文部科学省は14日、小中学校で教える内容を定めた学習指導要領と幼稚園の教育要領の改訂案を公表した。グローバル化や人工知能(AI)の発達などへの対応から授業のあり方を見直し、小学3年から英語を始めるために授業時間数も増やす「質も量も」を鮮明にした。社会科では竹島と尖閣諸島を「固有の領土」と初めて明記。「国家」を意識させる内容も盛り込んだ。
新指導要領は小学校が2020年度、中学は21年度から全面実施される。「脱ゆとり」を掲げ、40年ぶりに授業時間を増やした前回08年改訂の内容は維持。「公共の精神」や「道徳心」などを重視する改正教育基本法(06年施行)の理念がより反映された内容となる。
今回の改訂案のポイントは小学校の英語だ。歌やゲームなどを通じた「外国語活動」の開始を現行の小5から小3に早め、「聞く・話す」を中心に年間35コマ(週1コマ)をあてる。小5からは教科書を使う正式な教科「外国語科」に格上げされ、「読む・書く」を加えて授業時間を年間70コマに増やす。18、19年度を移行期間とし、17年度中に教材配布や教員研修を進める。英語の分、小3~小6の授業時間は純増となる。
また、情報活用力を重視し、小学校ではコンピューターを動かすための指示を体験するプログラミング教育も必修化する。
一方で改訂案は、「何を学ぶか」が中心だった従来の指導要領を転換。「何ができるようになるか」を明確にし、そのために「何を」「どのように」学ぶかを明確にした。答えのない問題に挑む力をつけさせるとして、先生が一方的に教える形ではなく、討論やグループ活動などを通じ、「主体的・対話的で深い学び」への工夫を求めた。
「国家」を意識させる内容も盛り込んだ。小5の社会で、竹島、北方領土、尖閣諸島が「我が国の固有の領土であることに触れること」と明記。中学の地理では、すでに記載のある北方領土に加え、竹島と尖閣諸島が日本固有の領土であり、尖閣については「領土問題は存在しないことも扱う」とした。政府の統一的な見解に沿った内容だ。
一方、教員の長時間勤務が指摘される中、学校現場の負担は増すことになり、「質と量」を両立させられるかが課題になる。(水沢健一)
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〈学習指導要領〉文部科学省が小中高校の各学年で最低限教えるべき内容と授業時間を示した文書。文科相が学校教育法に基づいて示し、教科書編集の基準になる。約10年ごとに全面改訂され、1947年に試案が公表されてから今回で8回目。授業改善に関する記述などが増え、前回の08年改訂に比べて分量は約1・5倍になった。
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