2017年2月14日火曜日

たった3日で2年分の酒の熟成が可能な方法が判明、使うのは「超音波」


By Sami Keinänen

お酒の熟成には何年もの年月が必要となり、例えばブランデーの場合は熟成年数が10年、20年を超えるものも多く存在します。長く時間をかけることで優れたお酒を作ることもできますが、その熟成の行程を加速させる手法が新しい研究により明らかになりました。使用するのはなんと「超音波」で、わずか3日で通常の方法では2年分の熟成が行えるそうです。

Study of a laboratory-scaled new method for the accelerated continuous ageing of wine spirits by applying ultrasound energy
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1350417716304187


Ultrasound Ages Liquor Two Years in Just Three Days — NOVA Next | PBS
http://www.pbs.org/wgbh/nova/next/physics/ultrasound-ages-liquor-two-years-in-just-three-days/


世の中に存在する多くのお酒が「熟成」することが味の鍵となっています。ブランデーも例外ではなく、高級ブランデーは何十年も樽の中で熟成されることで完成します。そんな熟成の行程を一気にショートカットする技術を、スペインのカディス大学で教授を務めるバルム・ガルシア氏が発見しました。ガルシア氏は研究でアルコールの中にオーク材のチップを入れ、それに3日間超音波を浴びせて熟成させるという方法をとりました。熟成の段階では「温度」「オークチップの量」「アルコール度数」「通気量」などの条件を変えて実験を行っており、その後、作成したアルコールは複数人の専門家に評価してもらったそうです。

ガルシア氏は研究成果について、「3日の熟成でアルコールが2年熟成したブランデーのようになったことは、本当に予期せぬ結果でした」と語っています。超音波を用いた方法で作成したお酒の評価を行ったのは8人の専門家で、その中には研究者も含まれているとのこと。この専門家たちの評価では、作成したお酒が「従来のブランデー並に良い」という評価を得ており、本物の熟成した高級ブランデーには及ばないものの、優れた品質のお酒ができました。なお、ガルシア氏は「超音波で作成したお酒は驚くほど良いもので、果物のような風味と甘い香りがあり、高い芳香性を示した」と語っています。

By CCFoodTravel.com

実験の中で作成された最も評価の高かったブランデーは130プルーフ・アルコール度数65%のもので、作成する際の条件は「少しだけ通気性のある室温状態で大量のオークチップを使用した際」だったそうです。

「熟成の加速」のメカニズムは、超音波がオークチップの中で引き起こすキャビテーションにより生じます。音波により形成された小さな泡は「爆発的に破裂」し、これによりオークチップの組織が破壊されて合成物を放出します。この合成物によりお酒に特殊な風味が加えられ、熟成が加速するというわけです。なお、お酒の専門家はこの現象を「コンジナー」と呼んでいます。

「熟成のプロセスを加速させることで作成したお酒」は、ヨーロッパの法律上ブランデーとは呼べないとのことですが、ガルシア氏は「この技術は蒸留酒製造業者がお酒の開発スピードを加速させるのに役立つ」と語っています。

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