https://scienceportal.jst.go.jp/newsflash/20140703_04/index.html
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地球は水の惑星。いっぱいある水を資源としていかに利用するかは人類の永遠の課題である。その課題の解決に一歩近づく成果が出た。植物の光合成による水分解の仕組みを参考に、中性の水を分解して電子を取り出す「人工マンガン触媒」の開発に、理化学研究所環境資源科学研究センターの中村龍平チームリーダーと山口晃(あきら)大学院生リサーチ・アソシエイト、東京大学大学院工学系研究科の橋本和仁教授らが成功した。触媒による効率的な水分解の可能性を示す研究として注目される。6月30日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。
水分子は自然界に最も豊富に存在する電子源の1つで、水素や有機燃料の製造を担う重要な化学資源になる。自然界では、植物などがマンガンを含む酵素で水から電子を獲得し、その電子を用いて、光合成で二酸化炭素から炭水化物を作り出している。植物の水を分解する酵素の構造をまねて、水から電子を効率よく引き抜く人工マンガン触媒の開発が進められてきた。この人工マンガン触媒は、強酸や強アルカリの環境では水から電子を引き抜けるが、中性の環境では活性が大きく低下する弱点があった。
研究グループはまず、中性の環境で生体マンガン酵素と人工マンガン触媒の活性の違いを詳しく調べた。その結果、水が分解する過程(2H2O → O2 + 4e- +4H+)で、生体マンガン酵素では、電子とプロトンが同時に移動するのに対し、人工マンガン触媒では、電子がプロトンよりも先に移動することを突き止めた。
そこで、プロトン受容能力が大きい塩基の利用を思い立った。人工マンガン触媒を電極に使う反応で、塩基を水に添加して、電子とプロトンの移動タイミングを調整した。塩基として各種ピリジンで比較した。このうち、ガンマ・コリジンがプロトンを引き抜く能力が最も高かった。ガンマ・コリジンを水に加えると、中性環境(pH=7.5)での水分解活性は15倍も増え、強いアルカリ環境で得られる値の60%にまで達し、中性の水から電子を取り出すマンガン触媒として十分な活性を確かめた。
今回の成果は、豊富に存在する中性のクリーンな水を電子源として、安価なマンガンを触媒に使う低環境負荷の燃料製造に道を開くものと期待される。研究グループの中村龍平チームリーダーは「ピリジン自体が酸化分解されるので、安定性に問題があり、実用化はまだ難しい。しかし、われわれの研究で、中性の水でも電子源として利用できる可能性を示した。この反応の仕組みは、ほかの触媒にも応用できるだろう」と話している。
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