2016年5月15日日曜日

アスピリンの癌予防薬としての使用が現実味を帯びてくる


2014/08/07 08:27


鎮痛薬として一般的なアスピリンですが、鎮痛以外にも癌を抑制し予防する効果を持っていることで近年注目されています。この度、そのアスピリンの癌抑制効果の研究がより進められ、更なる裏づけデータが発表されました。今後アスピリンが癌予防薬として一般的に使われることが現実味を帯びてくる可能性があります。

アスピリンとは

アスピリンは、鎮痛・解熱・消炎などを目的として一般的に広く使われている薬品です。正式には“アセチルサリチル酸”という名前で、アスピリンという名前は元々はドイツのバイエル社がつけた商標であり、それが定着したものです。

本来は上記のような目的に使われていたものですが、血を固まりにくくする作用もあるので血栓の予防薬としても使われます。そして近年になって、癌予防の効果が期待され始めています。

アスピリンの癌抑制効果

研究チームを率いたジャック・キュジック教授は、50~65歳の人は75mgの低濃度アスピリン錠の摂取を考えるべきだという結論に至りました。禁煙等に次ぐ癌対策になり得るとのことです。

アスピリンの癌抑制効果データ表
Image via The Guardian

以下はキュジック教授の研究チームがAnnals of Oncologyで発表したアスピリンの癌抑制効果をまとめたものです。

低濃度アスピリンを10年間毎日飲み続けると、大腸癌の発生率が35%抑えられ、さらに死亡率は40%減る
食道癌の発生率が30%、死亡率が50%減る
胃癌の発生率が30%、死亡率が35%減る
心臓発作の発生率が18%、死亡率が5%減る
脳卒中の発生率が5%抑えられるものの、それによる死亡率は21%上昇する
肺癌の発生率が5%、死亡率が15%減る
前立腺癌の発生率が10%、死亡率が15%減る
乳癌の発生率が10%、死亡率が5%減る
アスピリンが癌抑制効果を発揮するためには、50~64歳から少なくとも5年は服用していなければならない
65歳まではそれまでの服用期間が長いほど抑制効果はあるが、それ以降の歳では体内出血のリスクが上がる
50歳以前の服用では抑制効果は確認されなかった
アスピリンの癌抑制効果は摂取をやめた後も続くので、もし50~64歳のイギリス人が10年間毎日アスピリンを飲んでいれば、20年の間に13万人の死亡を防げていた可能性がある
なぜアスピリンには癌予防効果があるのか

二つの仮説があります。

仮説1

炎症は細胞の分裂を引き起こすので、その分だけ細胞が癌化するリスクが増えると言える。アスピリンには抗炎症作用があるので、結果的に細胞が癌化するリスクを減らすことができる。

仮説2

癌は、血を固める役目の血小板に乗って運ばれることがある。アスピリンは血小板の粘りを弱める効果があるので、癌が血小板に乗りにくくなり、広がっていくのを防ぐことができる。

アスピリンの副作用

アスピリンには副作用があります。場合によっては胃や腸に出血などを引き起こすことがあり、高齢者にとってこれは重大なダメージとなります。特にピロリ菌を胃に持っている人はアスピリンによる副作用が出やすいといいます。ピロリ菌は消化性潰瘍の原因にもなる細菌です。また、脳の出血による脳卒中のリスクも高まると言われています。

癌研究団体のCancer Research UKはアスピリンの癌予防効果には肯定的であるものの、どういった人に副作用が出やすいのかについての研究が不十分であることから、摂取する場合は医者に相談することを推奨しています。

利益 or リスク

果たしてアスピリンの癌予防効果はそのリスクに見合うほどのものなのでしょうか。キュジック教授はこう語ります。「50~64歳の全ての人はアスピリンの摂取を考えるべきだというのが個人的なアドバイスです。まず医師に相談して(副作用による)出血の大きなリスクが有るかどうかを診てもらい、そして問題が無いのであれば、利益はリスクを大きく上回ると私は思います。」

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