2024年2月27日火曜日

先端半導体材料「ほぼ日本で調達できず」 微細化課題 2024年2月27日 5:00

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC137L50T10C24A2000000/


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日経クロステック

「高性能な材料は(ほぼ)日本では作られていない。日本には優れた材料サプライヤーが多数いるが、日本の微細化が止まっていたからだ」

こう語るのは、台湾積体電路製造(TSMC)の子会社であるJASM (熊本県菊陽町)社長の堀田祐一氏である。2023年12月、半導体の国際展示会「セミコン・ジャパン」の壇上で明かした。国内でJASMやラピダスなどによって先端・準先端の半導体製造が加速する一方、材料の調達は今後の課題になりそうだ。

国内のロジック半導体工場では、最先端工場でも、現状、40ナノメートルのプロセスノードまでしか製造していない。この状況を打破するため、日本政府は21年ごろから準先端・先端品の国内製造を推し進めてきた。JASMの熊本工場では28/22ナノメートルおよび16/12ナノメートルプロセスという準先端品を手掛ける。

JASMは21年の設立後、22年に熊本工場の起工式を行った。量産開始は24年12月を予定する。そのため、「非常に短期間に台湾の(TSMCの)姉妹工場から技術移管する」と堀田氏は説明する。

材料シェアが高い日本も、先端材料は海外に

だがここで、これまで40ナノメートルプロセス以降の半導体を手掛けていなかった痛手が大きく出た。JASMでの工場稼働に向けては、製造装置だけでなく材料の調達も欠かせない。シリコンウエハーのような直接材料だけでなく、フォトマスクやフォトレジストのような間接材料も含まれる。

「材料はTSMCの姉妹工場と同性能・同品質のものを使う必要があるが、国内調達できる間接材は現状、25%に留まっている。高性能な材料は日本でなく、むしろ台湾で現地製造している場合が多い」(堀田氏)と語る。

英調査大手のオムディアによれば、日本の半導体材料の世界シェアは21年度時点で約半分を占める。ただ、日本の材料メーカーは、準先端/先端工場の周囲に拠点を設け、現地製造している場合が多い。さらに、フォトマスクのような間接材は半導体メーカーが内製する場合が多く、TSMCも例に漏れない。このような状況から、40ナノメートルプロセス以降の半導体工場が不在の日本国内では、現地調達が難しかった。

JASMは24年末の量産開始以降、「間接材の現地調達率を26年に50%、30年までに60%に引き上げる目標」(堀田氏)と意気込む。その実現のため、TSMCの既存サプライヤーに加え、23年11月末時点で120社以上と新たに取引を開始したという。

政府は材料技術の海外流出防止へ急ぐ

経済産業省が21年以降、半導体の国内製造を促進する意義の1つは、半導体材料や装置の分野で「今後も日本の強みを維持すること」(同省幹部)にある。半導体工場の周囲には材料/装置メーカーの拠点が集まる傾向にあるが、国内に先端工場がない状況が続けば、海外への技術流出が起こる懸念があるという考えである。実際に今回、日本に先端材料がほぼない状況が明るみに出た。

先端半導体材料の国内調達は、これから重要な課題になりそうだ。日本国内では今後数年で準先端/先端品の工場が複数立ち上がってくる。例えば27年にはラピダスの北海道工場や、SBIホールディングスと台湾・力晶積成電子製造(PSMC)による宮城工場が稼働開始の予定である。特にラピダスはTSMCのような既存サプライヤーがいない。エコシステム確立は急務である。

(日経クロステック/日経エレクトロニクス 久保田龍之介)

[日経クロステック 2024年2月8日付の記事を再構成]

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