2024年2月29日木曜日

九大などが2D材料を簡単に転写できるテープ、次世代半導体の開発に。2024年2月29日 5:00

https://www.nikkei.com/prime/tech-foresight/article/DGXZQOUC283Y00Y4A220C2000000?n_cid=NPMTF000P_20240229_a19

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「2D材料を転写」「ダイヤにGa2O3成膜」 半導体動向

半導体に関する注目動向をダイジェスト形式でお届けします。

九大などが2D材料を簡単に転写できるテープ、次世代半導体の開発に

九州大学などの研究グループは、2D材料をシリコン基板などに簡単かつ高効率に転写できる機能性テープを開発した。グラフェンや遷移金属ダイカルコゲナイド(TMD)など、様々な2D材料に適用できる。
2D材料をテープで転写することによって半導体を開発できる(出所:九州大学)
紫外線(UV)を照射すると粘着力が10分の1程度になるテープ(UVテープ)を開発した。粘着力が強い状態のUVテープで銅触媒上のグラフェンをキャッチした後、UVを照射し、粘着力が弱まった状態でシリコン基板上に貼り付けリリースする形での転写試験を行い、従来法に比べて破れや残渣が大幅に少ないこと、この手法で作製したグラフェンのトランジスタにおいて、従来法よりも高いキャリア移動度分布を得られることなどを確認した。グラフェンの他に、2D半導体材料であるTMDや絶縁性の六方晶窒化ホウ素(hBN)でも、転写後に十分な特性が得られることを確認した。中央大学や大阪大学、日東電工、二次元材料研究所(福岡市)、産業技術総合研究所と共同で研究した。
〈関連論文〉
Ready-to-transfer two-dimensional materials using tunable adhesive force tapes
https://www.nature.com/articles/s41928-024-01121-3
〈詳細情報〉
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1039/

パテンティクスなどがダイヤモンド半導体上に酸化ガリウム製膜、パワー半導体に応用

Patentix(パテンティクス、滋賀県草津市)とクオルテックは、酸化ガリウム(Ga₂O₃)をダイヤモンド半導体上に製膜する技術を開発した。高い放熱性と超ワイドバンドギャップを両立させる新たな成膜技術として、パワー半導体などへの応用を目指す。
バンドギャップは大きいが熱伝導率が極めて低いGa₂O₃と、バンドギャップが大きく熱伝導率も極めて高いが基板への加工が難しいダイヤモンド半導体の特性を生かす。パテンティクスのファントム局所的気相成長(PhantomSVD)法を用いて実現した。現在、特許出願中である。今後は、ダイヤモンド基板にGa₂O₃を成膜したpn接合ダイオードの作製などに取り組む。ダイヤモンド基板はn型、Ga₂O₃はp型の作製が困難という課題があった。
パテンティクスは2022年創業の立命館大学発スタートアップ。2023年には、炭化ケイ素(SiC)上にルチル構造二酸化ゲルマニウム(r-GeO₂)を製膜することに成功していた。

コーネル大がGaNに量子コヒーレンスを持つ欠陥構造発見、室温で利用可能

米Cornell University(コーネル大学)は、半導体材料である窒化ガリウム(GaN)内の電子のスピン自由度に関する研究を行い、情報処理に利用できる可能性があるスピンを含む2つの異なる欠陥構造を発見した。そのうち1つについては、将来の量子技術に向けて応用可能となる結果が得られたとしている。
共焦点顕微鏡の蛍光プローブを介して欠陥を特定し、蛍光率変化の測定、小さな磁場を使ったスピン共鳴の駆動など、多くの実験を室温で行った。その結果、明確なスピンスペクトルを有する2種類の欠陥を確認し、そのうち基底状態に結合されているスピンについて、スピン転移を駆動した際に最大30%の蛍光変化を起こすことを確認した。量子制御実験も行い、スピン制御が可能であること、量子コヒーレンス(量子ビットが情報を保持できる性質)を持っていることを確認できたとしている。
〈関連論文〉
Room temperature optically detected magnetic resonance of single spins in GaN
https://www.nature.com/articles/s41563-024-01803-5
〈詳細情報〉
https://news.cornell.edu/stories/2024/02/semiconductor-defects-could-boost-quantum-technology

ユタ大などが有機半導体へのドーパント添加効果を解明、導電性が向上する組み合わせをAI探索可能に

米University of Utah(ユタ大学)などの研究グループは、有機半導体の導電性を高めるために添加するドーパントに関する研究成果を発表した。今回、ドーパントと有機材料の相互作用を促す物理現象を解き明かしたことで、導電性向上が見込めるドーパントと有機材料の組み合わせを発見できるようになるという。
従来、ドーパントを添加することで導電率を改善することもあれば、悪化することもあり、ドーパントと有機材料の相互作用には一貫性がないとされていた。今回の発見を踏まえて、今後は一層の導電性向上が期待できるドーパントと有機材料の組み合わせを、AI(人工知能)で発見することを目指す。有機半導体を使うと、より柔軟な電子機器やウエアラブルセンサー、体内に埋め込める生体適合性の高いデバイスなどを実現できるとしている。米University of Massachusetts Amherst(マサチューセッツ大学アマースト校)と共同で研究した。
〈関連論文〉
Carrier Screening Controls Transport in Conjugated Polymers at High Doping Concentrations
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.131.248101
〈詳細情報〉
https://attheu.utah.edu/facultystaff/electrons-screen-against-conductivity-killer-in-organic-semiconductors/

大熊ダイヤモンドデバイスが総額3.3億円の資金調達、ダイヤ半導体の研究開発を加速

北海道大学発のスタートアップで、ダイヤモンド半導体の研究開発を手掛ける大熊ダイヤモンドデバイス(札幌市)は、総額3億3000万円(融資枠含む)の資金調達を行った。研究開発や人材採用に充てる。
北陸銀行、みずほ銀行、及び三井住友銀行からのデットファイナンスにより獲得した。これにより、同社の累計資金調達額は総額19億2000万円となった。ダイヤモンド半導体は、高温かつ高放射線下で動作可能な特性を持つ。同社は現在、福島第一原発事故に伴う廃炉作業に向け、燃料デブリ近くの中性子線量を計測する臨界近接監視システム用のダイヤモンド中性子検出素子開発を進めている。今後、通信衛星や次世代通信基地局などへのダイヤモンド半導体の展開も目指す。
(ライター 加藤樹子)

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