高校に通うための奨学金が収入と見なされ、福島市の三十代女性と高校二年の長女の母子家庭への生活保護費が市によって減額された処分について、国は奨学金を収入と認めず、生活保護費の減額処分を取り消す裁決をした。女性らの代理人を務める弁護団が十七日、同市で記者会見し明らかにした。
裁決は六日付。国は「市が当事者への聞き取りをせずに(奨学金を)収入と認定したこと」などを理由として、市の処分を取り消した。弁護団は、こうした裁決は「非常に珍しい」としている。
福島市の担当者は「調査が十分でなかったという国の指摘を重く受け止めたい」と話した。
市は昨年十月までに、処分を取り消さないまま、生活保護の減額分を追加支給している。
女性らは市から生活保護を受けていたが、昨年四月と五月、市教育委員会などから、返還義務がない給付型の奨学金計九万円を受け取ったところ、市はこれらを収入と認定。同五月までに生活保護の支給額から奨学金の九万円を差し引く処分を決定した。
女性らはこれを不服として同六月、県に処分取り消しを求め審査請求し、同十一月に棄却。国に再審査を請求していた。
また今年四月には収入認定の取り消しと慰謝料計百万円を求め、福島地裁に提訴しており、弁護団は「女性らと協議し、訴えを取り下げるかどうか検討したい」と話した。
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女性らが収入認定の取り消しを求める訴えを福島地裁に起こすことは、本紙が四月三十日にいち早く報道した。引き続き、生活保護費の伸びを抑えるため、アルバイト収入の未申告を「不正」と認定されて保護費を返還させられたりするケースが全国で相次いでおり、必要な保護費を受けられない運用は「子どもの貧困」を助長しかねないとたびたび指摘してきた。
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