2015年8月13日木曜日

一見ガラケーだがフタを開くとスマホに変身! 中国の老人向けスマホがスゴ イ!! 文● 山谷剛史 [PC表示へ] 2015年08月13日 12時00分更新


旧式のスマホゆえに片手で収まるコンパクトサイズ

旧式のスマホゆえに片手で収まるコンパクトサイズ

 中国の都市部では、スマートフォンが老若男女に普及してきている。ただ高齢者の中には、どうしてもスマートフォンは苦手な人もいる。

 そんな高齢者のために、電卓のようなシンプルな携帯電話が登場し、中国の多くのモバイルショップでスマートフォンとともに売られている。

 大手メーカーから無名のメーカーまで数えられないほどのメーカーからリリースされているが、どれも似たり寄ったりである。

 今回紹介する「大唐通信」の「T68」は、一見ほかの高齢者向けケータイと似て電卓のようなシンプルさを求めたフィーチャーフォンに見えるが、実はクラムシェル型のスマートフォンである。

クラムシェルでフィーチャーフォンでスマートフォンでもある

クラムシェルでフィーチャーフォンでスマートフォンでもある

梱包物

梱包物

 クラムシェル型だから真ん中から開くと、そこには各アイコンを大きくした高齢者向けAndroidの画面が表示される。つまりシンプルなケータイながら、さまざまなアプリを利用できるのだ。このギミックに驚き約1万円(499元)払って購入してしまったのでレビューしたい。

フタをつけるとフィーチャフォンになる
Androidスマホ

フタを開けるとこんな感じ。AndroidのUIも高齢者向けにカスタマイズされている

 まずは「T68」のスペックを紹介しよう。

 OSはAndroid 2.3、CPUはCortex-A5(1GHz)、512MB RAM、ディスプレーは480×320表示が可能な3.5インチモニター。SIMカードスロットは2つあり、中国移動(China Mobile)の3G「TD-SCDMA」に対応している。

 通信関係はBluetooth 2.1、無線LANに対応。バッテリーは1500mAh。コネクターやスロット類はmicroUSBコネクターにmicroSDカードスロットを装備。

SIMカードは2枚挿しできる。中国の高齢者ケータイでも珍しくない

SIMカードは2枚挿しできる。中国の高齢者向けケータイでも珍しくない

 見てのとおり懐かしいスペックで、メニュー画面こそ快適に動くが、ブラウザーを開こうものなら、ディスプレーの小ささと遅さに、「あぁ昔はこんなスマホ触ってたよなあ」と思い出すことだろう。

 だが、そこは電卓のようなボタンがついたフタをつけて、高齢者向けとすることで使える通信端末に化ける。

(次ページに続く、「高齢者向けだからこその工夫も!」)高齢者向けだからこその工夫も!

既存の高齢者ケータイと比較

既存の高齢者向けケータイと比較。一番右がT68

 家族や知人とのやりとりに、中国で普及するメッセンジャーの「微信」(WeChat)を使えれば、使い勝手はよくなるのだから、家族の誰かしらがこの製品に微信をインストールした後、「ウェブサイトを見るのはこの機種では勧めませんよ」と言ってしまえば、あとは不満なく使ってくれるだろう。

フタにはディスプレーはない

フタにはディスプレーはない

 閉じた状態と開いた状態で、それぞれディスプレーサイズも違うのだが、モニターはひとつだけだ。フタのモニターの部分が透明になって、フタをしめるとフィーチャーフォンモードに変わり、モニターの表示が変わるというわけだ。

 フタをしめたときはスマートフォンながら、フィーチャーフォンのように見せているわけだ。フタのボタンの押下感だが、高齢者向けケータイを意識しているからこそ、しっかりと電卓を押すような感触がある。

 旧世代のスマートフォンにフィーチャーフォンに化けるフタをつけただけではない。高齢者にも音が聞こえるよう、全般的に大音量の傾向がある中国のケータイの中でもとりわけ大音量にできる。

 また他の高齢者向けケータイと同様、側面にはLEDライトスイッチ、裏面にはカメラとともに押下すると警告音がなるSOSボタンがあり、他の高齢者向けのケータイからの移行も容易にできる。

高齢者向けのアプリもある

高齢者向けのアプリもある

 さらに、Android側でインストールされているアプリについても、本機のマイクで拾った音声を本機のイヤフォンに届ける補聴器アプリや、本機のカメラの画像をディスプレーで大きく見せる拡大鏡アプリ、薬を飲む時間を教えてくれるアプリなどが用意されていて実用的だ。

スマホが高齢者向け情報端末のスタンダードに!?

 今までは高齢者にとってスマートフォンでは多機能すぎて難しく、されど高齢者向けのケータイでは、知人と連絡するための定番のメッセンジャー「微信」や「QQ」の利用ができなかった。インストールするまでは高齢者にはハードルが高いが、家族の人がこれらをインストールすれば、現時点で最も理想的な高齢者向けハイブリッドスマートフォンができあがる。

 マニアックな機種なので知られていないが、口コミで広がれば、さまざまなメーカーが同じような機種をリリースし、この手のハイブリッドスマートフォンが高齢者向け情報端末のデファクトスタンダードとなるかもしれない。


山谷剛史(やまやたけし)

著者近影

著者近影

フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。書籍では「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)、「日本人が知らない中国インターネット市場」「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)を執筆。最新著作は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 」(星海社新書)。

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