2024年1月22日月曜日

「ダイヤNV中心の配向」「グラフェン半導体」 量子動向。京大などが光量子回路で「非フォック状態」生成、効率的な光量子計算に寄与。2024年1月22日 5:00

https://www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC182OZ0Y4A110C2000000?n_cid=NPMTF000P_20240122_a19

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量子に関する注目動向をダイジェスト形式でお届けします。

京大などが光量子回路で「非フォック状態」生成、効率的な光量子計算に寄与

京都大学などの研究グループは、複数の光子による量子状態の生成に成功した。より効率的な光量子コンピューターや光量子シミュレーション、高感度光量子センシングの実現につながるとしている。
広島大学と共同で研究した。複数の経路(モード)に複数の光子が存在する「多光子多モード状態」と呼ばれる量子状態を実現し、その状態を効率的に検証する方法の提案及び実証を行った。具体的には、単一光子源と線形光学素子のみでは実現できなかった多光子多モード状態「非フォック状態」の存在を理論的に明らかにし、独自に開発した光量子回路で最も本質的な非フォック状態「iNFS」を生成した。また、iNFSに特徴的な性質を利用した検証方法を発案し、生成した状態がiNFSであることを実証した。今後は、この方法を用いて、より大規模な多光子多モード状態の実現を目指すとともに、今回開発した光量子回路のオンチップ化に取り組む。
〈関連論文〉
Realization of photon correlations beyond the linear optics limit
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adj8146
〈詳細情報〉
https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/research/topics/20231223

京大などがダイヤモンドのNV中心配向制御に新手法、結晶成長後に形成可能

京都大学などの研究グループは、ダイヤモンドに優先配向した窒素空孔(NV)中心を直接書き込むことに成功した。ダイヤモンド量子デバイス製造の新手法として活用できるという。
神戸大学と共同で研究した。研究チームはまず、ダイヤモンドにおけるNV中心形成がレーザー偏光方向の影響を受けることを、時間依存密度汎関数法(TDDFT)に基づく計算で確かめた。その上で、かねて研究していた超短パルスレーザーを使い、結晶成長後のダイヤモンドにNV中心を形成した。NV中心の配向方向を確認したところ、配向率は最大55%と、ランダム配向時の25%と比べて大幅に向上した。現在、NV中心の配向制御は化学気相成長法(CVD)によるダイヤモンド結晶成長時しかできず、結晶内の任意の位置に配向制御したNV中心を形成するプロセスが求められいたという。今後は、パルス幅などレーザーの条件を最適化することで配向率をさらに改善する。
〈関連論文〉
Laser writing of preferentially orientated nitrogen-vacancy centers in diamond
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2667056923000731
〈詳細情報〉
https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/research/topics/20231226

九大などが五重項状態の量子コヒーレンスを室温観測、4量子ビットとしての利用に期待

九州大学などの研究グループは、量子ビットとして利用できる「五重項状態」の量子コヒーレンスを室温で観測した。五重項状態を量子ビットとして用いるための材料設計指針が得られたという。
神戸大学と共同で研究した。五重項状態は、1分子の励起一重項状態から2つの励起三重項状態が生成される過程で生じるスピン状態である。スピン偏極した4つの電子スピンを持つことから、単一電子スピンを用いる量子ビットより高度な4量子ビットとして期待されている。だが、これまで五重項状態の量子コヒーレンスを室温で観測した例はなく、分子設計の指針も分かっていなかった。研究チームは、一重項分裂を起こす色素を多孔性金属錯体(MOF)に高密度に組み込み、その運動性を抑制することで、五重項状態の生成と量子コヒーレンス観測が可能になることを確認した。
〈関連論文〉
Room-temperature quantum coherence of entangled multiexcitons in a metal-organic framework
https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adi3147
〈詳細情報〉
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1021/

阪大などが極性相転移示す超電導材料、量子コンピューター素子やスピントロニクス材料に

大阪大学などの研究グループは、極性-非極性構造相転移を示す超電導材料の合成に成功した。量子コンピューター素子や革新的なスピントロニクス材料としての利用が見込めるという。
名古屋大学や岡山大学と共同で研究した。ストロンチウム(Sr)、金(Au)、ビスマス(Bi)から成る化合物SrAuBiの単結晶を合成し、214K(ケルビン)での極性-非極性構造相転移と、2.4Kでの超電導転移を観測した。この物質の超電導特性を調べるために超電導転移温度の変化を0.2K付近の極低温まで測定したところ、面間磁場において、従来型超電導体でのパウリ極限を超える5T(テスラ)の超電導臨界磁場が実現することなどを確認した。表面超電導の存在を示唆する結果が得られたとしている。従来、超電導は、空間反転対称性を破る極性構造相転移と相性が悪いと考えられていた。
〈関連論文〉
Superconductivity in a ferroelectric-like topological semimetal SrAuBi
https://www.nature.com/articles/s41535-023-00612-4
〈詳細情報〉
https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2024/20240105_2

ジョージア工科大などが「世界初」のグラフェン機能性半導体、小型・高速な電子デバイスに有効

米Georgia Institute of Technology(ジョージア工科大学)などの研究グループは、グラフェンを材料とする機能性半導体を「世界で初めて」(研究チーム)開発した。量子コンピューティングへの応用が期待できるとしている。
「世界で初めて」グラフェンで機能性半導体を開発した(写真:ジョージア工科大学)
中国・天津大学と共同で研究した。半導体の制御を行うためにはバンドギャップが必要となるが、グラフェンにはバンドギャップが存在しない。そこで今回、炭化ケイ素(SiC)ウエハー上に単層グラフェンを作製した。エピタキシャルグラフェンがSiCと結合すると、半導体特性を示した。グラフェンは、炭素原子1個分の厚さを持つシート状の物質で、極めて高い強度と優れた電気伝導特性を持つ。グラフェン半導体が実現すれば、小型、堅牢(けんろう)、高速な電子デバイスの開発が期待できる。
〈関連論文〉
Ultrahigh-mobility semiconducting epitaxial graphene on silicon carbide
https://www.nature.com/articles/s41586-023-06811-0
〈詳細情報〉
https://research.gatech.edu/feature/researchers-create-first-functional-semiconductor-made-graphene
(ライター 加藤樹子)

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