https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ne/18/00007/00202/
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パワーデバイス材料は一般にバンドギャップが広いほど優れた特性を持つ傾向にある。そのため、炭化ケイ素(SiC)のバンドギャップエネルギー(3.3eV)を大きく上回る窒化アルミニウム(AlN、約6eV)、立方晶窒化ホウ素(c-BN、約6.5eV)、ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2、約4.6eV)は、出色の材料といえる(表1)。一方、これらの材料には克服すべき課題が数多く残っており、研究ステージがダイヤモンドなどの他のウルトラワイドバンドギャップ(UWBG)半導体と比べて大きく後れているのも事実だ。実用化の成否は、圧倒的なポテンシャルを引き出せるか否かにかかっている。
AlN
トランジスタ動作に初成功
AlNは、窒化ガリウム(GaN)や窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)の延長線上にある窒化物半導体であり、パワーデバイスや発光素子としての研究が進んでいる。これまでトランジスタとして動作した研究報告例は、AlN材料を長年研究してきたNTTによればなかったという。
こうした中、NTT物性科学基礎研究所 多元マテリアル創造科学研究部 薄膜材料研究グループが「世界初」(同社)となるAlNトランジスタの動作を実現したと2022年4月に発表した(図1)。
開発のポイントはAlNに電子を注入しやすくした点である。MOCVD(有機金属気相成長法)での組成制御によって、電極とAlN層の間に組成傾斜AlGaN層を形成した。金属とAlNを直接接続するとバリアー(エネルギー障壁)が高く電子注入が困難になるが、連続的に組成が変わるAlGaN層を設ければ、バリアーが低くなりオーミック特性を確保しやすくなる。アルミニウム(Al)比が50%から100%に傾斜するよう組成制御した。
動作検証の結果、リーク電流が極めて小さく、かつ絶縁破壊電圧が1.7kVと非常に大きいことを確認した。500℃の高温下でも動作したという。
NTTは、それまで絶縁体として扱われてきたAlNを2002年に世界で初めて半導体化に成功した、いわばAlN研究の先駆者である。今回の開発はAlN研究の中で新たなマイルストーンとなる。
ただし、作製したデバイスはごく初期的な構造をとったものであるため、実際に動作したとはいえ、AlNパワーデバイスは現状実用化からほど遠い状況にある。「社会実装を目指すにはNTT単独でなく、高度な技術を持つデバイスメーカーや他の研究機関などとの連携が必要となるだろう」(NTT物性科学基礎研究所 上席特別研究員の谷保芳孝氏)と語る。本成果をきっかけにAlNパワーデバイスの可能性を広く認知させ、研究を盛り上げていきたいという。
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