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確定申告のシーズンを終え、多くの人が会計の世界に触れ、改めて、確定申告は面倒だと感じた方も多いのではないでしょうか。実は、世界には確定申告をする必要がない国があります。
もちろん、政府が機能していないわけではありません。ヨーロッパの東欧、バルト三国のひとつエストニアは確定申告をする必要がない国です。そして、世界でも珍しい、税理士や会計士がいなくなってしまった国でもあります。
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税理士が消えた国がある!?
もちろん、不思議な事件が起こって、会計士が消されてしまった、といったようなファンタジーが起こったわけではありません。エストニアから税理士などが消えたことにはちゃんと理由があります。でもその前に、この聞きなれない国のことを簡単に紹介しましょう。
エストニアとは?
エストニアという名前を聞いて、そもそもどこにあるどんな国なのか思い出せる方はよっぽどの世界史好きか地理好きなのではないでしょうか。しかし現在、この東欧の小国に世界の注目が集まっています。
日本からも、楽天の三木谷浩史代表理事や、シスコシステムズの平井康文理事、KLabの真田哲弥幹事などの業界の有名人が視察に訪れています。
エストニアの基本情報
まずはエストニアという国について基本的な情報を確認しておきましょう。
所在地 | エストニアは東欧バルト三国のひとつで、フィンランド湾を介してロシアとフィンランドとつながっています。 |
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主要言語 | エストニア語(フィン・ウゴル語派)はフィンランド語に近い、ハンガリー語とも系統を同じくする言語です。南北で方言が分かれ、首都タリンで使われる北エストニア語が標準語とされています。 |
GDP | 名目GDPは2012年で174億ユーロ、一人当たり名目GDPは2012年で13000ユーロとなっています。 |
国土面積 | 4.5万平方キロメートル(日本の約1/9、四国の3つ分に満たない) |
人口 | 約131万人(2010年の大阪市の人口は266.5万人) |
エストニアがなければ存在しない発明 | Skype(ニコラス・センストロムとヤヌス・フリスによってエストニアの首都タリンで開発された) |
エストニアから税理士が消えた理由
日本よりも小さく、人口で言えば大阪府の半分ほどの国から、なぜ税理士が消えたのでしょうか。その理由は政府の電子化政策にあります。
先ほど紹介した楽天の三木谷浩史代表理事らがエストニアを視察に訪れた理由も、この世界でも稀に見る政府の電子化の先進性にあります。ここからは、なぜ政府が電子化すると税理士が消えるのか、その理由を紹介します。
エストニアの電子化システムX-Roadとは
現在のエストニア政府の活動を支えているのはX-Roadというクラウドコンピューティングシステムです。このデータベースには国民のありとあらゆる公的情報が蓄積されていて、全国民の預金残高まで把握することができます。
この預金残高まで把握できるシステムが鍵です。
全国民の預金の残高を把握しているため、課税額の計算を全て自動で行うことができます。そのため、国民は様々な端末から自分の納税額を確認し、承認するだけで確定申告が完了します。これらの課税処理を自動で計算することができるため、税理士に依頼することがなくなってしまいその結果、エストニアから税理士や会計士が消えてしまいました。
なぜエストニアにX-Roadが誕生したのか
なぜエストニアにX-Roadが誕生したのでしょうか。それには2つの理由があると言われています。
1つ目の理由:人的資源の希少性
1つ目は、エストニアの人的資源の希少性です。ひとつの国家を維持するためには必ず必要な職業がいくつかあります。人口が多ければ、そこに人的資源を割くことができますが、大阪府の半分ほどの人口の国を維持するためには極力必要な職業を減らさなければなりませんでした。
その結果、電子化によって政府の機能を効率化しようという動きが起こりました。確定申告の他に、エストニアでは投票も電子化されています。このシステムは2011年にはエストニアおよび、欧州議会の選挙にも用いられ、世界105カ国から、全体の24%の票を集めました。
2つ目の理由:1,500以上の島を持つ島国
島の数が多く、投票のために役所まで行くことのコストが高かったことも電子化が進んだ理由であると言われています。人口が少なく、島が多く国民を物理的に移動させるコストが高かったこと、これらがエストニア政府が高度に電子化された理由であると言われています。
職を失わない働き方とは
オックスフォード大学マーティン校で提出された研究によると、米国に存在する職業702種中、今後20年で半分が失われる可能性があるとされています。このレポートではIT化の影響を受けにくい順に1位から702位までの職業をランク付けしているのですが、税理士はなんと586位となっています。
ここからは、電子化が進んでも求められる税理士の条件とは何かをこのオックスフォード大学の研究から見てみましょう。
電子化が進んでも存在し続ける可能性が高い職業
先ほどのランキングを上から、つまりIT化しても無くならないと考えられる職業を順番に見ていくと1〜10位は次のようになっています。
2位 最前線のメカニック、修理工
3位 緊急事態の管理監督者
4位 メンタルヘルスと薬物利用者サポート
5位 聴覚医療従事者
6位 作業療法士
7位 義肢装具士
8位 ヘルスケアソーシャルワーカー
9位 口腔外科
10位 消防監督者
この結果からIT化しても失われにくい職業の条件として、次の二点が指摘できるのではないでしょうか。
・人と直接的に係る仕事(心理的な問題など)であること
・最先端の技術に関する仕事であること
つまり、電子化が進んでも働き続けるためには税理士+αの技能を持った、単なる税理士として終わらない働き方がひとつの答えの可能性である、と考えることができるのではないでしょうか。つまり、失われにくい職能と、税理士の能力を持った存在を目指すということです。
例えば4位の職業である「メンタルヘルスと薬物利用者サポート」のスキルを持った税理士になること、などです。この様に、複数のできることを持つことでたとえ電子化が進んだとしても、求められる人材であり続けることができるのではないでしょうか。
最後に
IT技術の進歩とともに、私達の暮らしは日々効率的になっています。いつの日か、日本もエストニアの様な電子化が進行するかもしれません。そんな時に、私達はどう働けばいいのでしょうか。ぜひ、考えてみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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