2020年4月4日土曜日

Googleが目をつけた東京・調布市の無名企業は何がスゴイのか?

ダ・ヴィンチニュース
『グーグルを驚愕させた日本人の知らないニッポン企業(講談社+α新書)』(山川博功/講談社)
 こんな会社があったなんて!? …この本を読んでそう思う人は多いだろう。『グーグルを驚愕させた日本人の知らないニッポン企業(講談社+α新書)』(山川博功/講談社)は、いいのか悪いのかタイトルに偽りなし。確かにこの本に紹介されている「株式会社ビィ・フォアード」は、ほとんど一般には無名だ。だが、グーグル副社長自らがアメリカから直接話を聞きにくるほどの超グローバル企業なのだ(ちなみに著者はこの会社の代表取締役だ)。
 東京・調布に本社を置くビィ・フォアードは、簡単にいえばEC(電子商取引)サイト運営企業だ。取り扱うのは中古車、自動車部品。ただし顧客は日本をのぞく全世界で、現在、年間120万台くらいある中古車輸出台数のうちの1割強のシェアを誇る。特にアフリカに強く、たとえばタンザニア、ザンビアなど7カ国で3割以上のシェアを持ち、モンゴル、バハマなど新興国・途上国を中心に取引実績は実に125カ国にのぼるという。
 グーグル副社長が来たというのは、まさにアフリカの数カ国で検索ランキングのトップ10以内にビィ・フォアードが食い込んだためだ。Facebookやグーグル、ヤフー、YouTubeなどと肩を並べてランクインする「謎」の存在(しかもECサイトでランクインしたのはビィ・フォアードのみ)。そりゃ、副社長も何者なのか気になったことだろう。
 これまでの道のりを振り返りながら、ビィ・フォアードの商売のひみつを明かす本書は、中古車市場の知られざる実態やビジネスに役立つノウハウや発想が満載。なにより失敗を正面からみつめる著者のタフさに学ぶところは多く、彼らの成功を支えたのが「何事もチャレンジしてみる」「逆境でもあきらめない」という前向きな姿勢であるのは間違いない。
 だが、具体的になぜ彼らはそこまで成功したのか。
 まずは、それまで一般的に現地のディーラーを相手にしたB to Bの取引だった中古車輸出を、ECサイトを使ってユーザーとの直接取引にしたことが大きい。ネット環境さえあれば24時間地球のどこからでも注文可能な上に、中間業者を介さないからコストも削減できるとあって、顧客の7割を個人客が占めるという。また社員173名のうち、54人は外国人。しかも出身国は26カ国と多岐にわたり、どんな国からサイトを訪れても「母国語で取引ができる」という環境を実現。顧客の安心感につながるこうした取り組みが注文増に確実に一役買っているのだ。
 さらにIT環境の整備にきっちり投資し、全社員が情報共有できるシステムを作りあげた先見の明もさすが。進捗、決済、現時点の車の位置など事細かな状況が逐一更新され、顧客からの問い合わせにすぐに対応が可能となっている。日本国内では珍しくもないことだが、これを海外での取引、特に新興国・途上国で実現させたのは大きい。結果、顧客からの絶大な信頼を勝ち取り、客が客を呼ぶ圧倒的な状況を作り出したのだ。
 リーマンショックやチャイナショックを乗り越え、なんとアフリカにおいては流通網まで整備してしまったというスケールの大きなビジネスをするビィ・フォアード。一見すると西東京にある中小企業にすぎないが、将来は「アフリカに基幹物流を作る」「新興国・途上国アマゾンになる(車以外の商材もなんでも扱う)」と野望は特大。中小企業だからこそ、こんなフロンティア・スピリットにあふれているのかも。閉塞感を抱いているビジネスマン諸君、特に若い人たちには、ぜひとも注目してほしい。日本も自分もまだまだやれる!そんな勇気がわいてくるはずだ。
文=荒井理恵

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