2015年7月9日木曜日

低酸素を好むがんを殺す、物理学からも加勢、欧州で検証開始


放射線や薬の効きにくい状態を乗り越える

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Ilena Gecan/クリエイティブ・コモンズ表示-継承 2.0 一般)

写真はイメージ。記事と直接の関係はありません。(写真:Ilena Gecan/クリエイティブ・コモンズ表示-継承 2.0 一般

 低酸素の状態を好むがんは治療が厄介と知られている。

 このたびその解決につながるがん治療の検証が始まるようだ。

 欧州臨床腫瘍学会(ESMO)が2015年6月24日に紹介している。

低酸素を好むがん細胞を狙う

 メトキシアプロジェクト (METOXIA)と呼ばれるプロジェクトで開発が進められている治療だ。がん細胞の低酸素を好む性質に焦点を合わせるものだ。

 このプロジェクトは、欧州の健康研究の協力プロジェクト。7番目のフレームワークプログラム(FP7)の支援で資金を受け、オスロ大学の物理学科がまとめているという。

薬が届きにくい

 研究グループは、固形がんは一般に正常な組織に比べて低レベルの酸素を持つ領域に見られると指摘。いくつかのがん細胞はこのような低酸素条件に適しているという。

 研究グループは、低酸素によってがんが悪化すると突き止めて、逆に低酸素の状態をうまくがんを殺すために生かそうと目指した。

 プロジェクト・コーディネータのオスロ大学のペーターセンは「がん細胞が低酸素の環境下にあるとがんが放射線に抵抗性を示し、薬の治療にも抵抗性を持つ」と指摘する。薬は血液の中から低酸素の領域に移ることができないからという。

表面の「受容体」を無効に

 研究グループは、低酸素領域の細胞を見つけて殺す方法を開発した。

 ペーターセンらの研究グループは、低酸素にあるがん細胞を守る細胞膜の上にあるタンパク質である受容体を無効にして、低酸素細胞を殺すという原理だ。

 一方で、低酸素を好むがんを殺すという「ブレークスルー」(研究グループ)の半面で、酸素の中でも増えるがん細胞には影響しないと説明している。

 二正面作戦で、低酸素のがん細胞も酸素を好む細胞も殺す必要があると見ている。

二正面作戦で攻撃

 研究グループは、二つの成分を持つ薬を提案。

 一方は低酸素細胞を殺すもの、他方は細胞の放射線の感度を高めるもの。放射線治療と組み合わせて治療の効果を高めるという。

 酸素を好むがん細胞は、放射線の影響を受けやすいため、組み合わせのメリットが出てくると見られる。

 腫瘍の中の低酸素の状態を見えるようにする技術も開発している。

 今後欧州で検証が進むようだ。

 がんのへの対処方法はさまざま。日本でも将来的にも広がるか。

文献情報

Targeted Treatment for Hypoxic Conditions. ESMO 24 Jun 2015

http://www.esmo.org/Oncology-News/Targeted-Treatment-for-Hypoxic-Conditions


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