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バナナの木を枯れさせる病気「新パナマ病」の感染が世界中に広がっている。日本の最大の輸入元のフィリピンでは、生産量が減少。現地の生産者団体からは「世界中の食卓からバナナが消えてしまう」と懸念する声も出ている。
■グロス・ミシェルを壊滅した「旧パナマ病」
生物学者の福岡伸一氏の解説によると、バナナは品種改良の結果、種がなくなったため、株分けで栽培する。その結果、同じ品種のバナナは、どれも同じ遺伝子を持つため、特定の病原体に感染しやすくなってしまったという。
バナナは20世紀半ばまで「グロス・ミシェル」というクリーミーでしっかりした味わいの品種が人気だった。しかし、1960年代までにカビの一種である「フザリウム」という病原体によってバナナの木が枯れてしまう「パナマ病」の感染が広がった。世界中の農園で、グロス・ミシェルは壊滅的な被害を受けて、ほぼ絶滅してしまった。
かつてはバナナの代名詞だった「グロス・ミシェル」
そこで登場したのが「パナマ病」に強い「キャベンディッシュ」という品種だった。グロス・ミシェルより味が悪く耐寒性も低かったが、パナマ病の病原体の侵入を防ぐことができた。現在、食卓に上るバナナのほとんどは、このキャベンディッシュだ。
■キャベンディッシュはパナマ病に強いはずだったが…
しかし、1990年代にキャベンディッシュにも感染するパナマ病が発見された。TR4(Tropical Race 4)と呼ばれる「新パナマ病」は、台湾で最初に見つかり、その後は中国、インドネシア、マレーシア、フィリピンなど東南アジア各国で感染が拡大している。数千ヘクタールのバナナ農園がすでに新パナマ病で壊滅したという。
CNNによると、国連食糧農業機関(FAO)は4月、新パナマ病について「世界で最も破壊的なバナナの病気の1つ」と指摘。この病気に対抗するため、360億ドル(約4兆円)規模のバナナ業界が行動する必要があると強調した。
■「世界中の食卓からバナナが消えてしまう恐れ」
フィリピン・ミンダナオ島のバナナ園
NHKニュースによると、日本が輸入するバナナの90%近くを占めるフィリピンの最大の産地、南部ミンダナオ島では、ここ数年で「新パナマ病」の被害が急速に拡大。現地の生産者団体によると、島にあるバナナの木の5分の1がすでに感染し、生産量もこの5年で20%以上も減ってた。フィリピン政府は「新パナマ病」に強い品種の開発を進めているが、実用化のメドは立っていない。
フィリピンの生産者団体の幹部は「新たな品種の開発などの対策が進まなければ、5年か10年後には、世界中の食卓からバナナが消えてしまう恐れもある」と話しているという。
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