2024年2月28日水曜日

誤り訂正に新方式のハードウエアでは40〜48論理量子ビットの誤り訂正、量子コンピューティングは新時代へ 光量子コンピューターや半導体量子コンピューターといった新しいハードウエアへの投資が加速する。24年展望 Expert Foresight「量子」 blueqat代表取締役 湊雄一郎氏 デジタル グローバルトレンド Expert Foresight IT 電機 AI 寄稿 2024年2月28日 5:00

https://www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC275GL0X20C24A2000000?n_cid=NPMTF000P_20240228_a16

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    ハーバード大学やキュエラ・コンピューティングによる誤り訂正は業界に衝撃を与えた(写真:キュエラ・コンピューティング)
    量子コンピューティングの世界では現在、大きな変化が起きている。これまでは不完全な量子コンピューターに、現行の古典コンピューターを組み合わせる方式の開発競争が進んできた。しかし、エラー訂正技術の発展で今後はその状況がリセットされ、新しい段階に進もうとしている。
    湊氏は誤り訂正技術やGPUによる量子計算の発展に期待する
    これまでの量子コンピューター開発の流れを振り返ると、2012年にカナダD-Wave Quantum(Dウエーブ・クアンタム、当時の社名はD-Wave Systems)が開発した量子アニーラーと呼ばれる新しい量子計算機の登場が顕著だった。その後、2015年からは米IBMと米Google(グーグル)との間で激しい開発競争が繰り広げられた。この量子コンピューターは実際にはエラーが多く、計算がままならないので、NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum)と呼ばれている。
    NISQコンピューターを単独で利用するのは難しいので、古典コンピューターとのハイブリッドで利用する方法が検討された。しかし、このハイブリッド計算はあまり有用でないことが2021年ごろまでに分かり、静かに量子コンピューターの熱は冷めていった。
    しかし、2021年を境に、全世界で誤り耐性型量子コンピューター(FTQC)と呼ばれるエラーの少ない量子コンピューターの開発機運が高まり、2024年2月現在は世界中のプレーヤーがFTQCへのロードマップを策定することで一致している。
    それに合わせて従来のNISQコンピューターをそのまま流用するのではなく、新しいハードウエアを開発する機運が高まっている。例えば、FTQCは誤り訂正と呼ばれるエラー補正機構が必要になるので、これまで開発されてきた量子コンピューターとは全く異なるアーキテクチャーの開発が進んでいる。

    論理量子ビットの誤り訂正を実現

    最も顕著な例は、米Harvard University(ハーバード大学)などを中心とするチームが2023年12月に発表した中性原子による誤り訂正技術である。これまでのNISQコンピューターの流用では1量子ビットの誤り訂正も難しかったが、新方式のハードウエアでは40〜48論理量子ビットの誤り訂正を一度に実現するなどブレークスルーといえる成果だ。2024年はさらに量子ビットを増やした誤り訂正技術の開発、光量子コンピューターや半導体量子コンピューターといった新しいハードウエアへの投資が加速する。

    GPUで量子が発展

    世界中で飛び交う量子関連のニュースはNISQに関するものが多いが、2024年以降は状況が変わり、新しいプレーヤーによる世代交代が進みそうだ。量子コンピューターの世界だけではなく、GPU(画像処理半導体)などの性能向上で、これまで困難だと思われていた計算の限界を大きく上回れるようになった。量子シミュレーションの分野もGPUのおかげで、従来とは比べものにならないほど進歩している。
    2024年以降はこれまでとはガラッと様相が変わり、あまりなじみのない新しいハードウエアや計算技術が発展するだろう。これまで予想していたものとは異なる量子コンピューターの世界が広がり始めているので、研究や事業を担う側として今後が非常に楽しみだ。

    今回のお薦め論文

    Logical quantum processor based on reconfigurable atom arrays
    https://www.nature.com/articles/s41586-023-06927-3
    推薦理由:ハーバード大学やキュエラ・コンピューティング、マサチューセッツ工科大学などが中性原子を使って48論理量子ビットの誤り訂正を実施した論文。280個の物理量子ビットを構築し、高い忠実度の2量子ビットゲートを作製するなど、高度な制御技術が特徴だ。将来的な量子コンピューターの可能性を占う革新的な研究といえる。
    湊雄一郎(みなと・ゆういちろう)氏
    blueqat代表取締役。量子コンピューター関連のソフトウエア開発を手掛ける。2004年、東京大学工学部卒。2008年、MDR(現blueqat)設立。内閣府や文部科学省の量子関連プロジェクトでアドバイザーなどを担当。2022年、SEMI量子コンピュータ協議会の委員長に就任。
    「Expert Foresight」では、専門家が様々な分野について最新のトレンドを解説するとともに今後起こり得ることを予見します。

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