2019年1月28日月曜日

第812回:Quick Charge 4/Quick Charge 4+とは

勉強の為に転載しました。
https://www.google.com/amp/s/k-tai.watch.impress.co.jp/docs/column/keyword/1067/431/amp.index.html

さらにスマートフォンの充電が短時間に

 Quick Charge 4/Quick Charge 4+は、米国Qualcomm(クアルコム)が開発・提供している高速充電技術です。Quick Charge 4が2016年11月に、Quick Charge 4+が2017年6月に発表されました(以下、「Quick Charge」を「QC」と表記します)。どちらも併存して現在最新の規格として存在しており、どちらの規格を採用するか、携帯電話メーカーや、充電アダプターメーカーが選べます。
ACアダプタなどの送電/給電側とスマートフォンなどの受電側がQC 4/QC 4+であった場合、より高速な充電が可能となります。下位互換性もサポートされており、もし受電側がQC 2.0/3.0の場合、あるいは送電側がQC 2.0/3.0だった場合、QC 2.0/3.0との互換性を生かした高速充電が可能です。
 現在、スマートフォンでは、QC 4+が中国ZTEの「Nubia Z17」で採用され、中国国内で販売が開始されています。
 また、QC 4/QC 4+より以前の規格である、QC 2.0は「高速充電2」としてNTTドコモの携帯電話で採用されています。QC 3.0はたとえばXperia XZやHTC U11、NuAns NEO [Reloaded]といった最新機種でも採用されています。
 QC 4/QC 4+とも、チップセットではSnapdragon 835から対応しますので、いずれ日本でもQC 4またはQC 4+対応の機種が出てくることでしょう。ただし、Snapdragon 835搭載のスマートフォンでも、対応しないことも考えられます。

効率的な充電コントロールで、低温でより高速に

 たとえばQC 2.0ではは、高速充電のために9Vへ電圧を上げることで、そしてQC 3.0では最適電圧アルゴリズム(INOV、Intelligent Negotiation for Optimum Voltage)と呼ばれる0.2V刻みの供給電圧制御を行ってきました。QC 2.0よりQC3.0が効率よく、高速充電できるのは、バッテリーがその性能や状態、温度などによって最適な供給電圧が異なることに起因しています。電池の状態を監視し、INOVによって0.2V刻みで供給電圧をコントロールすることで、ロスを減らし効率をあげているのがQC 3.0です。
 QC 4では、供給電圧を最適にするアルゴリズム「INOV」を、さらに温度監視などのチャネル数を増やすこと、電圧刻みをさらに細かく0.02Vとすることで、より効率よく、つまり高速に充電できるようになりました。
 QC 4ではもうひとつ仕組みを加えました。「デュアルチャージ」というもので、スマートフォン内部のバッテリーへの電力供給路をマスター、スレーブの2組用意する、というものです。電源供給時にバッテリーの電圧、温度などの状況をセンシングし、可能なときには2組同時に電気を流すということでより高速に充電を可能にしています。
 これらにより、「最初の5分で5時間分まで充電」「0〜50%までは15分で充電可能」と、これまでより高速な充電を可能としました。
 また、QC 4+では、INOVのアルゴリズムをよりスマートフォンでの充電の実態に合わせて改良しました。具体的には「充電時にスマートフォンが熱くならないように」という条件下で「さらに充電速度15%向上」させています。
 充電時の温度監視でより効率的な供給電圧制御を行うことで、結果として電力効率も向上しています。
 クアルコムでは2750mAhバッテリーを最高40℃の制約条件下で、0〜50%まで充電を行った場合、典型的なケースとして、QC 4より温度は3℃低く、15%早く充電可能で電力効率は最大30%向上する、としています。
 ただし、携帯電話を充電時に温度をどこまで上げて良いか、メーカーや携帯電話事業者がスマートフォンを設計、審査する際に設定すると見られます。クアルコムもSoCやソフトウェアをそれに合わせて供給します。そのため、同じQC 4+対応機でも、充電にかかる時間やどこまで熱くなるかは機種によって異なることになります。

最大の特長はUSB PDとの互換

 次は給電側、つまりACアダプターや、カーチャージャーなどはどうでしょうか。最近、USB Type-Cでパソコンなどへの電力供給に使える「USB PD(Power Delivery)」という規格があります。QC 4/QC 4+は機能的に互換性があります。ただし、大きな違いとして、QC 4+はQC 2.0、3.0と完全に下位互換を保っているものの、QC 4はUSB PDとの互換のために他のQuick Chargeとは互換を持たない部分があります。
 技術的な点を見てみましょう。USBでは、データ転送をするために-Data、+Dataという信号線を使います。QC 2.0、3.0ではこの信号線を使ってスマートフォンがQCに対応しているか、現在最適な供給電圧かなどを判断します。
 QC 4+対応のACアダプターなどは、USB PD機器が接続されれば、USB-PDのパワールールに従って、たとえば電圧を9Vや12Vにして電気を流します。一方で、QC 2.0機器が接続されたと判断できれば、やはりこれもQC 2.0で定められた高速充電電圧、つまり9Vで給電します。
 「USB PD対応機器」を名乗るためのUSB-IFの認証を受けようとすると、このQCのやり方は「正しくない方法を使っている」こととなってしまいます。つまりQC 4+の電源アダプターは、機能的にはUSB 3.1のUSB PDに互換があるものの、USB-PD規格遵守ではないため、USB PDを名乗ることはできない、ということになります。
 一方、QC 4のACアダプターなどは、USB PD互換であり、USB規格を遵守したものとなります。つまり、USB PD機器が接続されて9.0Vが要求されればそのように流しますが、QC 2.0機器が認識できる通信はしないので、QC 2.0機器と繋ぐと、USB BC(USB Battery Charging)規格である5.0Vの電圧で電気を供給します(当然、その分、充電に時間はかかります)。
 もちろん、QC 4、QC 4+どちらの給電装置も、接続されているスマートフォンなどがQC 4、QC 4+対応であればその仕様で給電を行いますが、そうでない装置だった場合は、このような挙動の違いが出てくるのです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)

0 コメント:

コメントを投稿