http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50957
共謀罪の狙いはテロ対策ではない! スノーデンの警告に耳を傾けよ
合法化される政府の国民監視
小笠原 みどり プロフィール
想像をはるかに超えた「監視の力」
映画は2013年6月、29歳のスノーデン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)が、香港のホテルでジャーナリスト3人と面会し、NSAが電子通信網に張り巡らせた監視装置の数々について内部文書を見せる場面から幕を開ける。
世界を震撼させた連続スクープが公表されるまでの手に汗握る1週間の合間に、スノーデンの過去と、極秘裏に拡大していった監視プログラムが解き明かされる。
たとえば、「エックスキースコア」。米中央情報局(CIA)にエンジニアとして採用されたスノーデンは、2007年にスイス・ジュネーヴへ派遣され、そこでこのプログラムを知る。
NSAの調査員が「攻撃」「殺し」「ブッシュ」とキーワードを入力して、大統領への敵対的な発言をネット上から検索している。メール、チャット、ブログ、フェイスブックはもちろん、非公開のネット情報も含めて世界中の人々の通信と投稿が対象だ。有名人や政治関係者の発言ではない、すべての「フツーの人々」の私信から洗い出しているのだ。
当然、日本の首相への怒りや警察への批判、企業への不満などを示す発言を捜し出すことも可能だ。
特定の人物について知りたければ、エックスキースコアでその人物が送受信したメールからフェイスブック上の人間関係までを把握することもできる。
映画では、なんの罪もないパキスタンの銀行家をCIAが情報提供者として取り込むために、エックスキースコアを使って家族や友人、知人の弱味を捜し出し、それをネタに揺さぶりをかけ、脅迫していくさまが描かれる。
この経験は、国家の正義を信じていたスノーデンにとって、諜報機関に疑問を抱くきっかけとなる。
NSAはすべての情報を収集しているのか Photo by GettyImages
次に、ウェブカメラや携帯電話による盗撮、盗聴。個人のパソコンに内蔵されたウェブカメラを使って、NSAの調査員が上記銀行家の親族が着替えている場面を盗み見る。
パソコンがオフ状態にあっても、NSAが遠隔起動させ、監視カメラとして使用できるのだ。また、香港で3人のジャーナリストに会ったスノーデンは、3人の携帯電話を電子レンジのなかに保管する。
これはたとえ携帯電話の電源が切れていても、NSAがやはり遠隔操作によって電源を入れ、盗聴マイクとして音声を収集することができるから、それを防止するため。最初はあきれ顔だったジャーナリストたちが、スノーデンから監視技術の進化を聞くにつれ、驚愕していく。
そして、「プリズム」。これはNSAがグーグル、ヤフー、フェイスブック、マイクロソフト、アップル、ユーチューブ、スカイプなど米大手インターネット9社のサーバーにアクセスし、一日数百万件にも上る利用者の通信記録を入手していたプログラムで、2013年6月に暴露された事実のうち最も反響を呼んだといっていいだろう。
というのも、それまでも米政府がネット上の個人情報を大量に収集しているという動向は伝えられてはいたが、インターネット・サービス・プロバイダーは民間会社なので政府が直接介入するのには限界があると考えられていたからだ。
ところが実際には、政府は秘密裏に企業に協力を要請し、企業側は顧客にプライバシー保護を約束しながら、政府に大量の顧客情報を提供していた。
これらの米大手企業の事業は世界規模で、日本でも上記企業のサービスをまったく使わずにインターネットを使用している人はほとんどいないだろう。
さらに、無人機(ドローン)攻撃。監視は最終的にだれかを破壊することに行き着く。スノーデンが暴いたNSAの監視システムはすべて「対テロ戦争」の下で巨大な権限を手にした諜報機関が、法律や議会の監督なしに、公衆の目の届かないところで強化させた。
米軍は携帯電話に搭載されたSIMカードから持ち主の位置情報を特定し、無人機を遠隔操作して爆撃する。日本のNSA代表部がある米空軍横田基地で、またハワイの暗号解読センターで、スノーデンは米軍のドローンによって建物もろとも木っ端微塵に破壊される人間の映像を見た。
空爆による砂埃のなか、救助に駆けつける車両を再び、ドローンが襲う。ドローンを操作した女性空軍兵士の声がNSAの技術開発者たちに届く。
「ショーにご満足いただけたかしら?」
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