2024年3月15日金曜日

高さ13mの巨大な「砂電池」で風力や太陽光発電の余剰エネルギーを熱として蓄えるプロジェクトが進行中 2024年03月15日 07時00分

https://gigazine.net/news/20240315-giant-sand-battery-thermal-energy/

https://gigazine.net/news/20240315-giant-sand-battery-thermal-energy/



地球温暖化の進行を食い止めるためには、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用した発電が必要不可欠です。しかし、これらの自然に頼る発電方式には「常に一定出力で発電を行うことが難しい」という欠点があるため、化石燃料から再生可能エネルギーに移行するには生成した電力をエネルギーの形で蓄える蓄電池(バッテリー)が必要となります。新たに、フィンランドのエネルギー貯蔵スタートアップであるPolar Night Energyが、余剰エネルギーを熱の形で蓄える高さ13mの巨大な「砂電池」を建設することを発表しました。

Loviisan Lämpö Invests in Polar Night Energy's Sand Battery in Pornainen – Towards Non-Combustion Heat Production — Polar Night Energy
https://polarnightenergy.fi/news/2024/3/6/loviisan-lmp-invests-in-polar-night-energys-sand-battery-in-pornainen-towards-non-combustion-heat-production


‘A very Finnish thing’: Big sand battery to store wind and solar energy using crushed soapstone | Euronews
https://www.euronews.com/green/2024/03/10/sand-batteries-could-be-key-breakthrough-in-storing-solar-and-wind-energy-year-round

Giant 'sand battery' holds a week's heat for a whole town
https://newatlas.com/energy/sand-battery-finland/

What Is a Sand Battery? Polar Night Energy's Sand-based Thermal Energy Storage Explained - YouTube


Polar Night Energyはフィンランドで2018年に設立されたスタートアップです。創設者のMarkku Ylönen氏は、「私たちは、もし自分たちのためのコミュニティを自由にデザインできるなら、限られた環境でどのようにエネルギー問題を解決できるだろうかと話し合っていました。特にフィンランドのような北国では、できるだけクリーンなエネルギーを生産しようとした場合、すぐにエネルギー貯蔵の問題にぶつかります」と語っています。


Ylönen氏らは、再生可能エネルギーで発電した余剰電力を蓄える方法を検討する中で、「砂粒」にエネルギーを熱として蓄える方法が効率的であることを発見したとのこと。このアイデアを基にPolar Night Energyは、エネルギーを長期間貯蔵して需要に応じて放出できる「砂電池」を開発しました。

Polar Night Energyの砂電池は、熱交換器を埋め込んだスチール製の保温サイロの中に、大量の砂あるいは同様の固体材料を詰め込んだものです。再生可能エネルギーで発電された余剰電力を電気抵抗で熱エネルギーに変換し、それを熱風の形で熱交換器を循環させて砂を加熱することで、砂がセ氏500度前後の熱を数カ月間蓄えるとのこと。


Ylönen氏は、「砂電池に派手なものはありません。複雑な部分はコンピューター上で起こります。エネルギー、つまり熱がストレージ内部でどのように移動するのか、どれだけの熱が利用可能なのか、どれほどの割合で放出と充塡(じゅうてん)が可能なのかを常に知ることができます」と述べています。

理論的には蓄えた熱エネルギーを再び電気エネルギーに変換して供給することもできますが、熱エネルギーをそのまま利用する方が効率的です。Polar Night Energyでは、砂電池を地域や施設の暖房ネットワークに接続し、必要に応じて熱エネルギーを放出して暖房や給湯に利用するシステムを開発しました。


2022年には、最大8MWhに相当する熱エネルギーを蓄えることが可能な高さ7m・幅4mの砂電池のプロトタイプが、フィンランド西部のカンカーンパーで稼働を開始しました。

世界初の商用「砂電池」がフィンランドでエネルギー貯蔵を開始 - GIGAZINE


そして2024年3月7日、Polar Night Energyは新たにフィンランド南部のポルナイネンに高さ13m・幅15mの巨大な砂電池を建設する契約を、地域熱供給企業のLoviisan Lämpöと締結したことを発表しました。ポルナイネンの砂電池は最大100MWhもの熱エネルギーを蓄えることが可能で、Loviisan Lämpöの地域暖房ネットワークと接続される予定です。

ポルナイネンの砂電池が稼働すれば年間160トンもの二酸化炭素排出量を削減することができ、これは地域暖房ネットワークの総排出量の70%に相当するとのこと。また、地域暖房ネットワークにおける石油の使用が完全にカットされるだけでなく、木材チップの燃焼量も約60%減少すると予想されています。Polar Night Energyによると、ポルナイネンの砂電池の蓄熱容量は、ポルナイネン全域の夏の約1カ月分、冬の約1週間分の熱需要に相当するとのこと。

ポルナイネンの砂電池は建設とテストに約13カ月かかると推定されており、2025年の冬から稼働する予定となっています。

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