(CNN) 地球上で最も強度が高い物質とみられている2次元の極薄炭素シート、「グラフェン」の発見から15年。グラフェンは鉄よりもはるかに強度が高いが、建築資材として有用な3次元の物質に転換するのは至難の業とされてきた。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームの発見により、こうした状況が変わるかもしれない。
MITの研究者らはコンピューターモデルを活用し、新物質の構成に成功。鉄のわずか5%の密度でその10倍ほどの強度を持ったスポンジ状の構造を作り出した。新物質はこれにより、非常に軽量でありながら大きな重量を積載できるようになった。
開発に携わったMITのチャオ・チン氏は「橋のようなインフラで使用される多くの物質や、鉄やコンクリートに代わるものとしてこの種の物質を使うことができる」と指摘する。
グラフェンは2002年、英マンチェスター大学のアンドレ・ガイム教授により発見された。
同氏は鉛筆に使われるグラファイト(黒鉛)に着目。セロテープを使ってグラファイトの薄片を剥いでいった。この結果、原子1個分の厚さしかない層になったのがグラフェンで、史上初めて発見された2次元の物質となった。
グラフェンを原子顕微鏡で観察すると、6角形が蜂の巣状に並んだ平板な格子のように見える。非常に強度が高いほかゴムのようにしなやかで、銅の1000倍の電気伝導性を持つ。
こうした特徴からメディアはグラフェンを「驚異の物質」ともてはやした。だが、現実の製品などに結びつけるのはこれまで難航してきた。
MITの研究者らはコンピューターモデルを使用し、グラフェンの2次元の薄片から3次元構造を作り出すのは可能かを確かめた。そのためには薄片を互いに融合させる必要があり、薄片が安定した統合体を形成するまで熱や圧力を大量に加えることでこれを実現した。
次に生物学的な素材に目を向け、新物質のひな形となり得るような自然発生的な幾何学形状を探した。研究者らが着目した形状のひとつが「ジャイロイド」だ。
ジャイロイドは多孔質の連続的な表面を持つ形状で、スポンジに少し似ている。体積あたりの表面積が大きい。互いに融合させたグラフェンの薄片をこうした形状に並べれば、非常に軽いものの強度の高い物質が形成されることが分かった。
まだ研究の余地はあるものの、チン氏はいつの日か、グラフェンを使ったジャイロイド状の物質が工学や建築の分野で広く使われるようになるかもしれないと見込んでいる。鉄よりもずっと軽い物質を使うことで、建設時の二酸化炭素排出の大幅な削減につながる可能性もある。