2017年2月2日木曜日

ホコリ、カビ、ダニだらけの布団に寝かされる自衛隊の演習訓練


日刊SPA!

◆「何もかもが足らない! ボンビー自衛隊の実態! 07」

 自衛隊の営内は点検があり、シーツも必要に応じて交換されます。布団も干したければ屋上などに干すことはできます。衣服は各々ちゃんと洗濯するし、洋服が破れて自分の手ではきれいにつくろえない場合は、修繕専門の部隊もあるようです。アイロンの当て方なども厳しく言われたりしますから、自衛隊にいると身なりはきちんとするようになります。室内掃除の時間は決まっているし、営内の場合はきちんと掃除されているかどうかをチェックする機能もあるので、男性がばかりが住んでいる場所であっても秩序が保たれています。

 しかし、自衛隊にも最低限の衛生的生活のチェックを受けない、もしくは目が届かない場所があります。昨年5月、北海道で小2の男児が広大な陸自の演習地近くで行方不明になった事件がありました。北海道では山林部は冷え込むこともあり心配されましたが、雨風を防げる場所「演習宿営地」内で6月3日に無事、保護されました。男の子が身を寄せていた「演習宿営地」は、演習や訓練でもなければ自衛隊員ですら近寄らない場所です。もちろん、そんな場所へのメンテナンスのために予算や人員を割くことはできないので、各地の宿営地の中はなかなかヒドイ状態になっているようです。

 陸自の演習訓練には「状況下訓練(戦闘中)と状況下でない(戦闘中以外)訓練」というおおむね2種類の演習があります。通常のお風呂に入ったり着替えたりできる訓練と違って、状況下訓練中は戦闘中という前提なので、夜中でも見張りを立てて夜通し戦闘をします。交代で仮眠をとることはあっても、ゆっくり休んだりはできません。その演習にもよりますが、橋を爆破したり敵を撃破したり、ゲリラ作戦したりというような状況下の訓練だとなかなかゆっくり眠ることができないので大変です。


 演習中はテントを張っての宿営地をつくることもありますが、演習場にあらかじめ用意されている宿営地を使うこともよくあります。宿営地は、旧日本軍型の木製の廃校のような板張りの場所にムシロか布団というタイプと、米軍っぽいかまぼこ型の宿営地にベッドという2つのタイプが代表的です。それでも、雨風が防げ、裸電球でも灯があるだけマシな施設ではあります。

 どちらの場合も、ただでさえ予算が乏しい自衛隊の、たまにしか使わない演習場宿営地にお金や人手をかけることはできません。壁や窓から隙間風が吹くような状態でも、ガムテープやビニールシートでの応急修理で我慢しています。寝る時は宿営地のベッドのマットレスの上に、持参の寝袋に入って眠ります。ムシロや布団などがあれば、その上にやはり寝袋や毛布をかぶって眠ります。

 この宿営地にあるマットレスや毛布がなかなかのもので、中には「隊員の実年齢よりも高齢」といった場合もあるそうです。装備というより、廃棄されるべきものが「あるだけマシ」と捨てられずに置いてあったりするのが実情のようです。それでもやはり直に土の上に眠るよりはずっと休息にはいいので、みんな我慢して使っています。


 陸自の演習場での訓練は、数十kgの背嚢を背負って山野を動き回り、いろいろな機材を設営しては片付け、次から次へと機敏に動き回るので、隊員はみんな疲労でへとへとになっています。だから、状況下の仮眠であろうが、睡眠だけは最大限の時間をとって深く眠らせてあげたい。とくに、まだ不慣れな新しい隊員たちには、せめて休養だけはとらせてあげたいと先輩自衛官は思うのですが、宿営地にあるマットレスや布団、毛布はおおむねホコリとカビ、いつからそこにあるのかわからないものが多いようです。人の目が行き届く大きな基地の場合は洗濯されたものが用意されていることもあるそうですが、残念ながら例外的なケースのようです。

 無論、そういうものにはたいていダニやノミなどがいて、虎視眈々と人間の血を吸えるチャンスを待っているわけです。

「できるだけマットレスが体に触れないように、寝袋から体を出さずに眠ろうとしても、夜中になると体が真っ赤に腫れていることがある。ダニなのか、ノミなのか、何が原因なのかはわからないけれど、そうなるともうかゆくて眠れない」と自衛官G氏の奥様は演習訓練から帰ってきた夫の言葉を思い出しました。

「せめて10年に一回くらいは毛布やマットは買い替えてほしいものですが、それは贅沢なことでしょうか? もし布団を干したり洗ったりできないというなら、訓練用にレンタル寝具を借りられるようにしたらいいのに、そんな贅沢は自衛隊には許されないということですか? 民間会社の社員研修でダニやノミだらけの布団で泊まれといったらどうなるか……普通に考えてみてほしいです」とG氏の奥様。

「同じ人間なのに、どうして、自衛官だけはダニやホコリ、カビまみれの布団で寝かせてもいいと考えるのかしら?」と悔しそうに言った後 、彼女の表情が少し柔らかくなりました。

「でも、演習訓練はつらいことばかりじゃないらしいですよ。部隊のみなさんたちはつらい訓練のあとは楽しいこともないとダメだと、春には山菜を採ってきて、野生のアスパラやタラの芽などで野菜のてんぷらをしたりしてくれるそうです。訓練が終わった後の打ち上げは楽しく、悪いことばかりじゃない。その打ち上げを楽しみにして、つらい訓練を乗り切って帰ってくるのです」

 G氏の場合はいい上司や仲間たちに救われているようですが、隊員たちがゆっくり休めるための最低限の衛生的な環境が整う日は遠いようです。

【梨恵華】
りえか。ミリオタ腐女子。「自衛官守る会」顧問。関西外語大学卒業後、報道機関などでライターとして活動。キラキラ星のブログ(【月夜のぴよこ】)を主宰

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