https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00351/012500003/?n_cid=nbpnxta_mled_act
ツールの進化で、ノーコード/ローコード開発自体のハードルは下がりつつある。一方で現場が「使える」システムをつくるには工夫が欠かせない。成功のポイントは業務部門を巻き込んだ一体開発だ。
三菱食品
業務部門の選抜メンバーが開発
「出張先など社外でも書類申請や決裁ができる。働き方改革とペーパーレスを大いに進められた」。食品卸最大手、三菱食品で情報システム本部営業・会計システムユニットに務める友貞篤人氏は、ノーコード/ローコードツールを活用した意義をこう語る。同社はNTTデータ イントラマートの「intra-mart」を使い、契約書の内容確認依頼や通勤手当の申請書といった業務ワークフローの電子化を進めている。アプリを開発したのは業務部門だ。
全国の食品メーカーや小売店、飲食店を取引先とする三菱食品は、拠点間での書類のやりとりや承認者の出張などにより「承認プロセスに1~2週間かかることがあった」(友貞氏)。承認プロセスを電子化し、書類データをスマートフォンなどでやり取りして申請・承認できるようにしたため、承認にかかる期間は半分~3分の2程度に減ったという。従来は紙の社内書類が204種類存在したが、2019年7月から2021年10月までで62種類の書類を電子化。毎月1万5800枚の紙を減らした。
開発は業務部門、IT部門は管理役
業務ワークフローの電子化はノーコード/ローコードツールによる定番の業務改善手法だ。三菱食品はより早く大きな効果を生み出すため、運用体制に工夫を凝らした。intra-martの導入に当たり、同社の情報システム本部は経理グループや人事グループなどおよそ10ある現場業務部門から1~2人ずつ社員を集め、「分科会」を設けた。この分科会メンバーがアプリ開発を担い、情報システム本部はシステムベンダーの支援を受けつつ分科会のアプリ開発の技術支援に回った。
書類を所管する業務部門が自らアプリを開発することで、記入項目の位置関係、プルダウンメニューか自由記述かといったデータ記入方法など「使いやすさを左右する仕様をシステムへスムーズに落とし込めた」(友貞氏)。
日本航空(JAL)
標準基盤を決め案件で使い分け
日本航空(JAL)は空港での運航情報提供や混雑状況可視化といった幅広い分野でノーコード/ローコードツールを活用している。業務部門によるセルフ開発を加速するため、IT部門が手厚い開発支援体制を敷いている。
ツール導入を本格的に検討し始めたのは2018年7月だ。製品を調べたり各業務部門の課題を聞き取ったりするなかで、「柔軟さや迅速さが必要なシステムの開発には有効と判断した」(IT企画本部IT推進企画部生産系システム推進グループの髙橋洋グループ長)。
2019年8月ごろまでに「AWS」「Sales force Lightning Platform」「kintone」を標準基盤として選定し、平行して2020年7月までにデータ基盤整備など利用環境を整えた。標準基盤を設定することにより「案件ごとに一から開発ツールを選ぶ必要がなく、知識や経験の習得に必要な人的資源を集中できた」(髙橋グループ長)。
IT部門が積極提案、「景色変わった」
運用方法の特徴の1つが複数ツールの使い分けだ。開発方法を決めるフローを設け、業務課題の解決に適したツールを選べるようにしている。例えばSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)導入で解決できるなら、自社開発は必要ない。無理ならローコードやノーコードでの開発を検討する。まず業務部門がkintoneで開発できるか検討し、無理ならIT部門がLightning PlatformやAWSのローコードツールで開発する。
このフローが生きた例が2021年内に新千歳空港で実証実験を検討している「空港簡易掲示板アプリ」だ。大雪などで運航の遅れや欠便が生じた際、空港のカウンターには問い合わせが殺到する。乗客は同アプリを使えば、最新情報を、自身のスマートフォンでQRコードを読み取って確認できるほか、空港のデジタルサイネージでもチェックできる。管理画面は空港スタッフが運航情報を入力しやすいよう現場の要望を聞き取ってkintoneで開発し、乗客が目にする画面表示のデザインなどはIT部門がAWSで開発した。
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