2025年3月24日月曜日

「ロボット溶接」ゆっくり高品質…安川電機とトヨタが開発、新技術のポイント 2025年03月24日




SFA技術でロールケージを溶接するデモンストレーション

ロボットがゆっくり丁寧に―。安川電機トヨタ自動車と共同で、従来ロボットに求められる生産性重視とは一転して、品質に重きを置いたアーク溶接技術を開発した。ラリーカー向けで、乗員を保護するための補強パーツであるロールケージを従来比3分の1―4分の1と低速度で溶接する一方、強固に溶接できる。今後、溶接作業中の補正や速度調整など、人であれば柔軟に対応可能な溶接加工作業の再現に取り組む。(高島里沙)




SFA溶接(下)は接合面積が広くより強固に溶接できる

ロールケージは乗員の命を守る重要部品で、安全担保のためには高い溶接技術が求められる。レース中の車両の衝突や横転でゆがみ、修理に数週間かかるため、次のレースに出場できないこともある。

トヨタ自動車と安川電機は、競技車両にもトヨタ生産方式を導入しようと2024年1月から共同で研究開発を進めてきた。

今回開発したアーク溶接の新工法「連続凝固溶接(SFA)」は、ロボットが溶かして固める作業をゆっくりと連続で行う。溶融部分が多く接合面積が広いため、より強固に溶接できる。ロボットの活用で職人が2―3週間かかっていた溶接作業を2―3日に短縮できる。

溶接速度は従来の工法では毎分80センチ―100センチメートルを要していたが、新工法では毎分20センチ―30センチメートルに落ちる。ただ、安川電機の岡久学上席執行役員は「生産性よりも品質のプライオリティーが高い」と新技術のポイントを説明する。

SFAは薄板に対して幅広いビード(溶接材の盛り上がり)を形成できる。ロールケージは複数のパイプで構成されるが、パイプ同士の隙間にもビードを形成でき、ロバスト(堅ろう)性がある。また上下左右といった溶接姿勢にも追従可能で、四方から溶接できる。

今後は、人であれば実現可能な溶接加工作業の再現に取り組む。溶接工は加工中に状態を見ながら速度を調整したり、穴が空いていたら補正したりする。そうした細かな作業をロボットに教示する。岡久上席執行役員は「マイスターに少しでも近づけるようにしていきたい」と強調。溶接の人からロボットへの代替をさらに進める方針だ。


【関連記事】 トヨタグループも頼りにする異能の変革集団
日刊工業新聞 2025年03月20日

0 コメント:

コメントを投稿