2024年1月22日月曜日

旭化成、パワー半導体の窒化アルミニウム(AlN)で成果 SiCやGaNより低損失な窒化アルミニウム(AlN)は、6eVでTOP。人工ダイアモンド5.5eVを上回っております。 ハードウエア グローバルトレンド 電機 半導体。2024年1月17日 5:00

2024.01.22

旭化成、パワー半導体AlNで成果 SiCやGaNより低損失 ハードウエア グローバルトレンド 電機 半導体 

 

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2024年1月17日 5:00
旭化成、パワー半導体AlNで成果 SiCやGaNより低損失
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旭化成はAlNの研究開発に力を注ぐ。写真は、名古屋大学と共同で試作したダイオードを試験している場面(写真:名古屋大学)
旭化成が、新しい半導体「窒化アルミニウム(AlN)」の実用化に向けた取り組みを加速させている。名古屋大学と共同で、AlN素子の作製に必要な基本構造を初めて実現した。この構造で物性値を測定したところ、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)を上回る特性を示した。旭化成は米子会社を通じて素子製造に不可欠なAlNウエハーを手掛ける。パワー素子や通信用高周波素子に向けたAlNウエハーを2030年ごろに事業化するのが目標だ。

旭化成は米子会社でAlNウエハーを手掛けている
一般的なシリコン(Si)に比べて、低損失なパワー素子を実現できるパワー半導体として、SiCやGaNがあり、製品が次々と登場している。損失が小さいのは、Siに比べて「バンドギャップ」が広く、「絶縁破壊電界強度」と呼ばれる特性が高いからである。

AlNのバンドギャップは非常に広い(出所:旭化成と名古屋大学の資料を基に作成)
AlNは、SiCやGaNに比べてバンドギャップが広いため、さらに低損失なパワー素子を実現できると期待されている。AlNのバンドギャップは約6.0電子ボルト(eV)で、SiCやGaNに比べて1.8倍前後である。
絶縁破壊電界強度がSiCやGaNの2倍以上に
高い潜在性を備えるAlNだが、p型層とn型層を合わせた「pn接合」の実現が困難という課題があった。pn接合は、半導体素子として利用する際に必要な基本構造である。
そこで旭化成は、名古屋大学未来材料・システム研究所教授の須田淳氏や同教授の天野浩氏らの研究グループとタッグを組み、AlNでpn接合を実現した。この成果を、2023年12月開催の半導体分野の国際会議「IEDM 2023」で発表した。pn接合のダイオードを試作して基本特性を調べたところ、良好な結果を得られた。
特に絶縁破壊電界強度が高かった。具体的には7.3MV/cmで、SiCやGaNに比べて2倍以上、Siに比べると25倍以上の高い値である。試作したpn接合ダイオードはあくまで原理検証用の簡素な構造にすぎず、伸びしろがある。例えば、「エッジターミネーション」のような耐圧を高める工夫を導入することで、「10MV/cmに達するだろう」(名古屋大学の須田氏)と見る。
絶縁破壊電界強度が高いので、薄い膜厚でも耐圧を確保しやすい。膜厚は数百nmで耐圧は280Vほどだった。耐圧の値が大きいほど、高い電圧でも壊れにくい。膜厚が薄いほど、素子の製造コストを抑えられる。つまり、高耐圧素子を安価に造りやすくなる。
新手法でpn接合を実現
今回、新たな素子作製技術や結晶成長技術などを導入することで、pn接合を実現した。中でも注目すべきは、「分布型分極ドーピング(DPD)」と呼ぶ手法である。p型やn型といった半導体層を実現するには一般に、不純物を添加(ドーピング)する。だが、AlNではドーピングが難しい。
そこで、化学組成を空間的に変化させるDPDで従来のドーピングと同様の効果を発揮させて、p型とn型を形成した。AlNに対して、数〜30%のGaNを混合させるという。DPDを理想通りに行うために、高品質な薄膜結晶を成長させる技術も旭化成と名古屋大学のグループで研究開発した。
旭化成と名古屋大学はかねて、AlN系半導体を用いた深紫外半導体レーザーの研究開発に取り組んできた。そのため、AlN系半導体の薄膜結晶成長や素子作製に関して技術的なノウハウを有していた。加えて、名古屋大学はGaN系半導体において、DPDの設計などに技術的な蓄積があった。
AlNウエハーで150mm狙う
AlNのpn接合ダイオードの作製に用いたのは、旭化成の米子会社Crystal IS(クリスタルIS)が開発したAlN単結晶ウエハー(AlNウエハー)である。クリスタルISはこれまでAlNウエハーを活用し、自社で深紫外線の発光ダイオード(LED)を製造・販売してきた。
旭化成はパワー素子や高周波素子に向けたAlNウエハーを2030年ごろに事業化する目標を掲げる。写真は研究開発責任者の竹中氏。2023年12月撮影
旭化成はパワー素子や高周波素子に向けたAlNウエハーを2030年ごろに事業化する目標を掲げる。写真は研究開発責任者の竹中氏。2023年12月撮影
今後は、パワー素子や高周波素子に向けて口径を拡大し、積極的に外販する。2030年ごろの事業化を目標に掲げる。
既に口径100mm(4インチ)品を開発済みである。パワー素子向けとしてはまだ小さいが、AlNのような化合物半導体にとって、4インチというのは「非常に大きな成果」(旭化成上席執行役員で研究・開発本部長の竹中克氏)である。例えば、ガリウムヒ素(GaAs)ウエハーの場合、一般に4インチ品で高周波素子を作製している。ウエハーの口径が大きいほど生産性が高まりコスト削減につながるため、次は口径150mm(6インチ)を狙う。
キーワード
窒化アルミニウム(AlN) アルミニウム(Al)と窒素(N)の化合物。もともと、波長の短い紫外域の発光素子として研究開発が盛んだった。現在は、シリコン(Si)だけではなく、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)に比べてパワー半導体として材料特性が優れることから、次世代パワー半導体の1つとして注目されている。

その一因は、高耐圧素子に向くかどうかの指標となる「バンドギャップ」が広いことにある。Siよりもバンドギャップが広い「ワイドバンドギャップ(WBG)半導体」のSiCやGaNよりもさらにバンドギャップが広いAlNは「ウルトラワイドバンドギャップ(UWBG)半導体」の1つである。UWBGには、他にダイヤモンドや酸化ガリウムがある。
(NIKKEI Tech Foresight/日経クロステック 根津禎)
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