解熱鎮痛剤の「アスピリン」を2型糖尿病患者が摂取しても、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患の発症リスクを下げる効果は得られず、むしろ消化管の出血リスクが高まっている――奈良県立医科大学第1内科学教室の研究チームによる発表だ。
「アスピリン」は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの高い予防効果が期待できる薬剤で、米国では健康な50代以上は毎日服用することが推奨されている。
また、心血管疾患のリスクが高い糖尿病患者も、健康な人と同様にアスピリンが有効であると考えられ、世界各国のガイドラインでも投与が推奨されていたが、実際に有効なのか、大規模な調査検証はされていなかった。
奈良医科大は2002年から、糖尿病患者での有効性を確認するための試験「JPAD(Japanese Primary Prevention of Atherosclerosis with Aspirin for Diabetes Trial)研究」を開始。
心血管疾患の既往歴のない 2型糖尿病患者2539人を対象に、2008年までアスピリンの予防効果を調査したところ、アスピリンには統計学的な有意な効果がなかったことが確認され、各国のガイドラインに影響を与えている。
今回は、研究の第2段階として2015年7月まで調査を続け、10年以上の追跡を実施。アスピリンを投与された患者と、されていない患者の比較もおこなった。すると、最初の調査と変わらずアスピリンによる心血管疾患の予防効果は確認できず、年齢や性別、血糖値、腎機能、喫煙・飲酒の有無などの条件を調整しても、変化はなかった。
さらに、投与された患者は消化器官で出血を生じた人が2%存在したのに対し、されていない患者では0.9%となっており、わずかな違いではあるものの、消化器出血リスクが上昇している。
医師・専門家が監修「Aging Style」
参考論文
Low-Dose Aspirin for Primary Prevention of Cardiovascular Events in Patients with Type 2 Diabetes: 10-year Follow-up of a Randomized Controlled Trial.
DOI: 10.1161/CIRCULATIONAHA.116.025760 PMID:27881565
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