2024年1月24日水曜日

ハーバード大、充電サイクル6000回と充電時間10分を実現する全固体リチウム金属電池を開発。

https://engineer.fabcross.jp/archeive/240123_solid-state-battery.html

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ハーバード大学工学応用科学部の研究チームが、6000回以上充放電でき、約10分で充電可能な全固体型リチウム金属電池を考案した。リチウム負極活物質と固体電解質の界面にミクロンサイズのシリコン粒子を分散させることにより、充電時の負極におけるリチウム析出を均質に制御しデンドライト生成を抑制して耐久性を飛躍的に増大するとともに、平滑なリチウム析出層においてメッキ被覆と剥離プロセスを急速化することに成功したものだ。研究成果が、2024年1月8日の『Nature Materials』誌に公開されている。

負極活物質にリチウムを用いたリチウム金属電池は、一般的なグラファイト負極を用いたリチウムイオン電池に比べ10倍の容量を持ち、電気自動車の走行距離を劇的に向上できると期待されている。また、電解質に固体を用いる全固体型リチウム金属電池は、液体電解質を用いるリチウムイオン電池に対して、エネルギー密度や電池サイズの観点で優れており、電池の究極的な理想と考えられている。だが、リチウム金属電池の最大の課題は、充電時にリチウムイオンが負極に析出して形成されるデンドライトの生成だ。この構造は電解質に向けて樹枝状に成長し、陽極と陰極を隔離するセパレーターを貫通して電気的ショートや火災を引き起こし、安全性や耐久性に大きな問題となっている。

研究チームは、リチウム金属電池における負極活物質と固体電解質の界面における、リチウム化反応に関して詳細な研究を進め、全固体型電池特有の現象としてリチウム化抑制効果を発見した。界面にミクロンサイズのシリコン(Si)粒子を分散させると、Si表面におけるリチウム化が抑制され、粒子表面に薄いリチウムメッキ層が生成する。一方負極には均質で平滑な厚いリチウムメッキ層が生成し、充放電における局所的な電流密度が均等に分布することを見出した。リチウムイオン電池の液体電解質においてSiのリチウム化が激しく進展するのとは著しく異なることがわかった。その結果、リチウムのデンドライト生成が防止されて電池の安全性耐久性が顕著に向上し、電流密度均等化に起因して充放電に対応する析出リチウム層のメッキ被覆と剥離が高速で生じることが確認された。

研究チームは、一般的に大学の実験室で試作されるコインサイズより大きいポーチセル電池を試作し、6000サイクル後も80%の容量を維持し、現在市販されているポーチセル電池よりも高性能であることを確認した。更に、負極における析出リチウム層のメッキ被覆と剥離が高速になることで、電池の充電に要する時間はわずか約10分となった。現在、ライセンス供与されたスピンオフ企業Adden Energyにおいて、スマートフォンサイズのポーチセル電池作成を試みている。研究チームは、安全で耐久性が高く、エネルギー密度や容量の大きい、短時間充電が可能なコンパクトな電池設計が可能になり、将来的には電気自動車を中心とした工業的応用に発展することを期待している。

関連情報

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