日本放送協会(NHK)がシステム開発の中止を巡り、日本IBMを提訴した。NHKは富士通製メインフレームで稼働する営業基幹システムの刷新を計画。クラウド基盤への移行業務を日本IBMに委託したが、プロジェクトは難航した。納期に間に合わないことが判明し、日本IBMとの委託契約解除に至った。NHKは54億円の損害賠償を請求し、日本IBMも真っ向から反論している。
日本放送協会(NHK)がシステム開発の中止を巡り、2025年2月3日付で日本IBMを提訴した。システム開発の業務委託契約の解除に伴う支払い済み代金の返還と損害賠償を求めた。請求額は54億6992万7231円である。
これに対して日本IBMは同年2月7日、同社のWebサイトに声明を掲載した。「当社は訴状の内容も検討し、裁判のなかで当社のこれまでの対応と見解を主張してまいります」(声明文)とした。
訴訟の対象となったのは「営業基幹システム(EGGS)」の更新プロジェクトだ。同システムは富士通製メインフレームを中心に構成され、受信契約者の契約情報の管理や受信料の請求処理など、NHKの受信料関係業務全般を支える。2001年8月から本格運用しているメインフレームは、数回の更改を経て2027年3月末にEOL(製品ライフサイクル終了)が迫っていた。
更新後の新システムはクラウドへ
NHKはメインフレームがEOLを迎える2027年3月末までにシステムをオープン系に移行することを決めた。新たなシステム基盤には、米グーグルのクラウド環境「Google Cloud Platform(GCP)」を利用する計画だった。GCPを採用した理由は「当協会の別システムで利用実績があったためだ」(NHK担当者)。
NHKは2020年8月、アクセンチュアの支援を受けて要件定義書の作成に着手した。同定義書によると、移行対象となるプログラムは約1030万ステップである。ホスト側のプログラムには、COBOLやJCL(ジョブ制御言語)、ADL(Aim Description Language)、アセンブラーなどが約790万ステップ。一方、ホストと接続するクライアント側には、PowerCOBOLやC、C++で記述したプログラム(約240万ステップ)などがあった。
2022年9月、NHKは新システムへの移行業務について国際調達(公開入札)の手続きを開始。入札したのは日本IBMを含む3社だった。各社が提出した提案書の内容及び入札価格などを総合的に評価し、2022年12月に日本IBMを委託業者に選定した。最終的な委託金額は、89億5842万6004円(税込み)である。
NHKと日本IBMは契約を締結した上で、2023年1月から営業基幹システムの移行プロジェクトを開始した。訴状によると、現行システムの分析や移行計画の妥当性を判断するアセスメント工程を2023年3月末までに終了させ、同年9月末までにアーキテクチャー設計・基本設計を完了。その後、詳細設計や開発・テスト・移行作業へと進み、2027年3月末までにプロジェクトを完了する計画だった。アセスメント工程はスケジュール通りに進行し、2023年3月末に完了したとする。
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