2024年1月15日月曜日

65W版はどこまで使える?「Core i9-14900」から「Intel 300」まで、“Kなし第14世代”を一気にテスト。加藤 勝明2024年1月9日 14:40 

https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hothot/1559414.html


 2024年1月9日、インテルはCoreプロセッサ(第14世代)の新モデルを発表し、グローバルでの販売も解禁となった。この新モデルはすべてPBP(TDP)が65W以下で倍率ロック版であり、CPUクーラーも標準で付属する。俗に言う“Kなしモデル”である。先にKつきモデルが発売され、年明けにKなしモデルが発売されるのがここ数年のインテル製CPUの登場パターンだが、第14世代も同パターンでの展開となった。

 本稿執筆時点では国内販売価格は不明だが、さまざまな情勢から予想される国内販売モデルは下表の通りとなる(ただしバルク販売前提と思われる“Tつきモデル”は除外する)。第13世代のKなしモデルと同様に、国内市場には入ってこないモデル(Core i5-14600/14600F)も存在するだろう。

 また、今回よりPentium/ Celeronがラインナップから外れたが、そのかわりに「Intel 300」なる新モデルが追加された。Kつきモデルに比べるとPBPが65Wと低く、クロックも下げられている。Core i9-14900Kは最大ブーストクロックが6GHzだったのが売りだったが、Core i9-14900では5.8GHzに抑えられている。

モデル名コア/ スレッド数PコアEコア最大ブーストクロックベースクロックPBP国内価格
Core i9-1490024C/ 32T8165.8GHz2GHz65W10万4,800円
Core i9-14900F24C/ 32T8165.8GHz2GHz65W10万800円
Core i7-1470020C/ 28T8125.4GHz2.1GHz65W7万1,800円
Core i7-14700F20C/ 28T8125.4GHz2.1GHz65W6万8,800円
Core i5-1450014C/ 20T684.7GHz2.6GHz65W4万3,800円
Core i5-1440010C/ 16T644.7GHz2.5GHz65W4万1,800円
Core i5-14400F10C/ 16T644.7GHz2.5GHz65W3万6,800円
Core i3-141004C/ 8T404.7GHz3.5GHz60W2万5,800円
Core i3-14100F4C/ 8T404.7GHz3.5GHz58W2万1,800円
Intel 3002C/ 4T20--3.7GHz46W1万6,800円

↑第14世代のKなしモデルのスペックと実売価格。バルク版しかないT付きモデルは除外している。Core i5-14500のみFつきがない

 今回筆者は幸運にも第14世代のKなしモデル5製品(Core i9-14900/ Core i7-14700/ Core i5-14400/ Core i3-14100/ Intel 300)を試す機会に恵まれた。前世代と比べどう性能が変化したのだろうか? 新旧比較を通じインテル製CPUの立ち位置を改めて確認してみたい。

今回入手した「Core i9-14900」のパッケージ。第13世代との違いは「14TH GEN」の文字程度で、デザインに大きな変更はない
第14世代では唯一コア数が増えたCore i7-14700Kの弟分といえる「Core i7-14700」のパッケージ
Core i9→i7→i5とCPUのグレードが下がるにつれパッケージの色味も薄くなる。今回はCore i5-14500をお借りすることができなかったため、その下のCore i5-14400をテストする
Core i3-14100のパッケージ。Coreプロセッサとしてはこれが最廉価という位置付けになる
PentiumやCeleronブランドが消滅するかわりに投入されたIntel 300
KのないモデルなのでCPUクーラーが同梱される。Core i9-14900/ 14900Fには「Laminar RH1(左)」、それ以外のモデルには「Laminar RM1(右)」が同梱される。既存のKなしモデルと設計的に変わった様子はない
Core i9-14900の表面。既存のLGA1700ベースのCPUと共通だ
「CPU-Z」を利用して情報を拾ったところ。24C32Tというコア/スレッド数はPBP 65WのCPUとしては最多。プロセスルールは10nm(Intel 7)、B0ステッピングである点もCore i9-14900Kと同じである
Core i7-14700の表面
同じくCPU-ZによるCore i7-14700の情報。Pコア1基あたりのL2キャッシュが2MBという点に注目。これもB0ステッピング
Core i5-14400の表面
Core i5-14400の情報。L2キャッシュがPコア1基あたり1.25MBなので設計的にはAlder Lake-S相当であることを示している。さらに、今回受領したレビュー用サンプルは「B0」ステッピングだった
Core i3-14100の表面
Core i3-14100にはEコアはない。こちらもL2がPコア1基あたり1.25MBなので、実質Alder Lake-Sである
Intel 300の表面
Intel 300の情報。2C4Tなので第13世代でいうPentium Gold G7400に相当する製品であることが分かる。こちらもAlder Lake-Sベースの製品だ
Core i9-14900〜Core i3-14400までは、裏面のランド配置やキャパシタの搭載パターンは共通となる
Core i3-14100とIntel 300、即ちH0ステッピングのモデルは上位とは異なるキャパシタ配置となる

 現行執筆時点では筆者の手元にインテル公式のスペック資料が届いているわけではないため、クロックについての言及は避ける。ただ第13世代のKつき&Kなしのポジションをそのまま継承していると思われるため、第13世代のKなしモデルと第14世代のKなしモデルの差異はほとんどないと思われる。唯一の例外はCore i7-14700で、これはEコアがCore i7-13700より4基だけ増えている。

 また、Core i5-14400より下のモデルはL2キャッシュの容量から今回も引き続きAlder Lake-S相当の設計であると推察される。ゆえにメモリクロックもCore i5-14400以下のモデルではDDR5-4800またはDDR4-3200が上限となる。LGA1700も今世代で終わりなのでそろそろ下位にもRaptor Coveが来るかも……と考えていた人には残念極まりないニュースといえるだろう。

 さて、インテルはCoreプロセッサ(第14世代)において、第14世代の付加価値を高めるために新機能を搭載した。PコアとEコアの使い分けが上手くできないPCゲームに対し、コアの振り分けをソフトウェア的に介入する「Intel Application Performance Optimization」、通称「APO」と呼ばれる機能だ。

 マザーボード側のBIOSで「Intel Dynamic Tuning Technology(DTT)」を有効化し、Windows上でDTTドライバを利用することで利用可能になる機能だが、今回の検証時点ではCore i9-14900およびCore i7-14700ではAPOは動作しなかった。

 BIOSかDTTドライバの問題、もしくはKなしCPUはAPOの動作対象外だからなのかは不明だが※、現時点では第14世代の独自機能の1つが封じられていることを意味する。APOで恩恵を受けるゲームはごく少ない技術ではあるが、第14世代をあえて買うメリットを1つ減らすことになるので非常に残念だ。

※後日APOの対象を調査し、付記する予定

APOのフロントエンドアプリ(Microsoft Storeで入手可能)を導入するとAPOが利用可能なCPUではこんな表示になる。図はCore i9-14900Kを使用した際のもの。APOの有効・無効化をBIOSを変更せずに実施できる
Core i9-14900環境ではDTTドライバを導入してもAPOは有効になっていないようだ。これがDTTドライバの更新で有効にできるのかは現行執筆時点では不明

新旧13モデルで比較する

 今回はCore i9-14900を筆頭とするKなしモデルの性能を、同じ第14世代のKつきモデルおよび第13世代のKなしモデルと比較する。

 検証環境は以下の通りだ。Core i9-14900Kという怪物級に消費電力のデカいCPUがいる関係でマザーやCPUクーラーは下位モデルには過剰なスペックのものとなってしまったが、パフォーマンス比較が目的であるためCPU以外はすべて統一した。メモリクロックはCore i7-14700およびCore i7-13700より上のモデルについてはDDR5-5600、Core i5-14400およびCore i5-13400より下(つまりAlder Lake-S相当)のモデルにおけるメモリクロックはDDR5-4800に設定している。

 また、CPUのPower Limit(PL1/PL2)周りの設定は無制限(BIOSのデフォルト設定準拠)とし、Resizable BARやSecure Boot、コア分離やWindows HD Color(HDR)といった機能はすべて有効としている。

【検証環境】
CPUCore i9-14900K、Core i9-14900、Core i7-14700K、Core i7-14700、Core i5-14600K、Core i5-14400、Core i3-14100、Intel 300」
Core i9-13900、Core i7-13700、Core i5-13400、Core i3-13100、Pentium Gold G7400
CPUクーラーASUS 「ROG RYUJIN II 360」(AIO水冷、360mmラジエーター)
マザーASUS 「ROG MAXIMUS Z790 HERO」(Intel Z790、BIOS 1801)
メモリMicron「CP2K16G56C46U5」(16GB×2、DDR5-5600)
GPUNVIDIA「GeForce RTX 4080 Founders Edition」
ストレージMicron「CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe 5.0)
電源ユニットSuper Flower「LEADEX PLATINUM SE 1000W-BK」(80PLUS Platinum、1,000W)
OSMicrosoft「Windows 11 Pro」(23H2)

予想通りの性能差

 ではCPUの馬力テストとして「Cinebench 2024」で検証しよう。ここではCPUによるCGレンダリング性能だけをチェックし、GPUテストは使用しない。10分のウォームアップを経てスコアを出すモードで計測している。

Cinebench 2024:スコア

 まずマルチスレッドテストのスコアを見てみよう。予想通り第14世代のKなしモデルのパフォーマンスはKつきモデルよりもわずかに下であり、第13世代のKなしモデルよりも微妙に上、という位置付けになった。ただCore i7-14700は14700Kのすぐ下の性能だが、13700よりも15%以上マルチスレッドのスコアを伸ばしているが、これは第14世代のCore i7はEコアが増量されているためだ。

 ただし、このスコアは空冷クーラー前提のPL1/PL2を絞った設定では、もっと違う様子になると予想される。ここで示した結果は“各CPUを最大限に頑張らせた際の性能差”と考えるのが良いだろう。

 一方シングルスレッドテストのスコアに関しても同様の傾向が見られる。第14世代のKなしモデルは第13世代のKなしモデルよりパワーアップしているが、その差はさほど大きくない。特に実質Alder Lake-SのCore i5-14400より下のモデルはそれが顕著だ。

 第12世代のKなし→第13世代のKなしの性能差も小さいことが筆者の経験上分かっているので、総合すると今回のKなしモデルは大半が既存モデルの仕切り直し色が濃い。ただCore i7-14700は旧世代のCore i5-12400や13400あたりからの乗り換え先としては、パワフルで魅力的な存在と言えなくもない。

 またIntel 300に関しては、(おそらく)値段なりの性能といえる。AMDのSocket AM4/AM5用の安価なCPUがほぼ壊滅状態(=手厚い保証の受けやすいショップでは買えない)であることを考えると、Intel 300やCore i3-14100は低予算PCとしては十分魅力的な戦力といえる。

 もう1つCG系のベンチマークとして「Blender Benchmark」を試してみよう。Blenderのバージョンは“4.0.0”とし、3つのシーンをレンダリングした際のパフォーマンスを比較する。

Blender Benchmark:スコア

 こちらもCinebench 2024と同傾向の結果となった。今回はCore i5-14500をお借りすることができなかったためCore i5-14600KとCore i5-14400の性能に大きな隔たりがあるが、Raptor Lake-SがベースのCore i5-14500は両者の中間に位置するCPUになると予想される。

 続いてはPCの総合的パフォーマンスを見る「CrossMark」を使用する。総合スコア(Overall)の他に、テストグループ別のスコアも比較する。

CrossMark:スコア

 4本のバーを全部見ようとすると情報の多さに戸惑うだけだが、ある一色のバーに注目して上限関係を見ると分かりやすい。ここでも第14世代のKなしモデルは第13世代のKなしよりも微妙に強いが、ここではCore i7-14700は13700に対し圧倒的に強いというわけではない。CPU負荷が総じて低めのテストを繰り返すベンチマークなだけに、Eコアが増えたCore i7-14700のメリットが数値化されにくくなったと考えられる。

クリエイティブ系の処理でも僅差にとどまる

 「UL Procyon」は「Photoshop」「Lightroom Classic」を実際に動かしてパフォーマンスを見る“Photo Editing Benchmark”を使用した。総合スコア(Photo Editing)の他に、テスト別のスコアも比較する。

UL Procyon:Photo Editing Benchmarkのスコア

 テストによっては若干序列が入れ替わっている部分があるが、全体傾向は変わらず。Photoshopをメインに使うImage Retouchingでは第14世代であればCore i5-14600Kより上、第13世代であればCore i7-13700より上では若干頭打ち気味になっているが、これはすべてRaptor Lake-Sベースであり、Alder Lake-SベースのCore i5-14400以下および13400以下とはスコアに大きな隔たりがある。Alder Lake-Sベースになるとコア数が減るのでスコアが減るのは当然ともいえる。

 また、Lightroom Classicをメインで使うBatch Processingに関しても似たような傾向。第14世KつきとKなしは差が小さいが、Kなし前提のCore i5-14400以下はスコアが伸びないようだ。

 CPUを利用した動画エンコード性能は「Handbrake」でテストした。再生時間約3分の4K@60fps動画に対し、Handbrakeプリセットの「Super HQ 2160p60 4K HEVC Surround」および「Super HQ 1080p30 Surround」を利用して4K@60fpsのH.265動画とフルHD@30fpsのH.264動画にエンコードする時間を比較する。

Handbrake:エンコード時間

 H.264よりH.265の計算量が多いため、下位モデルほど処理時間が長くなる。ただコア数の少ないIntel 300とPentium Gold G7400を比較すると、Cinebench 2024(マルチスレッド)のスコア差(Intel 300が1%程度優勢)を大幅に超える差になった。

 ただ1回のテストランで半日以上(Pentium Gold G7400の場合)かかるため、時間的制約からこの差が妥当かどうかまでは検証しきれていない。H.264のエンコード結果はざっくり5%程度の差に収まっている。

 そのほかのCPUの結果を見ると、特にこれまでの観測に反するような結果は出ていない。Core i7-13700とCore i9-13900、Core i7-14700とCore i9-14900それぞれのペアを比較すると、後者の方が差が詰まっているが、これはEコアが増量されたCore i7-14700のマルチスレッド性能の高さを裏付けるものだ。なるべく手頃な価格でコア数が欲しいのであれば、Core i7-14700はオススメできるチョイスといえるだろう。

ゲームでも僅差。消費電力的には……?

 ここからはゲームのフレームレートを比較する。RTX 4080のパフォーマンスが、CPUのチョイスによりどの程度上下するかに注目したい。これまでの検証で観測されたCPUのパフォーマンスとフレームレートはある程度連動することが予想される。

 ここでの検証はすべて解像度フルHD、画質は最低設定としGPU側のボトルネック発生を極力抑えている。ゲーム内のベンチマーク機能の有無に関係なく「CapFrameX」を利用して実フレームレートを計測している。

 まずは「Call of Duty」で試す。画質は“最低”、アップスケーラーはオフ、レンダースケール(RS)は100%とした。「Modern Warfare III」に付属するゲーム内ベンチマーク機能を再生中のフレームレートを計測した。

Call of Duty:1,920×1,080ドット時のフレームレート

 平均350fpsよりやや下で頭打ちになっているように見えるのは、これはCPU側の限界だ(これを見るために画質を下げている)。だがその限界も下のグレードに行くほど下がり、Core i5-14400や13400で急激に落ち込む。Core i5-14600KもKなしのCore i7-14700に比べると30fps以上平均フレームレートが下がってしまうため、COD的にはCore i7-14700より上がCPUが足を引っ張らない最低ラインと考えることができる(CPUの最適解はRyzen 7 7800X3Dであることは疑いの余地はないが……)。

 Core i5-14400/13400より下のモデルが遅い理由は、アーキテクチャがAlder Lake-Sであることだ。特に最低フレームレートの落ち込みが激しく、ゲームのカク付きという点からもCore i7以上の上位モデルに大きく劣っている。

 続いてはCPUリソースをかなり食う「Cyberpunk 2077」での検証だ。画質は“低”とし、FSR 2はオフとした。内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。

Cyberpunk 2077:1,920×1,080ドット時のフレームレート

 Core i9-14900Kがトップで、Kなしの14900はわずかに平均フレームレートが落ちる。同様にCore i7-14700K→14700と少しずつ下がっていき、Core i5-14600KとCore i5-1440で大きく下がる。Core i5-14500が入手できなかったためCore i5-14600Kと14400の落差が非常に大きく感じられるが、Cyberpunk 2077でもPコア8基以上のCPUを使うのが好ましい、という点は分かっただろう。

 そして第14世代と第13世代のKなし比較でいえば、Core i7-14700は13700に対しかなり強化されただけでなく、Core i9-13900にも迫る性能を見せている。

 続いては「F1 23」で検証する。画質は“超低”とし、異方性16x、アンチエイリアスはTAA&FidelityFXに設定。内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。

F1 23:1,920×1,080ドット時のフレームレート

 ここではKつきとKなしの差は最低フレームレートの微妙な差に表れているようだ。Kつきよりもクロックが抑えられているためと考えられる。また、Core i5-14400とCore i3-14100、Core i5-14400とCore i3-14100のように、CPUが完全に律速になって頭打ちになっている点にも注目。コア数が足りてないか、そもそもメモリ帯域が足りないのかは不明だが、コアのルーツがどちら(Raptor LakeかAlder Lakeか)にあるだけで大きく違うことは覚えておきたい。

 最後に「Mount & Blade II: Bannerlord」で検証しよう。Battle Sizeを最大の1000に、キャラのアニメーションもHighに設定したが、画質は“Very Low”である。内蔵ベンチマーク再生中のフレームレートを計測した。

Mount & Blade II: Bannerlord:1,920×1,080ドット時のフレームレート

 これまで観測してきたゲーム検証と傾向は同じだ。第14世代のKなしモデルはKつきモデルにやや劣る。Kつきモデルが予算範囲内にあるのであれば、無理にKなしモデルを買う必要はないだろう。特に今回は全CPUを360mmのAIO水冷で冷やしているため、同梱のクーラーや普及帯価格の空冷クーラーを使うのであれば、Kなしのパフォーマンスはもっと下がる可能性はある。

消費電力はKなしの方が高い

 第14世代のKつきモデル、特にCore i9-14900Kの消費電力は非常に大きいことが分かっている。ではKなしモデルはもっと大人しいのであろうか? 消費電力の検証に入ろう。

 ここでは前掲のHandbrakeによるエンコード(Super HQ 1080p30 Surround)時に、実際どの程度の電力が消費されるのかをHWBusters「Powenetics v2」を利用して計測した。ここで計測するのはCPUの実消費電力であり、システム全体の消費電力ではない点に注意されたい。次のグラフは、エンコード中の平均値と最大値のほかに、99パーセンタイル(99%ile)点も比較する。また、アイドル時どは文字通りだが、3分間放置した際の平均値を掲載している。

CPUの消費電力:アイドル時およびHandbrakeによるエンコード時の比較

 Kなしの方が省電力なのだろうと考えていたが、実際はその逆でKなしの方が高かった。特にCore i9-14900は14900よりも平均値でも20W以上高いという点は衝撃的だ。ただ99パーセンタイル点はK付きと大差ない、という点を考えるとどこかで頭打ちにされつつもクロックを上げるために電力をたくさん使うという感じで動いていると考えられる。

 その一方でCore i7-14700と14900Kの場合は平均値も99パーセンタイル点も14700の方が高い。フルロード前提の場合は今回のKなしモデルはかなり見劣りすると言わざるを得ない。

 CPUがフルロード前提でない、たとえばゲーム中の消費電力はどうだろうか? 前掲のゲームベンチマーク中にも、Powenetics v2でCPUの消費電力(平均値)を取得したので、それも見ておこう。

CPUの消費電力:ゲーム4本のベンチマーク中における平均値の比較

 全コアを全力で回すような使い方だと、今のインテル製CPU(特に8コア以上)は消費電力が著しく増大する傾向があるが、ゲームでは使わないコアも相応に増えるため消費電力はぐっと低くなる。

 ただゲームグラフィックスの描画処理においても、所々KなしがKつきの消費電力を上回ってしまう局面が見られた。特にCPU負荷の高いMount & Blade II: BannerlordではHandbrakeによるエンコードと同パターンが観測できた。Core i7-14700に至ってはすべてのゲームにおいてKなしの消費電力がKつきよりも大きくなることが確認できた。

 ただこの逆転現象はすべてのCore i9-14900やCore i7-14700に対して言えるとまでは断言できない。今回の検証個体の癖である可能性も捨て切れてはいない、という点だけは記しておきたい。

パフォーマンスは想定通り。消費電力的にはかなり難あり

 以上で第14世代のKなしモデルの検証は終了だ。PBP 65W(以下)に抑えたとはいえ、CPUパフォーマンスは既存の第14世代Kつきモデルよりやや遅い程度。既に第13世代のCPUから乗り換えるほどの差はないが、たとえばCore i5-13400や12400からCore i7-14700へ、といった格上げを含めた形ならアップグレードする意味はある。

 ただ廉価版のCore i5-14400以下のモデルは旧世代そのままの設計でクロックを引き上げただけであるため、価格面でメリットがなければ選ぶ必要性は感じられない。Core i5-14400と13400が選べる環境なら値段だけで選んでも問題はないだろう。Intel 300については……とりあえず安くLGA1700で動かしたい人向けといえる。

 今回の検証でとにかく残念だったのは、Core i7-14700とCore i9-14900の消費電力だ。今回Kつきモデルに合わせて電力制限なしで動かしているとはいえ、CPUをフルロードさせるとKつきよりも消費電力が大きくなってしまったのはいただけない。ただしKなしモデルも安めのB760マザーなどで電力制限をつけて動かした場合はもっと違う結果になるとは思われる。CPUとしてのトータル性能ではKつきに劣るが、その分CPUクーラーも付属している廉価版、という捉え方をすべきだろう。

 今回時間的な制約でインテル製CPUとしか対決させることはできなかったが、DOS/V POWER REORT 2024年冬号(最終号)に掲載されているCPU一斉比較と条件を揃えているので、AMDプラットホームとの差が気になる方は、ぜひ突き合わせていただけるとさらに理解が深まるだろう。Call of Dutyは大きく条件が変化した(ゲーム側の問題)ため直接比較はできないが、ほかのテストCinebench 2024やHandbrake、消費電力などはほぼそのまま比較に使用できる。

 ちなみに今回インテル製CPUはパフォーマンス向上が含まれるBIOSに変わっているため、誌面のデータとはかなり様相が異なる点も書き添えておきたい。

Kなし第14世代のIntel新CPUをライブ配信でも解説!

 1月10日21時より、“Kなし第14世代”のIntel新CPUを解説するライブ配信を実施します。Core i9-14900からIntel 300まで取りそろえて仕様、特徴、性能まで解説。一部のモデルでの実動デモも予定しています。解説はKTU・加藤勝明氏。MCは改造バカ・高橋敏也氏(ライブ配信終了後は即アーカイブを視聴できます)

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