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 銀行の勘定系システムを巡って、富士通が劣勢に立たされている。ファーストユーザーのソニー銀行向けに開発している新システムは稼働時期が2023年度以降になることが決定的だ。度重なるシステム障害からの再起を図るみずほ銀行や地方銀行への対応も、富士通に重くのしかかっている。日本のIT業界の雄は逆境をはね返せるか。

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 「品質を確保するため、全体を再点検している」。ソニー銀行は富士通と開発中の新勘定系システムの状況をこう説明する。同行は2022年度中の稼働を目指していたが、カットオーバーは2023年度以降にずれ込む見通しだ。

ソニー銀行の新勘定系システムを巡る主な経緯
時期概要
2013年末社内や周辺系システムでパブリッククラウド「Amazon Web Services(AWS)」の利用を開始
2018年10月富士通が「FUJITSU Banking as a Service(FBaaS)」の開発に着手したと発表。ファーストユーザーとしてソニー銀行が採用を検討していると明らかに
2019年10月勘定系システムの一部である財務会計システムのAWSへの移行が完了
2019年12月AWSの利用可能範囲を全業務にする方針を決定
2023年度以降(予定)AWS上で動作する新勘定系システムが稼働

FBaaS難航、戦略の見直し必至

 ソニー銀行と富士通が開発を進める新システムは、野心的な取り組みといえる。勘定系システムの動作プラットフォームに米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)のパブリッククラウドを全面採用する予定だ。AWSのクラウド上で勘定系システムを全面稼働させた日本の銀行はまだない。

 預金などの業務アプリケーションは、富士通が開発中の「FUJITSU Banking as a Service(FBaaS)」を採用する。FBaaSはマイクロサービスアーキテクチャーを採り入れ、安定稼働と開発効率を両立できるという触れ込みだった。

 富士通は2018年10月、FBaaSの開発に着手したと発表し、2020年の提供開始を目指していた。しかし、ソニー銀行とのプロジェクトが難航し、提供開始時期は先延ばしになっている。「現在も鋭意開発を進めている。ただ、詳細はお客様に関わることなので回答は控える」(富士通広報)。

 FBaaSは富士通の銀行向けビジネスの先行きを左右する戦略的なサービスといえる。富士通はソニー銀行以外にもFBaaSを展開し、顧客基盤を広げる戦略を立てていた。中核の勘定系システムをFBaaSで押さえれば、周辺系システムの受注にも有利に働く。だが、肝心のFBaaSで開発に苦しんでおり、戦略の見直しは必至という状況だ。

PROBANKを利用する地銀はゼロに

 富士通が抱える難題はソニー銀行だけではない。地銀向けの勘定系システムも岐路に立たされている。富士通が地銀向けに展開する共同化システムの「PROBANK」は利用行がゼロになる見通しで、もはや事業拡大は見込めない状況だ。富士通は営業店などのチャネル改革や融資業務改革の支援に軸足を移す方針だが、本丸の勘定系システムをNTTデータや日本IBMなどに押さえられた現状で、どこまでビジネスを拡大できるのか見通せない。

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 みずほへの対応も富士通が避けて通れない難題だ。みずほの勘定系システム「MINORI」の開発で中心的な役割を果たした主要4ベンダーの一角であり、MINORIの安定稼働に向けて、富士通が果たすべき役割は大きい。

 一方で、みずほに関しては「IBMカラーが濃くなってきている」(富士通の中堅社員)という見方もある。実際、みずほ向けのシステム運用などを手掛けるMIデジタルサービスに日本IBMは出資しており、持ち株比率は65%に達する。さらに、2021年2月以降の度重なるシステム障害を受け、日本IBMで取締役副社長執行役員や取締役副会長などを歴任した下野雅承氏が2022年4月1日付で、持ち株会社のグループ執行役員に就いた。銀行の非常勤取締役も務めている。

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 富士通は何を軸に、国内の銀行向けビジネスを伸ばしていくのか。戦略の再考は避けられない。立ち位置が定まらないままだと、縮小均衡に陥ることになる。