https://www.youtube.com/watch?v=BmYv8XGl-YU
(アイキャッチ画像はウィキペディアからお借りしました)
今朝ツイッターを眺めていたら、フェイスブック創業者マーク・ザッカーバーグが母校ハーバード大学の卒業式に呼ばれてスピーチしてる動画のリンクが流れてきて、軽い気持ちで再生しはじめたら凄い迫力で、30分以上のスピーチ最後まで全部見てしまったってことがあった。
結構笑えるジョーク(窓ガラスに数式書いたりしないよ!・・・とかいう映画”ソーシャルネットワーク”を根に持ってるようなジョークとか)やハーバード内輪ネタ(と思われる・・・ちょっとググると出て来るのが今の時代の救いですが)も交えつつ、卒業生と10歳も離れてない立場から”僕ら世代の責任”という切り口で語る話は非常にグイグイ来る迫力がありました。
「すべての人たちが、人生に意義を感じられる目的感を持てる世界を作ろう」というテーマです。
僕らミレニアル世代なんだから、昔の世代の卒業式スピーチみたいに「自分の人生の目的を見つけよう」なんてそんなことは言われなくたって本能的にやってるでしょう?そうじゃなくて「みんながその気持を持てるようにすること」が重要なんだ・・・っていうのはなかなかパワーある話。
ケネディ大統領がNASAの清掃員さんに何やってるの?って聞いたら「人類を月に送る手伝いをしてるんです」って答えた話が好きで、そうやって「あらゆる人に”俺達はやれるんだという感覚”を持ってもらうこと」が今必要なことだ・・・っていうのは、あらゆる分断が社会を引き裂いていくこの時代に凄く重要なメッセージだと思いました。(最近、凄いのは”日本”じゃなくて単にその技術の発明者個人であって、ネットでこの記事読んでるお前じゃねーよ!とかそういう言わずもがなのことをいちいち言ってタフぶってる人がいますが、そういう人は社会というのが色んな人のサポートしあいによって成立しているってことを軽視しすぎてると思います)
他にも、最初にフェイスブックをハーバードの寮で立ち上げた夜に、今日は自分がハーバードのメンバーを繋いだが、そのうち誰かが世界中を繋ぐだろうと思ったとか。そこで「自分じゃないだろうが誰かが」と思ってちゃダメでそれ「自分が」やるんだよ!というメッセージとか。最初期のマネジメントチームと、会社を売るか売らないかで大モメにモメて、その結果、共有できる大きな目的がなかったからああなったんだと気づいたという話など、なかなかドラマチックな話が満載で飽きさせません。
なんにせよ徹底的にアメリカンに理想主義的だから、骨絡みの懐疑主義者の日本人からすると具体案に近づけば近づくほど「え、さっきの超凄い話の具体例がそれ?」って感じもあるんだけど(笑)でもそんな疑問が沸いた時点でこっちが「俺って小せえ人間かも」ぐらいになってしまうほどの徹底的理想主義の迫力みたいなのがあって圧倒されて最後まで見てしまいました。
あなたの立場によってはこれはひょっとすると偽善そのものに見えるかもしれん・・・が、「超弩級に徹底した揺るぎない偽善」は、それ自体を多くの人が「善なるもの」として必要としているメカニズムというのもあるだろうというぐらいの迫力でした。
正直この前の大統領選の候補者のどれをとってもこんなスピーチの力はなかったし、オバマ大統領のスピーチは確かに「うまい」かもしれないけど、でもこんな迫力はない気がします。
個人的には、例のスティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式スピーチ(いわゆる"stay hungry, stay foolish"演説)に匹敵する何かなんじゃないかと思って、今日は自分の本の執筆にあてるはずの日だったんですが、脳が占拠されてしまって仕事にならないので、ボランティアで日本語訳をすることにしました。
(このスピーチとは別に、ザッカーバーグの理想主義すぎるプロジェクトが若い頃有名な大コケした事件があって、それについて語りながら、アメリカだからできることと、それに対抗するために日本だからできること・・・というブログを昔書いてかなり評判だったので、よかったらあとで読んでください。→こちら)
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では以下、30分ほどのスピーチの日本語訳です。動画リンクはコチラ↓
https://www.youtube.com/watch?v=BmYv8XGl-YU
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ここに立てて嬉しいです。こんな土砂降りの中集まってくれて皆さんありがとう!ファウスト大学総長、監督委員会のみなさま、教授陣、卒業生、友人たち、そして誇らしく思っているご両親、顧問委員会のみなさま、そして、”世界で最も偉大な大学の卒業生”のみなさん!
私は今日ここにいられることを誇りに思っています。なぜって、あなたがたは僕ができなかったことを成し遂げた(中退したザッカーバーグと違って卒業したこと)んですからね!・・・このスピーチをちゃんとやりとげたなら、これがハーバードで僕がちゃんと最後までやりとげた最初の何かってことになるでしょう。
2017年クラスの皆さん、おめでとうございます!
僕はちょっと珍しいスピーカーかもしれません。いや中退したってことだけじゃなくて、僕は皆さんとだいたい同じ世代の人間ですからね。僕とみなさんは、10年も離れていない時期に同じこのキャンパスを歩き、同じ概念を学び、同じEC10の講義で居眠りした仲というわけです。
確かに違う経路を辿ってここまで来ました。もしあなたが、遠路はるばるthe Quadエリアから歩いて来た人だったりすると特にね。しかし、今日僕は「同じ僕らの世代」から学んだことについて、そして僕らが一緒に作っていくべき未来についてお話するつもりです。
でもその前に、ここ数日の出来事は色んなことを思い出させてくれました。
みなさんの中でどれくらいの人が、ハーバードからの合格通知のEメールを受け取った時にまさにどこで何をしていたか覚えていますか?
僕は、テレビゲームのシヴィライゼーションをやってて、階段を降りていくと、父親に会ったんですが、どういうことか彼がやったことは、僕がEメールを開くところをビデオに撮ることでした。そんなことして落ちてたらどうするつもりだったんでしょうね。
誓って言いますが、ハーバードに入ったことは両親が僕について最も誇りに思っていることだと思います。ほら、ウチの母親が頷いてます。
ハーバードでの最初の講義についてはどうでしょう?僕の場合は素晴らしいハリー・ルイス教授によるコンピュータ・サイエンス121のクラスで、遅れて大急ぎだったのでTシャツを逆に着ていて、背中のタグが前にあるのにも気づいてませんでした。
それで、なんで周りの人たちは僕に話しかけてくれないのかな?と不思議に思っていたんですが、KX・ジンってヤツが唯一僕に教えてくれて、おかげでちゃんと”問題は解決”できました。今彼はフェイスブック社の重要な部分を担ってくれています。
そう、だからね2017年卒のみなさん、周りの人には優しくしておいたほうがいいよ。
しかし、僕のハーバードでの最高の思い出は、プリシラ(・チャン。ザッカーバーグの奥さん)に会ったことです。
その時僕はちょうどイタズラで作ったウェブサイトのフェイスマッシュを立ち上げたところでした。そのイタズラについて、大学の顧問委員会が僕に”会いたい”と言って来て・・・まわりのみんなが僕はもう大学を追い出されると思っていました。私の両親なんかは僕の荷造りを手伝いにわざわざやってきたぐらいで。友人たちはサヨナラパーティを開いてくれたりしました。幸運なことに、プリシラはそのパーティに友達と来ていたんです。僕とプリシラはPfoho Belltower寮のバスルームで出会いました。そこでこれ以上ないくらいロマンティックな台詞を僕は言ったんです。
「ここ数日中に大学を追い出されちゃうからさ、できるだけはやくデートしよう」
みんな、この台詞、使っていいよ。
ともあれその時は退学にはならなかったんですが・・・まあ結局はあとで自分から退学することになったんだけど!
そしてプリシラと僕はつきあいはじめました。そう、あの映画”ソーシャルネットワーク”ではフェイスマッシュはフェイスブックを作る上で物凄く重要なステップだったように描かれてたけど、実際はそうでもなかったんですよ。でも、フェイスマッシュを作ってなかったらプリシラには出会えてなかっただろうと思います。そして彼女は僕の人生で最も大事な人だ。つまり、フェイスマッシュは僕がハーバードで作ったものの中でもっとも重要だったと言ってもいいかもしれないね。
私たちは、この大学で、一生モノの友達を得ます。そしてその中には家族となる者もいるでしょう。だから僕はこの場所に感謝してるんです。ハーバード、ありがとう。
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さて。
今日、僕は「目的」について話します。しかし「あなたの人生の目的を見つけなさい的なよくある卒業式スピーチ」をしたいわけではありません。僕らはミレニアル世代なんだから、そんなことは本能的にやっているはずです。だからそうじゃなくて、今日僕が話したいことは、「自分の人生の目標を見つけるだけでは不十分だ」という話をします。僕らの世代にとっての課題は、「”誰もが”目的感を人生の中で持てる世界を創り出すこと」なのです。
ジョン・F・ケネディがNASA宇宙センターを訪れた時のエピソードで僕の大好きなものがあります。ホウキを持ってる清掃員さんにケネディが何をしてるのかと訪ねたら彼はこう答えました。「大統領、私は人類を月に送る手伝いをしているのです」。
「目的」というのは、僕ら一人ひとりが、小さな自分以上の何かの一部だと感じられる感覚のことです。自分が必要とされ、そしてより良い未来のために日々頑張っていると感じられる感覚のことなのです。「目的」こそが本当の幸福感をつくるものなのです。
あなたがたは、このことが特に重要な時代に生きています。僕らの両親が卒業した時には、「目的感」は仕事や、教会や、コミュニティがたしかに与えてくれました。しかし今は、テクノロジーと自動化技術が沢山の仕事を消し去っていっています。コミュニティへの所属感も消えてきている。多くの人が取り残され、抑圧されていると感じ、その空白感をなんとか埋めたいとあがいている。
私は色々と旅をする中で、少年院や薬物中毒者の子供達の隣に座って、彼らが「もし自分の人生に何かするべきことがあったなら、学校帰りにどこかでとか・・・そしたらもっと違う人生になっていたかも」と語るのを聞きました。また、もう慣れ親しんだ仕事は戻ってこないということを理解して、次の居場所を探している工場労働者の人たちとも出会いました。
この社会を前に進めること、それが僕ら世代の課題です。新しい仕事を作るだけじゃなくて、あたらしい「目的感」をも作り出さなくちゃいけない。
カークランド寮の自室でフェイスブックを立ち上げた夜のことを思い出します。Noch’s ピザ・レストランに友達のKXと一緒に行きました。僕はこう言ったことを覚えています。「今日僕がハーバードのコミュニティを繋いだってことには凄い興奮してるけど、でもそのうち誰かが世界中の人を繋ぐだろう」。
ここで重要なことは、「自分じゃないかもしれないが、誰かがやるだろう」というこの感じです。僕らはただの大学生のガキで、業界のことは何も知らなかった。大きなリソースのある色んなデカイIT企業がいくつもあってそれぞれが色々やってる。そのうちのどこかがやるだろうと思った。しかしこのことだけは物凄く確かにわかっていたんです・・・”人々は繋がりたがってる”ということだけは。だから僕らは毎日やることをやって前に進むだけなんです。
あなたがたの多くにも、似たような話があるはずです。「誰かが起こすであろう”ある変化”」があって、そのことが自分には明確に見えているという感じが。
しかし「誰か」がやるんじゃないんです。”あなたが”やるんです。
ただ、自分の人生の目標をそこで見つけるだけでは十分ではありません。あなたは、誰か他の人にもその「人生の目標」が持てるようにしてあげなくてはいけない。
それはとても大変なことでした。
実際、僕の望みは大きな会社を作るってことじゃなくて、社会にインパクトを与えることなんです。しかし、初期から一緒にやってくれてる人たちはそのことを当然わかってくれていると思っていたので一々説明はしませんでした。
でも数年たって、ある大きな会社が僕らを買いたいと言ってきた。僕は売りたくなかった。僕はもっと多くの人を繋げたいということだけを考えていた。その時は初期の「ニュースフィード機能」を作っていたところでした。そしてこの機能を公開できたら、人々が世界を知る方法を変えることができるだろうと思っていた。
でも、初期メンバーのほとんど全員が売りたがっていました。「より大きな目的感」がないなら、会社を売り抜けることはスタートアップの夢そのものだからです。このことで会社は分裂してしまいました。ある激論の後で、ある顧問が僕に「もし今売らなかったら、一生後悔するぞ」とまで言いました。人間関係はズタズタになり、一年ほどで経営陣チームの全員が会社を去りました。
その時が、フェイスブックを経営していて一番大変な時期でした。僕は自分たちがやっていることの価値を信じていたけど、でも孤独でした。しかも悪いことに、それは僕の過ちでした。間違ってたってだけならどんなにいいか。詐欺師で、22歳の世の中がどう動いているかがわかっていないガキでした。
そして今、何年もたって、私は、それは「より大きな目的意識」がない時に起きる自然なことなんだということがわかりました。そういう「目的感」を作れるかどうかは自分たち次第なんです。それがあればみんな一緒に前に進んでいくことができる。
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