (-3dB、8Ω、1kHz)●SN比:105dB(CD、AUX、RECORDER)、86dB(PHONO/MM)、71dB(PHONO/MC)●周波数特性:5Hz-100khz(0 - -3dB)●サイズ:434W×131H×375Dmm●質量:8.3kg

リア部には、入力端子にCD、NETWORK/AUX、RECORDER、PHONO、同軸デジタル、USB-DAC、EXR.PREをそれぞれ1系統、光デジタルを2系統、出力端子にはRECORDERを1系統、その他IR CONTROLを1系統装備する
【PMA-1700NE】
●定格出力:70W+70W(8Ω、20Hz-20kHz、T.H.D 0.07%)、140W+140W(4Ω、1kHz、T.H.D 0.07%)●全高調波歪み率:0.01%(-3dB、8Ω、1kHz)●SN比:106dB(CD、NETWORK/AUX、RECORDER、入力端子短絡時)、89dB(PHONO/MM)、74dB(PHONO/MC)●周波数特性:5Hz-100khz(0 - -3dB)●消費電力:295W(待機時最小0.2W)●サイズ:434W×135H×410Dmm●質量:17.6kg●取り扱い:(株)ディーアンドエムホールディングス

リア部には、入力端子にCD、AUX、RECORDER、PHONO、同軸デジタル、USB-A、LANをそれぞれ1系統、光デジタルを3系統、出力端子にRECORDER、SUBWOOFERをそれぞれ1系統装備する
本記事は季刊Audio Accessory vol.185からの転載です。本誌の詳細および購入はこちらから
(協力:D&Mホールディングス)
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