https://gigazine.net/news/20240315-giant-sand-battery-thermal-energy/
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地球温暖化の進行を食い止めるためには、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用した発電が必要不可欠です。しかし、これらの自然に頼る発電方式には「常に一定出力で発電を行うことが難しい」という欠点があるため、化石燃料から再生可能エネルギーに移行するには生成した電力をエネルギーの形で蓄える蓄電池(バッテリー)が必要となります。新たに、フィンランドのエネルギー貯蔵スタートアップであるPolar Night Energyが、余剰エネルギーを熱の形で蓄える高さ13mの巨大な「砂電池」を建設することを発表しました。
Polar Night Energyはフィンランドで2018年に設立されたスタートアップです。創設者のMarkku Ylönen氏は、「私たちは、もし自分たちのためのコミュニティを自由にデザインできるなら、限られた環境でどのようにエネルギー問題を解決できるだろうかと話し合っていました。特にフィンランドのような北国では、できるだけクリーンなエネルギーを生産しようとした場合、すぐにエネルギー貯蔵の問題にぶつかります」と語っています。
Ylönen氏らは、再生可能エネルギーで発電した余剰電力を蓄える方法を検討する中で、「砂粒」にエネルギーを熱として蓄える方法が効率的であることを発見したとのこと。このアイデアを基にPolar Night Energyは、エネルギーを長期間貯蔵して需要に応じて放出できる「砂電池」を開発しました。
Polar Night Energyの砂電池は、熱交換器を埋め込んだスチール製の保温サイロの中に、大量の砂あるいは同様の固体材料を詰め込んだものです。再生可能エネルギーで発電された余剰電力を電気抵抗で熱エネルギーに変換し、それを熱風の形で熱交換器を循環させて砂を加熱することで、砂がセ氏500度前後の熱を数カ月間蓄えるとのこと。
Ylönen氏は、「砂電池に派手なものはありません。複雑な部分はコンピューター上で起こります。エネルギー、つまり熱がストレージ内部でどのように移動するのか、どれだけの熱が利用可能なのか、どれほどの割合で放出と充塡(じゅうてん)が可能なのかを常に知ることができます」と述べています。
理論的には蓄えた熱エネルギーを再び電気エネルギーに変換して供給することもできますが、熱エネルギーをそのまま利用する方が効率的です。Polar Night Energyでは、砂電池を地域や施設の暖房ネットワークに接続し、必要に応じて熱エネルギーを放出して暖房や給湯に利用するシステムを開発しました。
2022年には、最大8MWhに相当する熱エネルギーを蓄えることが可能な高さ7m・幅4mの砂電池のプロトタイプが、フィンランド西部の で稼働を開始しました。
そして2024年3月7日、Polar Night Energyは新たにフィンランド南部の に高さ13m・幅15mの巨大な砂電池を建設する契約を、地域熱供給企業のLoviisan Lämpöと締結したことを発表しました。ポルナイネンの砂電池は最大100MWhもの熱エネルギーを蓄えることが可能で、Loviisan Lämpöの地域暖房ネットワークと接続される予定です。
ポルナイネンの砂電池が稼働すれば年間160トンもの二酸化炭素排出量を削減することができ、これは地域暖房ネットワークの総排出量の70%に相当するとのこと。また、地域暖房ネットワークにおける石油の使用が完全にカットされるだけでなく、木材チップの燃焼量も約60%減少すると予想されています。Polar Night Energyによると、ポルナイネンの砂電池の蓄熱容量は、ポルナイネン全域の夏の約1カ月分、冬の約1週間分の熱需要に相当するとのこと。
ポルナイネンの砂電池は建設とテストに約13カ月かかると推定されており、2025年の冬から稼働する予定となっています。
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