2024年1月22日月曜日

「全てのデバイスにAI」「HBM投資継続」 サムスン動向 企業ウオッチ。2024年1月22日 5:00

https://www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC197ZW0Z10C24A1000000?n_cid=NPMTF000P_20240122_a17


「企業ウオッチ」では注目企業の最新動向を海外メディア報道も交えてダイジェスト形式でお届けします。今回は韓国Samsung Electronics(サムスン電子)です。

AIでデバイス体験を直感的に、現代自動車やテスラとの提携も発表

サムスン電子は、家電やスマートフォンといったデバイスの体験をAI(人工知能)によって直感的かつ便利にするビジョン「AI for All」を打ち出した。2024年1月開催の「CES 2024」に合わせて記者会見を開催し、同社副会長兼最高経営責任者(CEO)で家電や部門をJong-hee Han(ハン・ジョンヒ)氏らが構想実現に向けた技術や製品、サービスを紹介するとともに、韓国Hyundai Motor(現代自動車)や米Tesla(テスラ)などとの協業も明らかにした。
AIによるデバイス体験の刷新を目指す。球体自走ロボットの新モデルも披露した(出所:サムスン電子)
家電分野では、新型プロセッサー「NQ8 AI Gen3」を内蔵する量子ドット液晶テレビ「Neo QLED 8K QN900D」を紹介した。NQ8 AI Gen3は、前世代品の8倍となる512個のニューラルネットワークと、前世代品の2倍高速なNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)を搭載する。低解像度コンテンツを自動でアップスケールして最大8K画質の視聴体験を提供するほか、AIにより音声と背景雑音を分析してリスニング状態を改善する。様々なニーズを満たすためにアクセシビリティー機能も強化した。ジェスチャーで操作できる手話機能や、テキストをリアルタイムで音声に変換するオーディオ字幕機能などを備える。
開発中の家庭用球体自走ロボット「Ballie(バリー)」の新モデルも発表した。他のスマートデバイスと連携して家事をサポートするほか、壁に画像や動画を投影して、気象情報などのカスタム化した情報を提供する「AIホームコンパニオン」へと進化させた。
冷蔵庫「Bespoke 4-Door Flex」は、「AI Family Hub」と呼ぶ、32インチ縦型タッチスクリーンディスプレーを備える。庫内カメラで食材を認識して在庫管理できるほか、消費期限が近づくと通知する。IHコンロ「Anyplace Induction」は、クッキングアプリ「Samsung Food」のレシピを上面の7型ディスプレーに表示する。加えて、利用者の習慣を記憶し、機械学習(マシンラーニング)により洗濯サイクルを提案する洗濯乾燥機も披露した。発売予定のロボット掃除機「Bespoke Jet Bot Combo」ではAI物体認識機能を強化した。ごみや汚れ、床の種類を認識して設定を自動調整する。
ノートPC「Galaxy Book4」は、米Microsoft(マイクロソフト)の生成AI支援機能「Copilot」やサムスン電子のスマートフォン「Galaxy」と連携する。CopilotがGalaxy内のテキストメッセージを探して読み上げたり、要約したりするほか、利用者に代わってメッセージを作成し送信する。
スマートホーム機器を管理するIoT(モノのインターネット)アプリ「SmartThings」においては、「空間AI」と呼ぶコンセプトを紹介した。顧客が持つサムスン電子製品が増えるほど、管理や使い分けが複雑になる。その解決策として、機器が利用者の住空間や生活習慣を理解することで、よりパーソナル化された機器管理が容易になる手法を導入するとした。
SmartThingsでは、家と自動車の連携も進める。サムスン電子は計画の一環として、現代自動車やテスラとの提携を明らかにした。今後、音声コマンドで現代自動車グループの自動車の遠隔操作が可能になる。例えば、暖房や窓の開閉などの車内の調整が事前に行える。この連携は双方向であり、車内から自宅の設備・機器を操作できる。自動車の位置情報に基づきガレージドアを自動開閉したり室温調整したりといったことが可能になる。
テスラとは、サムスン電子の機器エネルギー使用量管理アプリ「SmartThings Energy」に関して提携した。テスラの電気自動車(EV)や家庭用EV充電器「Wall Connector」、家庭用蓄電池「Powerwall」などをSmartThings Energyで管理できるようにする。加えて、同アプリの利用者はテスラ製アプリの「Storm Watch」機能を利用できる。台風・暴風雨など異常気象情報の通知をテレビやスマートフォンで受け取れるようになる。

2025年まで広帯域メモリーへの積極投資を継続 AI需要が後押し

サムスン電子は、少なくとも2025年までHBM(広帯域メモリー)への投資を継続する方針だ。韓国中央日報が2024年1月12日に報じた。CES 2024の会場に訪れたサムスン電子副社長で米国半導体部門責任者のJin-man Han (ハン・ジンマン)が「2024年にHBMへの投資を2.5倍に増やし、2025年も同様の水準を維持する予定だ」と語った。同社の2023年の設備投資額は、前年とほぼ同じ53兆7000億ウォン(約5兆9000億円)に達したとみられる。このうち、47兆5000億ウォン(約5兆2000億円)が半導体部門に割り当てられたとみられ、市場低迷の中でも積極的な投資姿勢が見て取れる。
HBMはAIの普及に伴って需要が増加しており、メモリー不況打開策の切り札として注目されている。同氏は、「HBMやその他の先端チップの受注が増加する中、2〜3年後には設備投資の問題が生じ、需給バランスが崩れる恐れがある」とも指摘。この1年は2025年の需要拡大に向けた準備期間になると説明した。同氏は、本格的な回復は2024年後半から始まると見ている。通常、メモリー需要はモバイル機器、PC、サーバーの順で増加するが、現在はまさにその傾向がみられるという。

球体ロボットの新モデルを披露、24年発売を予定

サムスン電子がCES 2024で披露した球体ロボットのBallieが大きな進化を遂げていると、米ZDNETが2024年1月11日に報じた。このAIロボットは1台で、プロジェクターやスマートホームハブ、ペットロボット、監視カメラなど多数の機器の代替となる可能性があるという。サムスン電子がBallieを初めて披露したのは2020年だった。CES 2024ではその新モデルを発表し、日常において、どのように生活を支援できるかを具体的に説明した。かわいらしい外観は変わらず、できることは増えているという。
例えば、朝はカレンダーを表示し「今日は結婚記念日です」と知らせ、花屋に電話もかけてくれる。夕食の準備中は、壁にレシピ動画を投影し、オーブンの様子を映し出し、花が届くと玄関カメラの映像に切り替える。サムスン電子によると、Ballieのプロジェクターはユーザーの姿勢と顔の角度を自動的に検知して投影角度を調整する。床で腹筋運動をしているときは、天井にエクササイズ動画を投影することも可能だという。公開された動画では、ペットモニターとしての機能を紹介した。犬の様子を飼い主に送信したり、プロジェクターで映像表示して犬を楽しませたり、給餌器を作動させたりした。同社幹部によると、Ballieは2024年に発売する予定。現時点では発売日や価格を明らかにしていない。
I saw Samsung's Ballie robot assistant at CES, and it actually seems helpful
https://www.zdnet.com/article/i-saw-samsungs-ballie-robot-assistant-at-ces-and-it-actually-seems-helpful/
(ニューズフロント 小久保重信)

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